VPSサービスが提供する多くの機能の中で、最低限押さえておきたいチェックポイントとは

2013年11月20日(水)
波田野 裕一

3. VPS管理機能

VPSサービスでは、VPSにOSをインストールするためのインストーラの機能と、VPSやインストールされたOSを管理するための権限が提供されています。

ここでは、OSのインストーラなどVPS管理機能に関する留意点について解説していきます。

3-1. OSのインストーラ

VPSサービスでは、当然ですがVPSにOSをインストール(および再インストール)する機能が提供されています。

VPSサービスによってインストールできるOSとその選択できる範囲が異なるため、提供されているインストール方法にはかなり違いがあります。たとえば、1種類もしくは数種類のLinux OSのみ選択できるVPSサービスでは、Web画面でボタンを数回クリックするだけでインストールが完了しますが、ISOイメージをアップロードしてインストールすることができるVPSサービスでは、VPS上でそれらインストーラを起動して物理サーバーにインストールするときと同様の作業を行なう必要があります。時間と手間がかからないという点では前者の方が便利ですし、サービスにあわせてOSをカスタマイズしたい場合には後者の方が圧倒的に便利でしょう。

OSはVPSでサービスを動作させる上で根幹となるものです。VPSサービスが提供しているOSの種類やそのインストール方法については、導入前に必ず確認しておきましょう。

3-2. OSの管理者(root)権限

VPSサービスでは、一般的にユーザーに対してVPS起動や停止、削除などの管理者権限およびOS上のrootアカウントが付与されています。これによりユーザーはVPS上で比較的自由な裁量によりサービスを構築することができるのです。

ただ、rootアカウントは外部から狙われやすいため、VPSサービスによってはSSH公開鍵認証によるログインしか認めないなどの制限を掛けている場合があります。契約直後にrootになれないと構築作業に支障をきたしますので、できる限り事前に確認しておくようにしましょう。

上記の制限がない場合でも、なるべく早期にrootで直接ログインしない、一般ユーザーでのログインにもSSH公開鍵認証で行なう、などの運用に切り替えるようにしましょう。グローバルアドレスを持っている場合、サーバーのTCP22番ポート(SSH)へのアタックは日常茶飯事ですので、この点は強く注意が必要です。もしSSHの設定がすぐにできないのであればサーバーをシャットダウンしておくくらいが正しい感覚でしょう。

3-3. VPSの管理機能

VPSサービスではほとんどの場合、VPSを管理するためのWebインターフェース(以下、Web管理画面)が用意されています。従来はVPS1台(契約)毎にWeb管理画面が用意されているVPSサービスもありましたが、同時に複数台のVPSを使うユーザーが増えてきたことから、最近では契約しているVPSを一覧で管理できるWeb管理画面が主流になってきています。

VPSサービスのWeb管理画面では、概ね下記のような管理項目や情報を提供しています。

1. 契約に関する管理項目や情報

  • VPSの作成、削除
  • 各種オプション契約の追加、解約
  • 課金や請求に関する情報

2. VPSの状態や設定の変更に関する管理項目

  • VPSの起動、停止、再起動
  • 各種オプションの設定

3. VPSに関する各種情報

  • VPSの基本情報(IPアドレス情報、ルーティング情報、DNS設定情報、ステータスなど)
  • VPSに関する統計情報(CPU負荷、ディスク使用量、メモリ使用量、トラフィック量など)

この他に、Web画面上からファイアウォール(パケットフィルタリング)の設定や、稼動プロセスの確認や停止などができるなど、独自の管理機能を有している場合もありますので、各VPSサービスがどのような管理機能を提供しているか事前に比較してみることをおすすめします。

VPSサービスによっては、仮想マシンのコンソール画面にアクセスするための機能が提供されている場合もあります。何らかの理由でVPSのOSがダウンしたり再起動に失敗する場合に、仮想コンソール経由でVPSにアクセスすることでコンソールに出力されたメッセージを確認できるだけでなく、外部からアクセスできなくなった場合の保守経路として利用できる、シングルユーザモードでの作業が可能であるなど、サーバーの保守作業上有効な場面が多数考えられます。

表3:その他に必要なリソースと事前の確認ポイント

リソースの種類 事前の確認ポイント
OSのインストーラ 利用予定のOSに対応し、想定しているインストール方法が使えるか
管理者(root)権限 root権限を提供し、管理権限に制約はないか
VPSの管理機能 期待している管理機能(例えばコンソール機能など)があるか

VPSの料金支払いに関する留意点

VPSの支払金額

VPSサービスの支払金額は、VPSのスペック(メモリ、ディスク、CPU)によってランニングコスト(月額金額)が決まりますが、VPSサービスやプランによっては初期費用が別途必要になる場合があります。トータルコストに大きく影響してきますので、必ず事前に確認するようにしましょう。

支払い周期については、月額払いが一般的ですが、半年や1年分を事前に一括払いすることで支払総額が安くなる場合もあります。ただ、一括払いした場合は中途解約できなかったりペナルティが発生する場合があるので、契約当初は月額払いにしておき、ある程度の期間を継続して利用する見込みが立ってから一括払いに移行することをおすすめします。

VPSの支払い方法

VPSサービスの支払い方法は、クレジットカードによる決済が一般的です。

会社や部署によってはクレジットカード払いが難しい場合も多いでしょう。VPSサービスによっては請求書払い、口座振り替えに対応している場合もあるのでサポート窓口に確認してみるとよいでしょう。

無料お試し期間

VPSサービスによっては、10日から数週間程度の無料お試し期間を設けていることがありますので、積極的に活用してみましょう。

また新規契約キャンペーンをやっていることもあるので、条件とタイミングが合えば活用してみてもよいでしょう。

サービス品質保証制度(SLA)

VPSサービスによってはサービス品質保証制度(SLA)を設けている場合があります。これはVPSの稼働率が基準値(例えば99.95%)を下まわった場合にVPS利用料の一定額を返金する制度です。
SLAによって障害の損害が軽減されるわけではありませんが、VPSサービスの稼動に対する運営側の自信の度合いを示すものと言えます。一方で高いSLAを維持するためにはコストがかかることから利用者側についても相応のコストを支払う意識を持つ必要があるでしょう。

次回は

次回は、VPSにおけるDNSの運用、VPSのオプション機能やサービスについて解説していきます。

運用設計ラボ合同会社 / 日本UNIXユーザ会

ADSLキャリア/ISPにてネットワーク運用管理、監視設計を担当後、ASPにてサーバ構築運用、ミドルウェア運用設計/障害監視設計に従事。システム障害はなぜ起こるのか? を起点に運用設計の在り方に疑問を抱き、2009年夏より有志と共同で運用研究を開始し、2013年夏に運用設計ラボ合同会社を設立。日本UNIXユーザ会幹事(副会長)、Internet Week 2013プログラム委員、Internet Conference 2013実行委員など各種コミュニティ活動にも積極的に参加している。

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