これからの組み込み機器とWindows Embedded
開発者の関心はサービスやミドルウエアに移っている
さらに、フルブラウザーの要求に対してはIE 7のEmbedded版が提供されます。従来のIE 6をベースにした環境に比べて、より多くのPC向けのウェブコンテンツとの互換性を提供することで、ユーザーにとってよりよいエクスペリエンスを提供することを目指しています。
サポートCPUアーキテクチャについては、ARM、MIPS、x86をWindows Embedded Compact 7で、SH4とARMをWindows Embedded Automotive 7でサポートします。従来はSH4も1製品でサポートしてきましたが、開発効率と市場の要求との兼ね合いでターゲットとなるアプリケーションに応じてCPUサポートも変更しています。
連載の初回にCE(およびCompact)の基本的なアーキテクチャについて述べましたが、開発者やメーカーは、OSのコアよりもどのようなサービスやミドルウエアが利用できるのかということに関心が移ってきており、マイクロソフトもその要望に応えるため、細かなところですが、いくつか新しい機能を追加しています。
- DLNAのサポート
- Bluetooth 2.1のサポートと性能の最適化
- RDPクライアントの最新版をサポート
DLNAのサポートはパソコン向けの周辺機器(コンパニオン)と、家電の世界をつなぐ規格でとしてようやく本格的な展開が始まったところです。これからの家電はパソコンやその周辺機器とつなぐためにDLNAを積極的に採用しつつあり、これらの周辺機器を開発するために必要な拡張だといえるでしょう。
Bluetoothは日本ではそれほど普及しているように思えないかもしれませんが、欧米ではかなり普及しています。例えば、携帯電話やスマートフォンからパソコンなどの機器へ接続する方法は、USBもありますが、Bluetoothでの接続が主に設定されています。ヘッドセットも無線で接続するため、バッグに携帯電話を入れたままヘッドセットをし、歩きながら、あるいは運転しながら会話をすることができるため日本人の(というか私の)感覚からは傍目に違和感を覚えますが、このような使い方が一般的なため、Bluetoothはかなり重要なのです。
RDP(Remote Desktop Protocol)はWindows 7あるいはWindows Server 2008 R2が登場したことで新しいバージョンに更新されています。RDP 7.xをサポートすることで、最新のWindows Server環境やPCとのリモート接続が可能となります。
これらの技術は常に進化し続けるため、1年に1回程度の間隔で大きな機能の更新を行うとともに、それらの更新を開発環境で動的に更新するための仕組みも提供します。
これはWindows Embedded Developer Updateというもので、OSの新しい機能やセキュリティアップデートなどを随時ダウンロードして開発環境に取り込むことができるものです。従来は開発者が任意に追加の作業をしなければならなかったものが、半ば自動的に更新された新しいコードの入手を行うことができるものになります。
もちろん、最終的にこれらの更新を適用するかどうかは開発者の判断になります。
マイクロソフトは組み込み機器向けのOS製品を複数提供していますが、今回のWindows Embedded Compact 7はひとつの大きなマイルストーンとなる製品で、これからのマイクロソフトの技術的な方向性を見ることのできるリリースだといえるでしょう。
さらに次のバージョンもすでに計画中ですが、まずはこの秋にリリース予定の最新版を試してみてください。
詳しい情報はWindows Embeddedのウェブサイトに掲載されています。また、イベントなどもたくさん予定されていますので、マイクロソフトの組み込み開発環境やOSの現在と今後を理解していただくためにも、ぜひ直接マイクロソフトとコンタクトして課題について議論していただくのがよいのではないかと思います。
短い連載でしたが、またどこかでお会いできることを楽しみにしています。
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