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※この記事は、書籍『Raspberry Piユーザーガイド』の内容を、Think IT向けに特別にオンラインで公開しているものです。詳しくは記事末尾の書籍紹介欄をご覧ください。2013年5月25日に都内で開催された「Big Raspberry JAM TOKYO 2013」の写真を織り交ぜながら紹介していきます。記事の後半はこちら。
はじめに
去年の花火大会のパーティで話をしていた人が言うには、「今どきの子供はデジタルネイティブ」なのだとか。「君がどうしてこういうものを作ったのかわからないね。うちの子供たちは私よりもPCの設定のことをよく知っているよ。」
彼の子供がプログラムを書けるのか聞いてみると、彼の答はこうだった。「そんなことするわけないさ。必要なことは何でもコンピュータがすでにやってくれているじゃないか。それって重要なことかい?」
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| Raspberry Piの開発元であるRaspberry Pi財団の設立者であり、Raspberry Pi開発の総指揮をとるEben Upton氏。 |
あいにくだが、最近の子供たちの多くはデジタルネイティブではない。ツイストペアケーブルにぶら下がり、非の打ちどころなく解析されたPythonで戦いの歌を歌うような、生まれながらにデジタルな子供なんて、まるで見たことがない。
Raspberry Pi Foundationの教育福祉活動を通じて、私たちはたくさんの子供たちに出会い、彼らがテクノロジーに触れる機会は、映画を観たり、ワープロで宿題をしたり、ゲームをしたりするためのGUIを備えた、クローズドプラットフォームに限られているという現実を目の当たりにしている。子供たちはWebにアクセスできるし、画像や動画をアップロードできるし、Webページをデザインすることさえある。たいていは衛星放送の受信機の設定も親よりうまい。環境としては立派なのだが、話にならないほど不完全だ。全世帯の2割の家庭にまだPCがないイギリスでは、こうした環境ですらすべての子供たちが利用できるわけではない。
花火大会のパーティで知り合った人の切なる願いに反して、コンピュータは勝手にプログラムを書いたりしない。テクノロジーを前進させるためには、腕利きのエンジニアが業界にあふれていなければならない。先輩エンジニアが退職して業界を去ったときに、その担い手として、若者がエンジニアになってくれなければ困るのである。
しかし、プログラマティックな思考といった技能を教えることには、新しい世代のプログラマやハードウェアハッカーを育てること以外にも多くの意義がある。クリエイティブな考え方やタスクを非直線的で複雑な方法で構造化できることは、学びから培われる才能であり、歴史家からデザイナー、弁護士、化学者まで、それを会得したすべての人々に大きな利益をもたらしている。
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