1台わずか25ドル! イギリス生まれの超小型ボードPC「Raspberry Pi」 後編

2013年7月16日(火)
インプレスジャパン コンピューターテクノロジー編集部

Raspberry Piでできること

本書では、Pythonを使ったハードウェアの制御から、メディアセンターとしての使用、Scratchでのゲームの作成まで、Raspberry Piを使ってできることを探っていく。非常に小さな汎用コンピュータであることがRaspberry Piの利点であり、通常のPCでできることはすべてRaspberry Piでもできる。デスクトップアプリケーションに関しては、通常のPCよりも少し遅いかもしれないが、通常のPCをはるかに凌いでいる点もある。それに加えて、Raspberry Piは強力なマルチメディア/3Dグラフィックス機能を備えているため、ゲームプラットフォームとしての可能性も秘めている。私たちは人々がRaspberry Pi用のゲームを書き始めることを心待ちにしている。

Raspberry Piにプリインストールされているプログラミング言語Scratch。

多くの事例を見る限り、最近は純粋なソフトウェアプロジェクトのほうが優遇され、センサー、モーター、ライト、マイクロコントローラなどを使ってシステムを組み立てる物理的なコンピューティングが蔑ろにされているように思える。物理的なコンピューティングがとてつもなくおもしろいことを考えると、これは残念なことだ。現在の子供向けコンピューティングに限って言えば、動きがあるのは物理的なコンピューティングである。

私たちの子供時代は、物理的なコンピューティングと言えばLOGOタートルだったが、最近では、戦闘ロボットやクアッドコプター、親が来たことを感知する子供部屋のドアなどに代わっている。それはそれですばらしいが、家庭用PCにGPIOがないことが、ロボットプロジェクトを始めてみたいと考えている多くの人々にとってまさにネックとなっている。Raspberry PiにはGPIOが付いているので、すぐに作業を始めることができる。

オーストラリアの学校の流星追跡プロジェクト、イギリスのBoreatton Scoutsと脳波記録ヘッドセットを通じて制御する彼らのロボット、ロボット掃除機を発明した一家など、筆者が1,000年かかっても思い付けないようなアイデアがコミュニティで生まれていることに、いつも驚かされている。Boreatton Scoutsのロボットは、脳波で制御する世界初のロボットである。筆者は宇宙旅行を夢見ているので、Raspberry Piをロケットや気球で近地球軌道に送り出すプロジェクトを知ったときには鳥肌が立った。

毎年1,000人の新入生がイギリスの大学レベルでコンピュータサイエンスを専攻するようになれば、私たちにとって成功と言えるだろう。それは、国、ソフトウェア業界、ハードウェア業界、そして経済にとって有益なだけではない。可能性に満ちた世界や楽しい時間を過ごすための新しいアイデアを発見すること——それは新入生1人1人にとってずっとためになることだろう。子供の頃にロボットの組み立てを体験することによって、まったく想像もしていなかった世界への扉が開かれる。筆者もその扉を開けた1人である。

この記事のもとになった書籍
Raspberry Piユーザーガイド

Raspberry Piユーザーガイド

発売後1年で100万台以上を出荷し、イギリスを中心に世界的なブームとなっているカードサイズのコンピューター「Raspberry Pi」。本書では、Linuxのセットアップやコマンドの使い方をはじめ、環境の構築方法などの基本的な情報を解説しています。

Eben Upton、Gareth Halfacree 著
価格:2,940円 (本体 2,800円+税)
発売日:2013年3月15日発売
ISBN:978-4-8443-3374-6
発行:インプレスジャパン

 
著者
インプレスジャパン コンピューターテクノロジー編集部

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