RHEL7を一足先にキャッチアップ! -レッドハット・フォーラム 2013-

2013年12月9日(月)
Think IT編集部

レッドハット・エンタープライズ ユーザー会 会長 大和総研 専務取締役 鈴木 孝一氏

ユーザー会は現在93社が参加しているが「単なる仲良し会ではなく、ITに関するニーズを直接話し、ユーザー同士で共有し応えてくれるものである」と語るのは、レッドハット・エンタープライズ ユーザー会(REUG)の会長を務める大和総研の鈴木氏。

レッドハット・エンタープライズ ユーザー会 会長 鈴木 孝一氏(クリックで拡大)

氏は過去にオープンソースを活用して2年間で銀行システムを立ち上げた実績があり、その時に体験した、「ユーザーのITニーズに応える」ことをユーザー会の主旨としている。

現在はミャンマーの金融市場を発展させるべく、現地で取引所と証券会社のシステム構築に取り組み、ミャンマー政府とも調印している。しかし、ミャンマー文字に対応するのは難しく、他にも人(ベンダー)が居ない、もの(電力も通信も)ない、金ももちろんない、といった状況だ。

その様な状況では、規模も含め全く先が見えないので、対応できるようにとクラウドが提唱され、まもなく、採用されようとしている。また、クラウドセンターも建設予定もある。どの様なシチュエーションでも柔軟性に富むのがオープンソースであり、すべてオープンソースでの構築を予定している。

将来的にはミャンマーで挑戦した結果を日本に持って帰ることを検討しており、当然ユーザー会でもナレッジとして反映されることが予測される。

参加者へのメッセージとして「クラウドの単なる利用者に留まることなく、仕掛けを上手く使うために根底においてチャレンジが必要」と締めくくった。

RHEL7を一足先にキャッチアップ

当日は様々なセッションが開催されていたが、RHEL7については事前申し込み者が多かったせいか、リピートセッションが追加開設されることとなった。

RHEL7(Red Hat Enterprise Linux 7)
レッドハット 藤田 稜氏

レッドハットの藤田氏は、ITのビジネススパンが速くなっていること、スマートフォン等の台頭にもより、システムやビジネスを秒単位で対応しなくてはいけないと述べ、日本と米国におけるIT投資への考え方の違いを紹介した。

レッドハット 藤田 稜氏(クリックで拡大)

藤田氏によると、日本ではコスト削減や業務効率化がIT投資を行う理由で、実のところ積極的には行われていない。一方、米国では製品、サービス開発強化が主な要因だ。

日本企業のこうした見えない要求だが、オープンソースはライセンスの面でコストは下げられる。しかし人件費・光熱費を下げることはなかなか難しい。RHEL7では人件費・学習教育費用の低減に挑み、運用管理性の向上を目指している。

取り組みの一つとしてSDN(Software-Defined Network)を実装した。SDNはソフトウェアのネットワークの管理を中央集権化、シンプルに最適化し、自動化する。またRHEL7ではOpenflowに対応しOpen v Switchをフルサポートしている。

さらに管理システムを低コストで行うために、オープンLMI(Linux Management Infrastructure)を装備。今までは一般的にChefやPuppetでサーバーのデプロイを管理していたが、Linuxの標準ではないため覚えるコマンドも多く、新人には学習のコストが掛かっていた。これがオープンLMIと置き換えられるので、学習コストを圧縮して、シンプルな運用手順を確立することができるようになる。

運用管理性の向上としてはsystemdを搭載している。systemd(下図参照)は、多岐にわたる変更をRHEL7にもたらすが、中でもサービス、リソース、ユーザー管理に対して効力を発揮する。さらにsystemdはRHEL7で導入されたリソース管理の枠組みであるCグループと連携することでシステム全体のリソース管理が行われることになる。

Systemd(クリックで拡大)

RHEL7はクラウドを構築するためのOSとしても、またクラウド上のゲストOSとしても活用できる。10/17にリリースされたOpenStack(開発ネーム:havana)のコンポーネントは当然RHEL上でも動作する。

RHEL7で搭載するLinuxContainerは、アプリケーションをパーティションに閉じ込めて他に影響を及ばさない"サンドボックス"を実現する。OpenShift PaaSと同様の思想で、簡単に説明するとPythonやPHPのプログラムを動作させるためだけのパーティションを切り出して、PaaSとして提供するということになる。

このことにより、同じリソースであった場合は少ないリソースで仮想化を可能としている。

ファイルシステムについてはRHEL7では従来のext系ではなく、xfsがデフォルトとなる予定。ext4/btrfsもサポート予定だが、こちらが最大で16テラバイトまでをサポートする予定なのに対し、xfsでは上限500テラバイトまでをサポートする。

NFSは利用者が多いものの、スケールアウトがしにくい等の弱点も多い。RHEL7ではpNFSをフルサポートする予定で、これによりNFSはスケーラビリティを獲得することができる。

RHEL7はFedora19とkernel3.10を採用してシッピング予定で、2014年のリリース日を予定している。64bitバージョンのみでの提供となるが、32bitのアプリケーションは32bit librariesで用意してサポートするので、一部で32bitを使用しているユーザーでも安心して移行が可能とのこと。

※アーキテクチャはx86_64、ppc64、s390xを想定

ユーザー自らが語る導入事例と展示ブース

会場ではユーザー企業による導入事例や、OpenStackに関するセッションなどが数多く展開されていた。また、展示スペースにはハンズオンセッションやパートナー企業によるブースが多数設置されており、今後のレッドハットへの期待が感じられた。

会場内の様子(クリックで拡大)

【参考リンク】

当日のセッション資料など(レッドハット・フォーラム 2013 公式ページ)

(リンク先最終アクセス:2013.12)

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2004年の開設当初からOSS(オープンソースソフトウェア)に着目、近年は特にクラウドを取り巻く技術動向に注力し、ビジネスシーンでOSSを有効活用するための情報発信を続けています。クラウドネイティブ技術に特化したビジネスセミナー「CloudNative Days」や、Think ITと読者、著者の3者をつなぐコミュニティづくりのための勉強会「Think IT+α勉強会」、Web連載記事の書籍化など、Webサイトにとどまらない統合的なメディア展開に挑戦しています。

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