シリコンバレーに蔓延する誇大主張に、ついにメスが入る
政府機関および監視団体が、テクノロジー企業が掲げる誇大な主張について追求しようとしている。近頃引っ切り無しのシリコンバレーの裁判や新聞沙汰は科学的事実に基づかないプロパガンダの結果である。
ほんの数ヶ月前、プレスが注目を集めていた医療企業 Theranosの血液検査の不正確さ、また食料品スタートアップ企業Hampton Creek Foodsが扱う疑わしい卵の代用品について取り上げた。連邦取引委員会はLumos Labsが謳い上げる脳トレーニングゲームの効果が誇大なものだった件について200万ドルの罰金を課した。そしてFitbitはその心拍数モニタリングについて、ユーザーから告訴されている。
|科学vs.テクノロジー
これらはちょっとしたアンラッキーのようにも思えるが、実のところ氷山の一角に過ぎない、これはシリコンバレーの企業が科学的主張としておこなってきたことへの代償だ。
多くの場合、テクノロジー企業は自社製品の精度検証をし、判明した制限された結論を突破するべく、アーリーアダプターの見解をベースとしてコンシューマに対して大きな目標を謳っている。そして、その後も都合のいい結果だけを取り上げ限定的な結論をだしている。
目先の利益追及の為、テクノロジー企業は製品をリリースし、その利点を大きく謳い上げ、そしてユーザーベースが拡がることで、自分たちの結論は正しいのだと話を持って行きたいと考えている。
|届かないデータ
とあるケースを紹介すると、 脳トレーニングゲームによって認知能力が劇的に向上するというLumos Labsの主張とスタンフォード大学の報告結果に食い違いが出た時、私は同企業の役員に意見を求めたことがある。彼らのコメントは、まず脳トレーニングゲームおよび、それによりもたらされる利点については自信を持っているということだった。そこでそれを裏付けるデータおよび、それの第三者機関による認定を求めた。彼らはLumos Labsには主張を裏付けるためのデータサイエンティスト達が在籍しており、近いうちに結果は出せるだろうと答えた。だがデータが送られてくることはなかった。
私は何度も何度もこのようなことを経験してきている。
ヘルストラッカーの精度を試していた時、製品によってエクササイズの際の心拍数やカロリー消費の計測に大きなばらつきがあるのを目にした。同時に着けていたあるトラッカーは、一日に1000カロリー消費したと出た。これが本当なら、自分の上半身はヒュー・ジャックマンみたいになっていてもいいだろう。
また、カンファレンスで同企業の役員に会った時、私のように強度の高いトレーニングを行う人はこの手のデバイスを使うことはないとも言われた。
他のテストでは、毎分の心拍数に30〜60くらいのばらつきが出た。(全力疾走と駆け足くらいの差だ)テストに先立ち、企業に第三者による科学的リサーチを申し出てみたが回答はなかった。テスト結果が散々だと判明した後、同じくその企業にコンタクトをとったが、やはり先方からの返事はなかった。
|広告主も戦犯である
悪いのは健康器具関連だけではない。広告主も最悪のプレイヤーの1つである。研究者によると、日頃広告から受ける影響は極めて判断が難しいものだという。というのもクリックから購入に至るまでのクリックスルー率は相当低いため、実際に意味のある数字をとろうとすれば、サンプリングの数は少なく見積もっても数百万以上になるためだ。
とある有名なSNS企業に投資効果をどの様に測っているのかをたずねてみたところ、もし学術的に通用するレベルのものを探すのであれば、恐らく何も見つからないだろうとのことだった。彼らが抱えているデータサイエンティストに話を聞こうとしたが、都合のいいことに彼らは席を外していた。
もううんざりする程の繰り返しになるが、この手の批判を受けた際、統計学の専門家達はその答えは持っておらず、ただ研究は進んでいるというのみだった。
|スタートアップ企業が勝ち残るには
エセ科学によるプロパガンダは終わりを迎えようとしているように思える。いい加減な広告もその1つだ。企業が政府の支持を取り付けるためには、まっとうなリサーチに基づいた数値が必要となり、そのハードルは上がるだろう。
テクノロジー企業にとって状況は厳しいものになりうるだろう。心拍数にしろカロリー消費や脳トレの成果にしろ、それを数字で証明し、広告を打つというのは非常に難しいことかも知れない。
私の意見としては、最善の策はまず正直に公開できるデータを公開することだと思う。そこで科学者が疑いを持つのなら、彼らがデータにアクセスし、第三者機関による検証が行えるようにするといいだろう。そうでもなければユーザーは検証できない製品の性能を評価するためのモルモットのようなものになってしまう。
データを隠匿しながら誇大主張するというのはどのような場合であれ倫理的ではない。法的に疑わしさが問われるのも遠いことではないだろうし、ゆくゆくは戦術的に失敗だったということにもなるだろう。シリコンバレーのスタートアップ企業達が勝ち組として残るために、これは肝要なことだ。
ReadWriteJapan編集部
[原文]
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