スペイン発のオープンソース統合監視ツール「Pandra FMS」(2)
技術者の作業工数を削減し「効率化」「コスト削減」を実現
システムの構築は、後から「このデータが欲しかった」と思うことがないようにする必要がある。つまり、情報収集の設定を意識せずに、運用を開始した時点であらゆるデータの収集ができている環境を構築することが重要なのである。
それでは、収集したデータを使って、問題点の分析および改善や、また次期システム構築に生かすためには、どうすればよいのだろうか。それには、設計時の想定と異なるデータとなっているポイント、および特定の日に、これまでとは異なる傾向が出ているポイントをピックアップし、原因を調べていくことが基本となる。そのフローチャートを、図2に示す。
統合運用管理システムに、収集したデータに対してさらに分析するような機能が備わっていると、この点においても、「効率化」「コスト削減」の助けになる。
Pandora FMSにおいては、収集したデータをグラフ表示するのはもちろんのこと、CSVやExcelファイルへエクスポートする機能も備えている。これは、技術者がデータを分析するのに、とても有用である。さらに、PandoraFMSをベースに利用したASPサービスである「SoNar」では、普段と異なる傾向を示すデータを、自動的にピックアップしてくれる機能も備わっている。この機能によって、技術者は、全データを見比べる必要さえなくなるのだ(図3)。
このように、統合運用管理システムを導入することによって、システムの調査や問題解決、次期システム設計に向けた情報分析の分野まで、技術者の作業工数を削減し、「効率化」や「コスト削減」を実現できる。技術者は、純粋に技術者のスキルを生かす業務に集中できることになり、システム改善業務に大きなパフォーマンスを発揮することになるだろう。
インシデント管理機能で情報管理の効率化が実現
最後に、現状のシステム運用から得られた各種情報を、次のシステム設計に生かすための効率化や品質向上について考えてみる。この部分においても、統合運用管理システムは、重要な役割を果たす。
現システムの運用から得られる情報を元に、次期システムを設計する場面においては、現システムの稼働状況といったデータだけでなく、障害履歴、変更・改善履歴といった情報も重要となる。そのためには、日々の技術的な対応内容をデータとして蓄えていくことが必要になる。それに当たっては、統合運用管理システムを、技術者が行うシステムの作業記録の保存システムとしても活用し、「いつ」「誰が」「どのような作業を実施するのか」を管理する。これはインシデント管理の仕組みだ。この機能も統合システム運用監視システムに組み込まれていると、障害履歴やシステムのリソース情報とあわせて、統合的に参照が可能になる(図4)。
これによって、情報管理という面においても効率化が実現できることが、理解できるだろう。
システム運用におけるすべての情報が1箇所に集約されていることは、複数の技術者がある1つの問題改善に対してチームであたる場合にも、効率が良い。なぜならば、基本的な情報は、オンラインで常に共有した状態になっているからだ。
本章では、統合運用管理システムを21世紀型の中心に置くことにより、システム運用における「効率化」や「高品質化」、「コスト削減」を実現する方法を見てきた。このシステムは、サーバーの追加が容易なクラウド環境にもマッチした、システム運用の仕組み作りや体制作りのベースにできるものと考える。