モデリングの新潮流 2

新しい手法への抵抗感をなくそう

新しい手法への抵抗感をなくそう

次に、SysMLを導入するにあたり問題となる可能性のある点について、3点ご紹介します。

まず、システム設計において「モデリング」という考え方がまだ広まっていないことが挙げられます。ソフトウェアの設計開発ではUMLを利用 したモデリングが徐々に浸透していますが、システム設計ではまだまだこれからです。そのため、モデリングという考え方や方法についての理解と先行投資が必 要となります。

さらに、新しい技術や方式の導入に関して、設計者が抵抗を感じることもあるでしょう。こうした心理的な壁についても対策が必要です。この点 については、システムが今後さらに高機能化され、さらに品質面や期日面での要求が厳しくなった場合に、現状の方法では対処できないという認識を共有し、将 来を見据えて少しずつ理解し利用を広めていくことが必要です。

最後は、現在のところほとんどSysMLが利用されていないため、果たして本当に効果があるのか?導入してよいのか?という点に不安があることです。この問題については後半で説明します。

図3:SysMLのメリットとデメリット

SysMLの使い方

まとめとして、現時点でのSysMLの使い方を提案します。

SysMLの問題点として3番目に挙げたように、現時点で日本においてSysMLは実際のシステム設計にはほとんど利用されていません。実 際に利用した事例も公開されていません。さらに学ぶための日本語の書籍もなく、Webサイトや雑誌にもあまり情報がありません。そのため、多くを独力で学 んで経験を積む必要があります。

ちなみに、弊社ではSysMLを利用するための製品を発売していますが、ほかのアドイン製品に比べると売れ行きはまだまだです。このあたりからも、実際に使われている例は少ないと思われます。

このような状況では、今後果たしてSysMLが標準的に利用されるのかどうか、という点が気になることでしょう。この点について、筆者は今後2、3年かけて、徐々に広まっていくと考えています。

まず、SysMLを公開しているOMGの位置づけと功績が認知されていて、UMLと同様に標準的な記法として利用されるための条件が整って いることが挙げられます。さらに、システム自体が今後さらに高機能化、複雑化することは間違いなく、複数のシステムを組み合わせたシステムの設計など、困 難の度合いはさらに上がっていくことは明らかです。

このような状況において現時点で有力な共通記述のルールがありませんので、SysMLもUMLと同様に、時間をかけて広まっていくものと思います。

しかしながら、現時点ですべての設計をSysMLで行うということは現実的ではありません。そこで、既存のシステム設計の変更や新規に設計 を行う場合に、今までの方法のほかにSysMLでも対象のシステムを表現し、その両者を比較してメリットとデメリットを認識、蓄積していくことが重要で す。もちろん、同じ情報を2通りの方法で表現することになりますので、コストと時間がかかります。このあたりは、経営層の理解が必要になります。

SysML自体は単なる表記法でありプロセス(使い方)は定義されていませんので、SysMLをどのように使うか、という点について試行錯誤しながら学んでいかなければなりません。

SysMLはまだまだこれからの技術ですので、現時点から少しずつ知識や経験を積んでいくことが重要ではないでしょうか。

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