相手に「分かりやすい文章を書く」の巻

2025年2月25日(火)
宮川 文吾
本連載では、演出家であり脚本家である著者の経験から、他業種の視点でエンジニアに役立つ知識などを紹介していきます。

寅年の宮川文吾です。こんにちは。何が言いたいかというと、虎はネコ科なので、寒い時期はコタツで丸くなりたいということです。誰か私にお餅とみかんとお酒を運んでください。丸まってますんで。

さて、前回前々回と「相手に伝わる話し方」について書きましたので、今回は「相手に伝わる書き方」について書きたいと思います。

これまでの書き方については色々と掲載して来ました。どれも相手のあるコミュニケーションですから、当然答えは1つではありませんし、人それぞれです。「自分に合うな」と思ったものをぜひ実践し、しっくりきたものを取り入れていただければと思います。

文章とはそもそも、何かを他人に伝えるための方法の1つです。つまり、自分だけで楽しむ日記やブログなどを除いて、文章は人に伝えるためにあると思っています。そして、文章の役目は「人の心を動かすこと」ではないか、とも思っているのです。

人の心を動かす文章とは

人の心を動かすことが文章の役目……。ちょっと壮大な話のようですが、そんなことはありません。企画書を読んで「なるほど! それは良いね」と心が動けば上司は企画書を通してくれるでしょうし、エントリーシートを読んで「詳しく話を聞いてみたいな」と思わせることができれば面接に呼んでもらえるはずです。チラシの文句を読んで「欲しい!」と思えば商品購入に繋がりますし、そんなに意識していなかった子からのラブレターを読んで「グッときた」のであれば、もしかしたら付き合ってもらえるかもしれません。

これらはすべて「文章が人の心になんらかの変化を与えた=人の心を動かした」と言えるのではないでしょうか。

  • ビジネス文章
  • 企画書
  • 記事
  • X(ツイッター)
  • 手紙

「せっかく書くなら、人の心を動かす文章を書きたい」。文章を仕事にしている人でなくとも、私たちはあらゆる場面で「伝えるための文章」を書く機会があります。文章以外にも人の心を動かす要素は多くありますが、文章も人の心に働きかける上で大きな役割を占めると思います。

伝わる文章を書くための「3つ」の意識

伝わらない文章というのは「その人の中で完結してしまい、全く伝わってこない状態」になりがちです。大事なのはきちんと相手の心に届けることです。 そのために今回お伝えしたいのは、以下の3つの意識です。

  1. 相手はだれか(ターゲット意識)
  2. 何を伝えたいのか(目的意識)
  3. どうなってほしいのか(反応・行動)

以上の3つを意識しながら書くだけで、文章はグッとよくなるはずです。どんな想いで書いたかよりも、相手がその文章をどう受け取りどのように感じたかが大事なのは言うまでもありません。

「そんなつもりはなかった……」なんてよく耳にしますし、脚本でも良く使うフレーズです。が、結局は相手ありきの話ですから、こっちがどういう意図だったか、よりも相手にどう伝わったのか、の方が大事なのは言うまでもありません。後悔する前に、一度自分の文章を見直してみましょう。

相手はだれか(ターゲット意識)

前述したとおり、文章は読み手がいてはじめて成り立つものです。ターゲットがはっきりしないままに文章を書くと、だれにも届かない文章になりがちです。

その文章はだれに向けて書いていますか。実際に読む相手が決まっているときには、その人が文章を読むところを想像してみてください。エントリーシートであれば「人事担当者」へ。企画書であれば「上司・取引先」へ。記事であれば「読者」へ。ラブレターであれば「好きな人」に向けて書いていますよね。

このように、だれに届けたいのかを必ず想定してください。上司なのか部下なのか、男性なのか女性なのか、スイーツ好きなのかそうでないのか……。相手によって書くべき内容は変わってきます。上司なら読み終わった後、なんと言いそうでしょうか。後輩に分かりにくい専門的な言葉を使っていないでしょうか。相手を意識するだけで、より届く言葉を選んで書くことができるはずです。

また、記事の執筆やお客様へのチラシなど、具体的に相手が目の前にいない場合は、どんな人に読んでもらいたいのかを想定しましょう。想定しているターゲットに近い友達がいれば、その友達に向けて書いてみるのも良いかもしれません。もし思い当たらなければ、届けたい相手はどんな人なのか、具体的に思い描いてみましょう。

「その人はなにを望んでいるか」「その人の興味関心は何か」。このあたりを具体的に想定すればするほど、相手に届く文章になります。好きなもの、興味関心、願望などが分かれば、どの言葉を選び、どんな比喩表現で伝えれば良いかも浮かび上がってくるはずです。

大事なのは、だれか1人を濃厚にイメージすること。その人のハートにがっちりばっちり届けば、その人に似ている属性の人にも必ず届くはずです。近くの1人にも届かない文章は、結局だれにも届かないことを頭の片隅に置いてもらえればと思います。

何を伝えたいのか(目的意識)

意識するポイントの2つ目は「何を伝えたいのか」、つまり文章の「目的」です。企画書なら「やってみようと思ってもらえること」。エントリーシートであれば「自分に興味を持ってもらうこと・一緒に働きたいと思ってもらうこと・役に立つと思われる」こと。付き合ってほしいという旨のラブレターであれば「想いを伝え、OKをもらうこと」などことが目的となるでしょう。

基本的には伝えたいこと・目的は1つに絞り“1つの文書(記事)にワントピックのみ”を意識してみてください。あれこれ詰め込みすぎては「なんか色々書いてあったけどよく分からなかった」ということになりかねません。読み終わったあとに、ターゲットが「この文章は○○が××であることが書かれていた」と一言で答えられるような文章を目指しましょう。

「伝えたいのは何で、何のための文章なのか」をいつも意識するようにしてください。

どうなってほしいのか(反応・行動)

最後は「それを伝えてどうなってほしいのか」というターゲットの反応・行動への意識です。他人に向けて書く文章には「伝えたい想い・意図」があり、それに対する「欲しい反応」があるかと思います。その反応を引き出せる文章になっているかどうかを、書いている間は都度振り返ってみてください。

相手の反応を予測しながら文章を書けば「ここは『例えばどういうこと?』と突っ込まれるな……」や「『え、行ってみたい! どうやって行けば良いの?』と聞いてくるかもしれないな、加筆しよう……」など、自分の文章に客観的な視点を入れ込むことができます。相手の反応を引き出すためには、ときにはこだわっていた文章表現なども削っていくことが必要になるかもしれません。

欲しい反応から逆算して「これを読んだ相手が何と言ってくれるか」と想像力を働かせながら文章を書いてみてください。とても難しいことですが、欲しい反応も細かく思い描ければ思い描けるほど、人の心を動かす文章になっているはずです。

文章を書いたら必ず見直そう

今回は非常にシンプルな内容ですが「基本は大事」。書いたあと、これらのポイントに注意しながら必ず読み返す、というのもとっても大事です。 私は、脚本の修正が入っていたのに、うっかり修正前の原稿を送ってしまい、めちゃくちゃ怒られると思いきや、そのまま通ってしまったという経験もしています。。。人って案外いい加減だったりするというオチも付けて。また次回です!

1974年生まれ。演出家・脚本家。コンサート演出、フェス演出、テーマパークショー演出など多岐に渡る。脚本代表作は「はなかっぱ」「ベイブレードバースト神」などアニメ作品が中心。

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