連載 [第7回] :
異なる世代のエンジニアが語る「世代間ギャップ」とは新卒3年目と新卒11年目のエンジニアが語る世代間ギャップの実態
2024年8月22日(木)
東京丸の内に本社を構えるとあるIT企業。異なる世代のエンジニア社員達が働き方やコミュニケーションなどの様々な「世代間ギャップ」を語り合います。
異なる世代のエンジニアが語り合う「エンジニア世代間ギャップ」企画。最終回の今回は、現在同じ案件に参画している新卒11年目の伊藤さんと新卒3年目の長友さんへのインタビューです。共に似た考え方を持つお2人はあまり世代間ギャップを感じたことがないそうですが、その実態とは…? 多くの興味深い話を聞かせていただきましたので、ぜひお楽しみください。
登場人物紹介
まずは、お2人の自己紹介をお願いします!
- 長友:2022年に新卒で入社して3年目になります。大学の専攻は理学部化学科で、院まで行きました。現在参画しているのは銀行のゼロトラストセキュリティの案件です。新卒1年目の10月から参画したので、2年近く経っています。趣味は散歩ですね。特段これといった趣味を持っているわけではなくて、月ごと、年ごとに変わります。最近は暑くなってきたのでそろそろ趣味も変わってしまうのかなと思いつつ…最近は外出するのが好きですね。
- 伊藤:2014年に新卒で入社して11年目です。長友君と同じく大学の専攻は化学で、大学院まで行きました。過去には運用、更改案件、上流案件(要件定義)の案件に参画して、現在の案件は設計等の上流から入っています。スポットで何ヶ月しか入っていない案件もあれば、2年やっている案件もあります。趣味はお酒を飲むこと、あとはパーカー集めで、気に入ったものをいつも探しています。アクティブな趣味というよりはインドアな趣味が多いですかね。
お互いの印象
同じ案件に参画しているとのことですが、お互いの印象を教えてください。
- 伊藤:長友君は考え方が理系で、僕と同じような考え方で物ごとを組み立てていくので、なんでこの結論に至ったのかっていう過程がとても分かりやすいです。言ってしまえば僕と同じ考え方だから波長が合うのかもしれません。
- 長友:そうですね、研究課題はどうしても期限のことを忘れて深くやってしまう感じがありますが、エンジニアはある程度の回答をもったら期限内にアウトプットして出すことが求められるので、はじめは違和感がありました。最初のころから伊藤さんが「期限」の感覚を教えてくれたので、徐々に慣れてきたかなって思っています。自分から伊藤さんへの印象は、ネットワークセキュリティ部の先輩の中では一番怖そうだと思っていました(笑)。伊藤さんは感覚が似ていると言っていましたが、その点をよく汲み取ってくださって。自分の痒い所に手が届くというか、頼りにしています。
世代間ギャップはあまり感じない?
なるほど、そんな似たもの同士のお2人ですが、エンジニアとして仕事をする中で世代間ギャップを感じたことはありますか。
- 長友:自分はあんまりギャップを感じてないですね。
- 伊藤:世代間ギャップとは少しベクトルが違うかもしれないですけど、教え方に気を付けているのはありますね。僕が新卒の頃って良い意味でも悪い意味でもビシバシ教えてくれることが当たり前で、それは「僕ができるようになるためなんだろうな」っていう気持ちでした。でも、昔と今では教え方が大きく変わったので、若い人たちが先輩社員になったときに、どういう教え方をするのか気になりますね。若い子たちにはとても慎重に仕事を教えている感覚があるかな。この感覚は僕だけじゃないと思いますね。
- 長友:一世代上の厳しい指導スタイルはドラマなどで見たことがあるので、そのイメージからするとかなり丁寧に接してもらっていると思います。個人的には、必要なときにはしっかり叱ってほしい気もしますが、行き過ぎると精神的に負担がかかりますよね…。伊藤さんも言っていたように、本人が大丈夫だと思っていても、いつ心が壊れるか分からないのが怖いところですね。
世代の違う人と接する中で意識していること
お2人が世代間ギャップを感じていないというのは、世代の違う人と接する中で意識していることがあるのでしょうか。
- 伊藤:僕は上の人も下の人も友達感覚で話せることを目指しています。仲の良い人とは仕事の後に飲みに行ったり、プライベートでも遊んだりすると仕事が円滑に行くと思っていて。それが合う人と合わない人もいると思いますが、感覚が同じ人なら仕事はしっかりやりつつ、後輩にフランクに接することで、相手も話しやすくなると思っています。長友君にも友達と話す感覚で話しているかな。
- 長友:確かに、そんな感じはしますね。自分が考えなさすぎなのかもしれない(笑)。今まで、中高の先生も大学の教授も接しやすい人たちだったので、世代間ギャップを感じることが少なかったです。先生たちが自分たちのレベルに合わせてくれていたので、自分は恵まれていたと思いますね。その時点から世代間ギャップに対する感覚が違っているのかもしれないなあ。
先輩社員に聞く! エンジニアの今と昔
今と昔でエンジニアの働き方や環境等で変わったと感じることはありますか。
- 伊藤:エンジニアをやってみたいなっていう気持ちでこの会社に入ったんですけど、大学と大学院で化学を専攻してからエンジニアの道に進む人ってあまりいないんですよ(笑)。僕にとってはやることが全部新しくて面白かったです。やることは基本的に同じで、オンプレ、仮想環境、クラウドに関わらず、実装するのはWindowsやLinuxで、ミドルウェアも昔から使っているものが多いです。もちろん知識やトレンドは変わります。例えば、流行りは仮想化よりクラウドだと思っていると、またオンプレが注目されるようになったりします。技術はもちろん、人の動きの方が大きく変わったと感じますね。
後輩社員に聞く! エンジニアのイメージ
入社前と入社後でエンジニアに対するイメージは変わりましたか。
- 長友:最終面談で社長から「研究は長い時間かけて深くやるけど、エンジニアは決まった期限で成果を出さないといけない」という話を聞いて、当時から少しエンジニアのリアルなイメージはついていたと思います。でも、今入っている案件が上流工程だからなのか、スピード感はあまり感じなく、警戒していたほどではないっていうのが入社前と入社後のギャップですかね。言われていたほど短期間のアウトプットではなく、システムに対して考える時間があるので、自分には合っている仕事だなと思いました。ただ、同じ案件に長くいると、その案件に偏った知識になりがちで。自分は3ヶ月~半年で違う案件に行くものだと思っていたので、色々なものをバランスよく覚えられると思っていましたが、今の案件は2年近くやっています。深く掘り下げる楽しさもあるけど、新卒から入っているしもっと幅広い知識を得たいとも思っています。
- 伊藤:僕は、ずっと黙々とパソコンと会話している業界だと思っていたら、意外とお客さんとディスカッションすることが多くて、入社前と入社後でイメージが変わったかな。
- 長友:確かに、お客さんとの会話を通してリスクを取り除くというか、とりあえずやってみる実験とは違って、仕事ってなると1つのもの動かすのに手順書を書いて、パラメータシートを作成して…、実際に手を動かすのはほんの1、2時間なのに、その前の準備で細かい所だけでも1日~1週間かかることもあります。組み立てとしては大事だと思いますが、自分は手を動かしながら考えたい人間なので、机上評価ってあまり好きじゃないです(笑)。
- 伊藤:確かに。僕たちの考え方ってトライ&エラー型だよね。だから前準備が面倒くさいと感じちゃう。最初は確かに「そこまで気にする?」っていうのはあったけど、やってくと「あ、大事だな」ってなる。
- 長友:社会人になると自分の身は自分で守れって言われますよね。そういう意味で、自分を守るために段階を踏むことが大事なのだと思います。
どのようなエンジニアを目指すのか
これからお2人がチャレンジしたいことを教えてください!
- 伊藤:今まで基本的に運用、サーバ、ストレージがメインだったから、案件では触れていないネットワークをやってみたいですね。自己満足になってしまうかもしれませんが、CCNAとかネットワークスペシャリストの資格を取得したいと考えています。
- 長友:自分は今やっている案件が8月以降も続くので、とりあえずやるべきことをやるっていうところはありますね。その後はインフラ系の案件が予定されているので、そのための勉強も進めて行きたいと思います。
- 伊藤:今一緒にやっている案件は、僕が抜けてしまうと必然的に長友君がチームリーダーだよね。個人的に思うのは、チームリーダーのスキルってどこでも必要だから、そこをブラッシュアップしたら、リーダーのスキルを切り口に新しい技術に触れられるかもしれない。
- 長友:2年近くやっている案件のリーダーなので、突発でやるよりはスムーズに進めると思うので、初リーダーになるという意味ではありがたいですね。プライベートだと自分もネットワークに興味があります。ネットワークスペシャリストの勉強をするか、CCNAは新卒の頃に勉強したので、それの上位資格を取るか、もしくは次の案件で関わりそうなF5の勉強をするか悩んでいるところです。ITって勉強しても後から湧いてくるので、難しいけど勉強するには飽きない世界です。これからもたくさん勉強して一人前のエンジニアになりたいです。
* * * * *
今回のインタビューで、お2人は共通のバックグラウンドを持ちながらも、それぞれの視点から率直な考えを話してくださいました。世代や経験の違いを超えた共感と理解が、より良い仕事環境を作ることができると筆者は感じました。
これまで7回にわたりお届けしてきた本連載も、いよいよ最終回を迎えました。今回のテーマである「エンジニア世代間ギャップ」について、長年の経験を持つ方と新たに挑戦を始めた方の対話を通じて、興味深い視点を提供できたことを嬉しく思います。皆さんも、本連載を通じて世代や経験の違いがあっても、共通の理解や工夫したコミュニケーションによって、より良いチームワークや信頼関係が築かれることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
長い間お付き合いいただき、ありがとうございました!
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