システム設計プロセスがモジュール化を実現

2010年8月26日(木)
前田 直毅

現在の開発プロセスは、本連載でこれまで説明してきたように、メカ主導型のプロセスになっていることが多い。これを変えて、メカ・エレキ・ソフトが同時に設計を始め、全体を俯瞰(ふかん)しながら詳細な議論を行い、全員で検証するプロセスにすることで、製品アーキテクチャの品質が高まり、組み込み製品の品質が向上するのである。

最後に、どのようにすればこのプロセスを実現できるのかを考えてみたい。

ここでは、ルール・ツール・スキルという3つのフレームワークを用いて、このプロセスを実現することを考える。

図3: プロセス変革を実現するフレームワーク

ルール面では、「要件の整理/共有」、「システム・モデルの作成」、「構造の可視化と改善」、という3つのプラクティスを実装したシステム設計プロセスを確立する。開発の現場で活用できるよう、各プラクティスのトライアルを通して運用方法をルール化する。レビューする内容、検討の深さ、タイミング、レビュー担当者などを明確にするとよい。

ツール面では、各プラクティスに対応したツールを利用して、ルールの順守や定着を図りたい。どのツールが適しているのかは組織の状況にも依存するが、いずれにしても、ツールから入るのではなく、プラクティスを導入して定着させる手段として、ツールを活用するべきである。ツール選びでは、設計者の負担にならず、効率化に寄与するものがよい。筆者が推奨するツールは、以下の通りである。

表1: 各プラクティスで利用できるツール

プラクティス ツールの名称 開発会社
システム要件の整理/共有 iPrime(注: リンク先はPDF) 電通国際情報サービス
システム・モデルの作成 Enterprise Architect オーストラリアのSparxSystems
システム構造の可視化 Lattix 米Lattix

スキル面では、システム設計作業をコーディネートする技術者として、エンジニアリング・ファシリテータを育成する。品質の高いシステム設計を行うのは、ツールでもルールでもなく、技術者自身だからである。要件を整理/共有してシステム・モデルを作成するためには、チームを作り、技術や課題を見える化し、技術者同士のコミュニケーションを促進する必要がある。このため、プラクティスやツールの導入だけで終わらず、開発プロセスを実行できる人材を同時に育成する必要がある。

連載の冒頭で解説したように、組み込み製品の開発現場では、製品機能の高度化という要求に対し、ソフトウエアやネットワークを活用して機能を実現することが加速している。このため、従来のメカニクス中心の開発プロセスにおいては、特にソフトウエアの開発が立ち行かなくなりかねない。このように、開発プロセスの変革が必要になっている状況が散見される。

今回紹介した3つのプラクティス、「システム要件の整理/共有」、「システム・モデルの作成」、「システム構造の可視化と改善」が、プロセス変革の促進や、組み込み製品の品質を高める一助となることを願っている。

(株)iTiDコンサルティング シニアコンサルタント

製造業の開発力強化をミッションとする(株)iTiDコンサルティングに所属。ソフトウエア開発、電気系製品の開発プロセス改革コンサルティング業務に従事。プロセス改善スペシャリスト。電気・ソフト開発と機構開発の協調設計分野を強みとする。

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