アプリ開発から公開までの疑問に答えるQ&A

2012年5月21日(月)
PROJECT KySS

Q6. サンプルを参考にしてアプリを作ってもいいですか?

少なくとも、筆者たちの記事を参考にしてアプリを開発し、申請することは問題ありません。アプリ開発者を増やし、公開アプリの本数を増やすために、記事を書いているのですから。

日本のマーケットプレイスで公開されているWindows Phone アプリの本数はまだまだ少ないので、過去の記事やブログなどで公開されているサンプルで、アプリとしては公開されていないものが多数あります。

マーケットプレイスにはあるはずと思っていたアプリが、実は探しても見当たらないということも、ままあります。

例えばPROJECT KySSのkuniyasu(薬師寺国安)が最近公開した「音声通知翻訳」は、当人が、昨年、「これから始めるWindows Phone プログラミング(基本編)第14回 翻訳された英文の表示と読み上げ」で解説したサンプルの応用です。

当然のことながら、そのサンプルを参考にしたアプリを読者が開発して申請したり、それ以前に、先行する人気の翻訳ソフトに充実した機能があるのではないかと考えがちになります。

ところが、最近当人が調べてみたところ、音声再生機能を持つ無料の翻訳アプリは見当たらないことが分かりました。そこで、開発して申請したところ、多くダウンロードされています。

サンプルと公開アプリを比較してみて、あれば便利な機能であるにもかかわらずアプリとして公開されていないものに気付いたなら、自作して申請してみるとよいでしょう。

Q7. 英語版のみと、ローカライズ、どちらがよいでしょうか?

海外公開したい場合、英語版のみを開発して一斉公開する方法と、ローカライズして個別に公開する方法があります。

筆者たちのアプリのダウンロード数は、本稿執筆時点で、先に挙げた1.音声通知翻訳(日本語版、国内)、2.Sound Clinometer(英語版のみ、海外)、3.The Zoom(英語版のみ、海外)という順ですが、Sound ClinometerもThe Zoomも、ダウンロードの9割以上は海外です。英語版のみの場合、アプリの説明文が英語になりますので、国内でのダウンロード数が期待値より低くなると考えられます。

おそらく開発者が考えている以上に、ユーザーは「日本語のアプリ」の公開を期待しています。海外には英語版、国内向けには日本語版を作成して公開する方が、ダウンロード数を多く見込めるでしょう。

ローカライズの手順については、「UX-TV」3月7日に放送されています。
→参照:UX-TV: 3/7放送分

また、MSDNコードレシピに「アプリケーションをローカライズするには」という記事がありますので、参照してください。
→参照:アプリケーションをローカライズするには(msdn/Code Recipe)

Q8. アプリのカテゴリはどのように決めればよいでしょう?

1本目のアプリは公開自体が目的となりがちですが、2本目3本目となると、ダウンロード数にも期待するようになるでしょう。ダウンロードされるには、まず、マーケットプレイスで注目されなければなりません。それには、できるだけ各カテゴリの最初のページに掲載されてほしいところです。

そこで重要になるのは、カテゴリの選択です。

図12は、筆者たちのアプリ「道友日本」の例です。筆者たちの他のアプリに比べるとダウンロード数が多いわけではありません。ですが、このカテゴリとサブカテゴリへの登録アプリの総数が少ないので、目立つ位置に表示されます。

複数のカテゴリに登録可能なアプリは、できるだけアプリの本数の少ないカテゴリを選んで登録するのもひとつの方法です。

 図12:登録本数の少ないカテゴリでは、ダウンロードの絶対数に関わらず上位に表示される(クリックで拡大)

Q9. 申請~公開まで、どの程度の日数がかかりますか?

アプリを申請して公開されるまで、どの程度日数がかかるのか、心配になる開発者もいることでしょう。

そこで、本連載で取り上げたアプリ3本のケースについて書いておきます。3本ともリジェクトなしで認定されていますが、要した日数は異なります。米国時間で、クリスマス休暇などもありますが、逆に日本固有の休日の影響は受けません。

  • 「一日一句 Ver.0.8」(日本語版、国内公開)
    2012年12月8日(木)17時45分申請、12月15日(木)2時30分認定メール着。
  • 「一日一句投稿対応版 Ver.1.0」(日本語版、国内公開)
    2012年1月23日(月)午前9時申請、 1月25日(水)20時30分認定メール着。
  • 「 Sound Clinometer Ver.0.8」(英語版、海外公開)
    2012年2月28日(火)19時申請、 3月6日(火)20時14分認定メール着。

上記から、リジェクトがない場合は、申請から公開まで1週間ほどを予定しておけばよいでしょう。急いで開発してリジェクトされるよりも、2~3日余裕を持ってコードをチェックし、クラッシュを抑えた方が、リジェクトなしで認定されることになり、結果的には早く公開されますので、慌てずに急ぐ姿勢で取り組むとよいのではないでしょうか。

Q10. ダウンロード数の詳細を知りたいのですが?

ダウンロード数を調べるには、APP Hubの「ダッシュボード」「Windows Phone」から管理ページに入り、一番下の「レポート」の「すべてのレポートを表示」をクリックして表示される「日別ダウンロード件数」欄の右下にある「ダウンロードの詳細を表示」をクリックします。

レポートを取得したいアプリ、開始日を指定して「レポートを更新」ボタンをクリックした後、「詳細をエクスポート」をクリックすると、Excelファイルをダウンロードできます(図12)。

 図13:APP Hubからダウンロードの詳細情報を入手する(クリックで拡大)

ただし、取得できる情報は1週間前までのものです。また、認定メールが届いてから公開までに1日弱を要しますし、ダウンロードは公開日の翌日からになりますので、認定メール到着後、8日間待ってから入手するとよいでしょう。

海外公開の場合、アプリのテーマとダウンロード数を比較して、各国事情を想像してみてるのもおもしろいものです。その中で、特定の国向けのアプリのアイデアが生まれるかもしれません。ちなみに、前回解説した「Sound Clinometer」は、ダウンロード数の多い順に、ロシア、米国、スペイン、フランス、英国の順です。

連載を終えて

以上13回にわたって、Windows Phoneアプリの全工程について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。連休中に本連載を読んだ読者も多かった模様ですが、本稿がアプリ開発のきっかけになっていれば喜ばしい限りです。

しかしながら、海外ではLUMIA 900の発売などでWindows Phone 開発も盛り上がっているのに比べ、国内では実機はといえばまだ au IS12Tだけしかなく、開発に着手すべきかどうか迷っている読者もいることでしょう。

しかし、筆者は、こう考えます。Silverlightか、Xnaか、ではありません。スマホかタブレットか、ではありません。Windows Phone かKinectか、でもありません。

どれかひとつの端末や開発プラットフォームを選ぶ必要はなく、これからは特に、いずれにも共通する技術が必要になってきます。その技術とは、「外部機器から取得されるデータ処理プログラミング」です。

筆者にとってこの連載は、以前執筆した連載「RIAにおける、外部入力データの処理」の続きでもあります。なぜならWindows Phoneを、旧来PCを小型化した計算機ではなく、センサーを搭載した情報を取得するための外部機器として捉えているからです。

本連載用に開発した3つのアプリのうち、日本語版の俳句アプリは、今後英語版に展開するにあたって、当然のことながら、音声入力を考える必要があるでしょう。また、加速度センサーを使ったアプリも、バージョンアップするなら、ジャイロやコンパスやGPSといった他のセンサーと組み合わせていく必要があるでしょう。

これからは、脳波センサーのような「ヒトが動かなくても」静的に情報を取得できる外部機器と、Kinectのような「ヒトが動かなければならない」動的な外部機器の両極に分かれ、それらから得られる情報を処理するプログラミングがもとめられるようになります。

Windows Phoneは、後者の機器のひとつだと筆者は考えています。この30年、小型化して進化してきた携帯端末は、防水のスマートフォンになってようやく、ユーザーの身体の一部のように持ち運べる道具にいたりました。これから始まる端末の進化の原点に、ようやく位置するようになったのが、Windows Phoneだと思います。

技術を分類して、どれが有望かを考えあぐねるよりも、もっと大きな目で技術を眺めてみませんか。まずは何かひとつ決めて取り組んで、そこから枠組みを拡げていけば、楽観的に技術進化を俯瞰(ふかん)できるのではないでしょうか。そのきっかけとして、Windows Phoneアプリ開発は、比較的手軽に始められるところがよいのではないかと思います。

【参照リンク】

筆者たちも、続々とアプリを作っています。本連載で取り上げたアプリのバージョンアップ版なども開発中ですので、表示や動作を参考にしてみてください。
Windows Phone App Information(PROJECT KySS)

なお、この連載執筆後、「ビジュアル傾斜計 Ver.0.8」を国内公開しました。第11回、12回で解説した「Sound Clinometer」同様、加速度センサーを使った傾斜計アプリですが、ビジュアルデザインの切り替え機能や、2Dと簡易3Dモードの随時切り替え機能を搭載しており、見て楽しめるものになっています。「傾斜計」ひとつとっても、いくつもの切り口があることが分かると思います。

「Community Open Day」が6月9日に開催されます。Phone開発に関するセッションもあります。
Community Open Day 2012

「Windows Phone“Go Metro” Apps Contest」が開催されます。アプリを開発して応募してみませんか。
Windows Phone“Go Metro”Apps Contest

本連載では取り上げていないテーマについては、次の記事も参照してください。
Windows Phone のナビゲーション、向き、ジェスチャ(msdn)
Windows Phone のアプリケーション バーのアイコン ボタン

本稿ではSilvelrightアプリについて解説していますが、ゲームについての記事も参考になります。
プレイテストとピア レビューでチェックすべき項目のチェックリスト(APP HUB)
逆引きサンプル コード > 17. Windows Phone 開発(msdn/Code Recipe)

<リンク先最終アクセス:2012.05>

四国のSOHO。薬師寺国安(VBプログラマ)と、薬師寺聖(デザイナ、エンジニア)によるコラボレーション・ユニット。1997年6月、Dynamic HTMLとDirectAnimationの普及を目的として結成。共同開発やユニット名義での執筆活動を行う。XMLおよび.NETに関する著書や連載多数。最新刊は「Silverlight実践プログラミング」両名とも、Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。http://www.PROJECTKySS.NET/

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