大手企業をターゲットとするERPベンダーの動向
国産系の業務連携型ERPパッケージが好調な背景として、彼らがコアターゲットとする顧客企業の年商101〜500億円レンジマーケットが好調であることは前回述べた通りである。
一方、年商1001億円以上の大企業レンジにおけるERPパッケージの2002〜2008年のCAGR(年平均成長率)は1.3%とほとんど6年間で市場規模が横ばいであることが予想される。この理由として、2004年〜2005年の取材でよく聞いたのが「ビッグバン型導入の終焉」である。年商 1,001億円以上の大手企業向けマーケットで活躍するERPパッケージベンダーの業績推移は以下の通りである。

図1:年商1,001億円以上の大手企業をコアターゲットとするERPベンダーの業績の2002〜2008年の推移
(ライセンス売上高/エンドユーザ渡し価格ベース)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
2003年〜2004年で業績を伸ばしたのはGLOVIAシリーズのみで、SAPをはじめ軒並み2004年でいったんERPライセンス売上高を落としている。特に落ち込みが激しいのはOracle EBSで2002年が9,000百万円であったのが2003年には対前年48.3%と半減してしまった。
この理由についてはまさしく「例年ような大型案件が1件もなかった」ことをあげている。Oracle EBSでは毎年、通常案件売上と同じ規模の大型案件によって、リソースに対して非常に大きな売上をクリアしてきた経緯がある。確かに、2005年はそのような大型案件が1件もなかったことから売上は半減しているように見えるが、本来の人員リソースからすると、決して少ない数字ではないそうだ。
同様に取材時に「大型案件の減少」をあげたのがSAP Japanである。SAP Japanでは大型案件がゼロではなかったものの、そのような大型案件が減少傾向であることについては認めている。
国産唯一の大企業向けERPパッケージとして、「人事給与」を中心にシェアを上げてきたワークスアプリケーションズのCOMPANYは、2004年12月に経理・会計ソリューションパッケージ「COMPANY Financial Management」をリリースした。
2004年は対前年をわずかに割る業績であったが、2005年は「COMPANY Financial Managementがどこまで業績を伸ばすのか?」が注目される。
なぜならば、ワークスアプリケーションズが、SAP JapanやOracleと同様に年商1,000億円以上の大手企業をコアターゲットにしていること、そしてCOMPANY会計シリーズは、経理・会計業 務の統合パッケージ「COMPANY Financial Management」をはじめとして、販売・購買管理パッケージ「COMPANY Business Management」、財務・資金管理パッケージ「COMPNAY Cash Magagement」、経営分析・戦略立案パッケージ「COMPANY Strategy Management」の4構成で、「ノーカスタマイズ」をコンセプトとし、日本の商習慣にターゲットを合わせて開発された製品、とされているからである。
大手企業向けのERPパッケージ市場の2002〜2008年のCAGRが1.3%と予測される中、COMPANYの業績次第では大手企業向けERPパッケージ市場自体の活性化も期待できるだろう。
今まで「ERPパッケージはカスタマイズが前提、アドオン開発もやむをえず」とするソリューションによって、ERPそのものの効果を発揮できなかっ たり、アドオン開発をしたがためにパッケージ導入目的の1つであるイニシャルコストやランニングコストの削減ができなかったとすれば、COMPANY会計 シリーズが「ノーカスタマイズ」で導入に成功すれば、一度ERPを検討したが諦めた企業でもERP導入検討が再燃する可能性も十分にある。