【号外:地域創生の1つのゴール】11月17日開催「生成AI EXPO in 東海」名古屋会場レポート
- 1 はじめに
- 2 「生成AI EXPO in 東海」とは
- 3 名古屋会場で行われた内容について
- 3.1 10:00〜11:00「グローバルコミュニケーションを通した生成AIの考え方」
- 3.2 11:20〜11:40「生成AI EXPO in 東海の歩き方」
- 3.3 11:50〜12:40「生成AI時代に生きる私たちの人間性と倫理観」
- 3.4 13:00〜13:40「推論から考えるAIの未来とコミュニケーション」
- 3.5 14:00〜14:40「生成AI時代のAI独学法〜生成AI EXPO in 東海Ver〜」
- 3.6 14:40〜15:10「大規模基盤モデルによる第4次AIブームの到来」
- 3.7 15:20〜16:10「特別セッション」
- 3.8 16:20〜17:30「IKIGAI Lab × CDLE名古屋企画」
- 3.9 17:40〜17:50「クロージングトーク」
- 4 ワークショップの紹介
- 4.1 ピクシーダストテクノロジーズ株式会社リアルタイム多言語コミュニケーションの革新「vuevo」
- 4.2 CDLE名古屋AI技術が導く新しいエンターテインメント「AIモンスター人相占い」
- 4.3 未来への言葉
- 5 名古屋会場を終えて
- 6 生成AI EXPOを終えて
はじめに
本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している8名で運営しています。この記事を通して、ぜひ皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、色々な価値観を楽しんでいただけると嬉しいです。
2024年11月15日(金)から11月17日(日)にかけて「生成AI EXPO in 東海」が開催されました。今回は11月16日に行われた名古屋会場について、詳細を報告します。ぜひお楽しみください!
「生成AI EXPO in 東海」とは
2023年12月、犬山市を起点に地域を巻き込んでスタートした生成AIイベントが、愛知県内外のコミュニティや関係者からの要望を受け「生成AIEXPO in 東海」として大規模開催されました。イベントには約70の団体が所属し、各業界の最先端で活躍する専門家が登壇。自治体の協力を得て、専門的な内容を一般の参加者にも分かりやすく解説しました。
また、イベントの盛り上がりを継続させるためサイドイベントを複数回実施し、累計参加者数は約1,000名に達しました。生成AIが地域社会と結びつき、新たな可能性を生み出す場となりました。
ベントを複数回実施し、累計参加者数は約1,000名に達しました。生成AIが地域社会と結びつき、新たな可能性を生み出す場となりました。名古屋会場で行われた内容について
場所は「FabCafe Nagoya」で行われました。この会場では「コミュニケーション」をコンセプトとして、セッションやワークショップが開催されました。
10:00〜11:00「グローバルコミュニケーションを通した生成AIの考え方」
登壇者:
・藤田 研一氏 / 株式会社K-BRIC&Associates 代表取締役社長
・木下 直美氏 / Givin’ Back 株式会社 代表取締役
・田中 悠介氏 / Givin’ Back 株式会社 取締役
本会議では、グローバルコミュニケーションと生成AIについての議論が行われました。木下氏と藤田氏が主要なスピーカーとして参加し、それぞれの国際経験を共有しました。
藤田氏は、グローバル企業であるシーメンスでの15年の経験から、グローバル企業でのコミュニケーションを「サファリパーク」と表現し、多様性の重要性を強調しました。
木下氏は、日本と台湾のバックグラウンドを持つ経験から、非言語コミュニケーションや感情表現における文化の違いについて言及しました。
会議後半では、生成AIを活用したコミュニケーションサポートツール「AIバディ」の紹介があり、メンタルケアやキャリアサポートへの応用について議論されました。藤田氏は、AIの活用について、特にリサーチャーとしての役割や情報の正確性の検証の重要性を指摘しました。
11:20〜11:40「生成AI EXPO in 東海の歩き方」
登壇者:
・田中 悠介氏 / Givin’ Back 株式会社 取締役
・伊藤 雅康氏 / Studio veco
・Hiroshi_A1氏 / web3僧侶 元シュンスケ式プロンプトデザインコミュニティマネージャー
・しぶちょー氏 / しぶちょー技術研究所
・西村 真人氏 / Chick Design
・矢橋 友宏氏 / FabCafe Nagoya 代表取締役
生成AI EXPO in東海の開会式セッションにて、田中裕介氏を含む共同代表メンバーが集まり、3日間のイベントの概要と見どころについて説明が行われました。イベントは岐阜、犬山、名古屋の3会場で開催され、参加者数は700名を超え、70以上の団体が協力しています。名古屋会場では、コミュニケーションと生成AIをテーマに藤田氏、唐あげ氏、藤吉氏による特別セッションが予定されています。会場となるFabCafe Nagoya代表の矢橋氏からは、会場が東海エリアのオープンな交流の場になることの期待を語られました。
11:50〜12:40「生成AI時代に生きる私たちの人間性と倫理観」
登壇者:
・武田 正文氏 / 高善寺住職 臨床心理士 公認心理師
・Hiroshi_A1氏 / web3僧侶 元シュンスケ式プロンプトデザインコミュニティマネージャー
本セッションでは、僧侶の武田正文氏とHiroshi_A1氏が生成AIと仏教の関係性について議論を展開しました。武田氏は生成AIの時代を「魔法の始まり」と例え、現代のAI実践者を「シャーマン」に例えました。
両氏は、AIの進化が人間性や倫理観に与える影響について深く議論し、特に知恵と慈悲のバランスの重要性を強調しました。また、メタバース空間での寺院やAIを活用した法話の可能性についても議論が行われました。さらに、テクノロジーと仏教の融合による新しい可能性を探りながら、人間の本質的な価値を保持することの重要性を強調しました。
13:00〜13:40「推論から考えるAIの未来とコミュニケーション」
登壇者:
・Mさん氏 / CDLE名古屋
本セッションでは、Mさん氏が推論から考えるコミュニケーションとAIの未来について発表を行いました。知性に対する興味が推論の研究に繋がり、それが今のAI研究に繋がっているとの自己紹介がありました。その後、順問題と逆問題について説明し、それぞれの特徴と取り組む際の注意点について、特にコミュニケーションの面から解説しました。
その後、AIが演繹推論、帰納推論、案出能力を備えてきた歴史を振り返り、現在のマルチモーダル大規模言語モデルがArtificial General Intelligence(AGI)の萌芽段階にあることを説明しました。一方で、推論の側面から見た現在のAIの限界と今後の課題について分析し、AGIへの発展可能性について予測を示しました。
14:00〜14:40「生成AI時代のAI独学法〜生成AI EXPO in 東海Ver〜」
登壇者:
・からあげ氏 / AIの仕事をしているエンジニア
本セッションでは、AI関連の仕事に従事し、技術書の執筆やメーカー活動にも携わるからあげ氏が、生成AI時代のAI独学法について講演を行いました。AIの重要性、AI学習の個人的経験、そして実践的なプロジェクト例を共有しました。
特に、画像生成AI、Stable Diffusion、ChatGPTなどの技術を活用した様々なプロジェクトについて詳しく説明し、AI学習におけるハンズオンアプローチの重要性を強調しました。また、JDLA(日本ディープラーニング協会)の資格試験やコミュニティの重要性についても言及しました。
14:40〜15:10「大規模基盤モデルによる第4次AIブームの到来」
登壇者:
・藤吉 弘亘氏 / 中部大学理工学部 AIロボティクス学科・教授
中部大学の藤吉教授が、第4次AIブームと基盤モデルによる生成AIの時代について講演を行いました。
第3次AIブームとディープラーニングの基礎
ディープラーニング技術の基本概念と画像認識への応用について説明。畳み込みニューラルネットワークの仕組みと学習プロセスを詳述。
自動運転技術とロボティクスの実践例
Waymoの無人ロボタクシーの実例を紹介し、実際の乗車体験から得られた安全性と快適性について解説。
第4次AIブームと基盤モデル
ディープラーニングの基本概念から、現在の基盤モデルを活用した生成AIの応用まで幅広く解説しました。
特に注目すべき点として、藤吉教授は教育分野でのAI活用事例として「藤吉AI先生」というシステムを紹介し、学生の学習支援における効果を示しました。
このシステムは、講義動画とAIを組み合わせることで学生の質問に24時間対応可能な仕組みを実現し、98%の学生から高評価を得ています。また、自動運転技術やロボット工学における応用例も紹介され、AIのインフラ化が進む現代社会における課題と可能性について議論されました。
15:20〜16:10「特別セッション」
登壇者:
・藤吉 弘亘氏 / 中部大学理工学部 AIロボティクス学科・教授
・からあげ氏 / AIの仕事をしているエンジニア
・しぶちょー氏 / しぶちょー技術研究所
本トークセッションでは、しぶちょー氏が司会者となり、登壇者の藤吉教授とからあげ氏を招いて、AIの研究と実装について議論が行われました。
AIブーム前後での業界変化についての議論
しぶちょー氏が生成AIブーム前後での業界の変化について質問を投げかけ、藤吉教授とからあげ氏がニューラルネットワークが禁忌とされていた時代から現在までの変遷を説明。特に、データ量の増加と計算機の進歩が現在のAIブームを支えている点が強調されました。
研究分野における最新トレンド
藤吉教授が多様なモデルの重要性とモデルのダウンサイジング研究について説明。からあげ氏は、エッジコンピューティングでの小規模モデルの可能性と、言語処理以外での活用について言及しました。
AIの学習アプローチについての議論
初学者向けのAI学習方法について議論。藤吉教授は、G検定の重要性と、使う側と作る側で必要な知識の違いを説明。からあげ氏は、自分の興味や専門性とAIを組み合わせる重要性を強調しました。
名古屋地域でのAI展開について
名古屋地域特有のAI展開について議論。製造業との連携の重要性が強調され、中部大学の講座などの具体的な取り組みが紹介されました。
16:20〜17:30「IKIGAI Lab × CDLE名古屋企画」
登壇者:
・IKIGAI Lab
髙橋 和馬氏 / 富士フイルムビジネスイノベーション(株)
國末 拓実氏 / ソウルドアウト(株) 生成AI研究室 オーナー
池田 大喜氏 / Think IT「Gen AI Times」編集長
・CDLE名古屋
徳和 貴成氏 / CDLE名古屋リーダー
多喜 脩文氏 / CDLE名古屋 東京支部.CDLEコアメンバー事務局
Mさん氏 / CDLE名古屋
このセッションでは、IKIGAILabとCDLEの代表者たちが3日間のEXPOを振り返り、今後の展望について議論しました。
高橋氏が司会を務め、各コミュニティの特徴と活動内容が共有されました。IKIGAI Labは生成AI推進を中心とした相互自立的なコミュニティで、CDLEは日本ディープラーニング協会のG検定合格者によるコミュニティとして紹介されました。参加者たちは岐阜、犬山、名古屋での各セッションの印象に残った点を共有し、2025年に向けての目標を語り合いました。
特に印象的だったのは、参加者たちがAIの民主化と普及、コミュニティの発展、そして新しい繋がりの創出に向けて、具体的な行動計画を示したことです。
17:40〜17:50「クロージングトーク」
登壇者:
・田中 悠介氏 / Givin’ Back 株式会社 取締役
・伊藤 雅康氏 / Studio veco
・Hiroshi_A1氏 / web3僧侶 元シュンスケ式プロンプトデザインコミュニティマネージャー
・しぶちょー氏 / しぶちょー技術研究所
・西村 真人氏 / Chick Design
・矢橋 友宏氏 / FabCafe Nagoya 代表取締役
・近藤 にこる氏 / EdFusion 代表
生成AI EXPO in 東海の3日間の閉会式において、主要な共同代表者たちが振り返りと感想を共有しました。
本イベントは岐阜、犬山、名古屋の3会場で開催され、サイドイベントを含めて累計1,740名の参加がありました。特に名古屋会場では、アカデミックな内容と実践的なワークショップを組み合わせた構成が特徴的でした。また、参加者の想いを生成AIと3Dプリンターを活用して形にするという革新的な取り組みも行われました。イベント全体を通じて、生成AIの普及と地域での活用、人々の繋がりの重要性が強調されました。
ワークショップの紹介
ここからは、名古屋会場において、展示・ワークショップにご協力いただいた企業の内容を紹介します。
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
リアルタイム多言語コミュニケーションの革新「vuevo」
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社が出展した「vuevo(ビューボ)」は、コミュニケーションの未来を大きく変えうる可能性を秘めた画期的なツールです。このシステムの特筆すべき点は、単なるリアルタイム文字起こしにとどまらない、その革新的なインターフェースにあります。
話者の位置に応じて文字が表示される直感的なデザインを採用しており、例えば、左側から話している人の言葉は画面左側に表示されます。この空間的な一致により、複数の話者が同時に会話をする場面でも、誰が何を話しているのかが一目で理解できます。さらに、複数言語に対応しており、英語で話された内容を日本語に自動翻訳して表示するなど、言語の壁を越えたコミュニケーションを可能にしています。
システムの応答速度の高さも印象的でした。話者の音声をほぼ遅延なく認識し、瞬時に文字化して表示する性能は、実用的なコミュニケーションツールとして十分な完成度を感じさせます。また、音声認識の精度も高く、専門用語や固有名詞なども正確に文字起こしできる点も、実用性を高めている要因の一つです。 特に印象的だったのは、子どもたちの反応です。展示会場では、多くの子どもたちが英語、インドネシア語、中国語など様々な言語での実験を楽しみ、その場で翻訳される様子に目を輝かせていました。興奮した様子で何度も試す子どもたちもいました。これは、テクノロジーが単にビジネスツールとしてだけでなく、教育や異文化交流の場面でも大きな可能性を持つことを示しています。
CDLE名古屋
AI技術が導く新しいエンターテインメント「AIモンスター人相占い」
次に注目を集めたのは、ユニークな発想でAI技術を活用した「モンスター人相占い」です。このシステムは、Webカメラを通じてユーザーの顔を認識し、年齢と性別を判定した上で5つの属性に基づいた性格分析を行います。
技術的に特筆すべき点は、このシステムがフロントエンドのみで完結している点です。従来の占いシステムとは異なり、バックエンドのデータベースに依存せず、画像認識モデルによるリアルタイムの分析を行っています。これにより、高速なレスポンスと安定した動作を実現しており、ユーザーはストレスなく体験を楽しむことができます。
システムは顔の特徴を詳細に分析し、目の形、表情のパターン、顔の輪郭などから性格特性を推測します。来場者からは「意外と当たっている」「自分の性格をよく言い当てている」という声も多く聞かれ、AI技術の精度の高さを実感させる展示となりました。
さらに、分析結果に基づいて、ユーザーごとにカスタマイズされたモンスターや妖精の画像を生成する機能も備えています。この機能は特に人気を集め、自分の性格がファンタジックなキャラクターとして視覚化される体験に、多くの来場者が喜びの声を上げていました。でき上がったキャラクターをその場でSNSにシェアする来場者も多く見られ、技術的な革新性とエンターテインメント性を見事に融合させた展示となっています。
未来への言葉
参加型のアート作品「100年後の未来を思い乗せる」です。このワークショップでは、生成AIが対話的に未来についての問いかけを行い、参加者の回答を集めて視覚化するという革新的な試みが行われました。特に注目すべきは、単なる意見収集に留まらず、AIとの対話を通じて参加者自身が自分の考えを深められる仕組みを実現している点です。
参加者は、まず「100年後の名古屋でのくらし」「子どもたちへ残したいこと」「未来の働き方」といったテーマについて、生成AIとの対話を通じて考えを整理していきます。この過程で生成AIは時に具体的な例を示しながら、時に新たな視点を提供しながら、参加者の思考を支援していきます。
そうして集められた参加者の言葉は、大型スクリーンに映し出される空間内で、まるで光の粒子のように浮遊する視覚的要素として表現されます。それぞれの言葉が持つ意味や感情の強さによって、異なる動きや輝きを見せる様子は、まさに「思いの可視化」と呼ぶにふさわしいものでした。これらの視覚要素は、会場全体に幻想的な雰囲気をもたらし、来場者の足を止めさせる印象的な光景を作り出していました。
そして最終的に、これらの言葉や思いは3Dオブジェクトのためのプロンプトへと変換されます。AIが参加者たちの集合的な未来への想いを解釈し、それを立体的な形状として表現するプロンプトを生成するのです。さらに、そのプロンプトを基に3Dプリンターで実物のオブジェクトを作製するという、デジタルからフィジカルへの転換を実現しました。この過程は、抽象的な「思い」が、AIの解釈を経て具体的な「形」となっていく興味深い展開を示しています。
名古屋会場を終えて
名古屋会場では、岐阜会場、犬山会場と違い、1つのテーマを元にセッションが実施されました。
会場の外にある公園には親子がテントを張って楽しく遊んでいる様子が見え、中には専門家たちのセッションによる勉強会もありました。この内容は、今までの事例発表会と違い、新たな未来を考え模索したテーマでのセッションでの発表だったと思います。1つの地域に根差したイベントの終着点が名古屋会場であったと感じました。
生成AI EXPOを終えて
今回、生成AI EXPOは10月5日から始まるサイドイベントで愛知県、岐阜県、静岡県、東京都、オンラインで10回以上開催され、さらに11月15日から3日間の別会場で実施されるという大規模なイベントになりました。
トークテーマについては、教育、学生起業家、生成AIツール、アントレプレナーシップ、自治体活動など幅広いテーマを取り上げ、50以上のセッションを行っていました。このイベントは東海地方における生成AIの地方創生として1つのモデルケースになると感じることができました。
このイベントが、各地方創生について悩んでいる人々の後押しになることができるのではないかと思っています。
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写真: 山内 章啓