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  ReadWrite Japan

Apple Watchはどのようにライバルに挑むのか

2015年3月19日(木)
ReadWrite Japan

先週月曜、アップルの一大イベントが終わり、われわれは今Apple Watchに関する詳細な情報を手に入れた。少なくとも、今まで知っていたよりも少しだけ多く。

ある意味、アップルは焦らし戦略をとったとも言えそうだ。一般の人々には4月10日に店頭で先行予約が始まってからしか製品を確かめる機会がない。だがその間に、アップルが自社初めてのウェアラブルデバイスに関して描いた概略を、いくつかの競合製品と比較することができそうだ。

結局、主な問題は、Apple Watchに他のスマートウォッチにはない何かがあるかどうかである。実際あるにはあるが、あまり多くはない。

Shoe Phoneよりはクールだ(たぶん)

同社が先日改めて発表したApple Watchの機能は、ほとんどが馴染み深いものだ。Siri、フィットネス・トラッキング、メッセージ送受信などの機能は全く驚くにはあたらない。

しかし、Apple Watchには興味深い機能がある。手首から通話ができる機能だ。この機能によって、Apple Watchは Tizenで動くサムスンのGear S、独自OSを搭載するLGから新発売されるスマートウォッチの競合端末となる。

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Apple WatchはSIMカードなしで通話ができる唯一のスマートウォッチなのだ

だが、それらのライバル製品とは異なり、Bluetooth を通してiPhoneと接続するApple Watchは、独自のSIMカードを必要とせずに電話をかけたり取ったりすることができる。これは既存のAndroid Wearのスマートウォッチではまだ成し遂げられていない芸当だ。

だがそれも、良い面と悪い面がある。手首からの通話は、アップルファンにとっては間違いなくユニークなオプションであり、一部のユーザーにとっては便利かもしれない。だが、このスタイルの通話が社会に浸透するかどうかは分からないのだ。Bluetoothのヘッドセットが人をカッコ悪く見せてしまうのと同様に、未来的な製品かどうかに関係なく、マヌケな姿に見える可能性は高い。

もし見た目が問題にならなくても、音はどうだろうか。今でさえ公共交通機関では、人々が携帯電話の着信音にピリピリしているのだ。多くの人々が時計で話すようになったら、この状況はすぐに悪化しかねない。

終日使えるバッテリー(1日を18時間として計算した場合)

以前、このスマートウォッチは毎日充電が必要になるとティム・クックは述べた。彼はバッテリー容量について詳しい情報を提供しなかったが、一日持続するだろうと言った。その後、その言葉を補足して、最大18時間までだと述べた。

実際のバッテリー寿命は使用状況によって変わってくる。つまり、人によって異なるということだ。しかし、バッテリーが長持ちするということが本当にそうだとしても、競合製品に比べれば、まだ可もなく不可もなくといったところだ。ほとんどのスマートウォッチのバッテリー寿命は1日~1.5日のものが多い(5~7日間の寿命をもつe-paper スクリーンのPebble、および今後発売予定のPebble Timeを除く)。

しかし、同製品ではバッテリー残量が低下すると省電力タイムに入る。その間はスマート機能が無効になり、画面には時刻だけが表示される。アップルによると、これは3日間維持できるという。Moto 360のようなAndroid Wear端末にも低電力モードはあるが、 ReadWrite編集部の経験から言うと、アップルの足元にも及ばないものだ。

同社は、同製品のバッテリー寿命に関する詳細な仕様をウェブページに掲載している。実際のmAh容量は不明なままだが、同社は、38mmのWatchモデルを使用した独自のテスト結果を開示している。

  • 終日バッテリー寿命:最大18時間
  • オーディオ再生テスト:最大6.5時間
  • 時計機能テスト(時間をチェックする):最大48時間
  • 充電時間:80%まで約1.5時間、100%まで約2.5時間
  • 通話時間テスト:最大3時間
  • ワークアウトテスト(エクササイズ):最大7時間
  • 省電力(スタンバイ、時間のみ表示):最大72時間

ウェブページによると、「通常、42 mm Apple Watchはバッテリー寿命がより長くなります」とのことだ。

驚きの価格設定

われわれは最も安価なモデル、アルミニウム合金の38 mm Apple Watch Sportが349ドルであることを昨年9月に知っていた。50ドルを上乗せすればこのモデルのボディは42mmとなる。これらの価格は既に、現在入手可能な中で最も高価な299ドルのAndroidスマートウォッチ、LGのG Watch Rを超えている(少なくとも、同社がLG Watch Urbaneを発売するまでは)。

Apple Watchの価格はそこから好みに応じて高くなっていく。ミドルレンジのステンレススチールApple Watchは549ドルから、オプションによって1,099ドルまで価格が上がる。Apple Watch Editionは18金製で、最低価格はなんと1万ドルから、オプションを全てつけた場合1万7000ドルとなる。

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Apple Watch Editionは最低価格でも1万ドルだ。

先日発表されたHuawei Watchの価格はまだ不明だが、Apple Watchのミドルレンジの価格設定とすら同程度だとは考えにくい。

アップルがウェアラブル端末の価格水準を引き上げているのは明らかだ。別の言い方をすれば、あらゆるスマートウォッチが値上げを始めても不思議ではないということだ。

お金で買える最高のブランド

同製品はまた、Apple Watch間の通信をサポートしている。既に明らかとなっていることだが、この機能は他のスマートウォッチが現在提供しているものとは異なる新しい機能だ。これによって、ユーザーはApple Watchを身につけている友達に、バーチャルで「タップする」だけでなく、リアルタイムのいたずら書きを送ったり、バーチャルな心拍を恋人に送ったりすることができるようになる。

アップルがフィットネスに注目していることを考えると、同製品内蔵の心拍モニターは当然の機能だ。モトローラのMoto 360や、サムスンのGear Live、G Watch Rは心拍数の追跡機能でアップルに先手を打ったが、まだ標準機能にはなっていない。これによって、アップルのウェアラブルは、既存のAndroid Wear端末の半分よりも、いくらか合理的にフィットネス追跡を行っていると言えるだろう。

結局のところ、Apple Watchにできて、他の端末にできないことは多くない。しかし、それは最も重要な点ではない。 アップルは全く別のスマートウォッチを作ることは考えていなかった (実際、同社はスマートウォッチという分類を避けている)。そうではなく、同社は、プレミアムな素材のスタイリッシュなステータスシンボルを提供することに焦点を当てたのだ。金ピカで1万ドルのミニチュアiPhoneを提供する理由は他にない。

消費者はApple Watchと競合製品との間の技術的および機能的な違いを気にしないとアップルは考えているようだ。アップルのロゴが背中に刻印されているウェアラブルを消費者が選ぶかどうかは、同社が賭けに出たということだ。それが本当に重要な点だ。

トップ画像提供:Apple

Brian P. Rubin
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

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