Kinect v2のIRセンサーから赤外線画像を読み込む

2014年9月24日(水)
薬師寺 国安

「赤外線画像の取り込み」とは、Kinect v2センサーの「IRセンサー」からの画像取り込みを指します。赤外線画像ですから、真っ暗闇の中でも物体を認識して取り込めます。v2になって、認識精度も高まり、鮮明な赤外線画像を得られるようになりました。この機能を利用すれば、防犯システムの構築も可能ではないかと思います。

連載の第2回から第4回では、「Color画像」、「Depth画像」、「赤外線画像」などKinect v2で取得した画像の取り込みといった、ごく基本的なサンプルを解説しています。ここまで読んでこられた読者の皆様にはお分かりだと思いますが、各画像の取り込み方法はほとんど定型化されています。つまり、ColorFrameReaderやDepthFrameReaderやInfraredFrameReaderを使って、OpenReaderメソッドで各フレームを開いて、それぞれの処理を行うことになります。イベントも、今回の連載では各フレームのFrameArrivedイベントにイベントハンドラを記述して、フレームが到着したら用意していた配列にコピーし、WriteableBitmapのWritePixelsでビットマップ内の領域を更新することになります。
この一連の流れで、各画像を取り込み表示することができます。このことを念頭において今回の「赤外線画像の取り込み」を読むと、理解し易くなるのではないかと思います。

今回は、この「赤外線画像の取り込み」方法を解説します。まずはプロジェクトからの作成です。

プロジェクトの作成

VS 2013のメニューから[ファイル]ー[新規作成]ー[プロジェクト]と選択します。次に、「テンプレート」から「Visual Basic」を選択し、右に表示される項目名から「WPF アプリケーション」を選択します。「名前」に任意のプロジェクト名を指定します。今回は「InfraredBasics_Sample」という名前を付けています。

コントロールの配置

デザイン画面上にツールボックスからImageコントロールを1個配置し、「名前(x:Name)」に「Image1」と指定しておきます。
レイアウトは図1のようになります。

図1: デザイン画面上にImageコントロールだけを配置している(クリックで拡大)

編集し、書き出されたXAMLコードはリスト1のようになります。

リスト1 編集し、書き出されたXAMLコード(MainWindow.xaml)

1<Window x:Class="MainWindow"
4    Title="MainWindow" Height="600" Width="800">   (1)
5    <Grid>
6        <Image x:Name="Image1"  />   (2)
7    </Grid>
8</Window>
  1. Window要素のHeightプロパティに「600」、Widthプロパティに「800」と指定しておきます。
  2. 名前がImage1というImageコントロールを配置しています。

参照設定

ソリューションエクスプローラー内の「参照設定」に、Microsoft.Kinect.dllを追加する必要があります。この手順については第1回で解説していますので、そちらを参照してください。

ロジックコードを記述する

次に、ソリューションエクスプローラー内のMainWindow.xamlを展開して表示される、MainWindow.xaml.vbをダブルクリックしてリスト2のコードを記述します。

リスト2 名前空間のインポートとメンバー変数の宣言(MainWindow.xaml.vbの一部)

1Imports Microsoft.Kinect   (1)
2Class MainWindow
3    Private myKinectSensor As KinectSensor   (2)
4    Private Const myBytesPerPixel As Integer = 2   (3)
5    Private myInfraredFrameReader As InfraredFrameReader   (4)
6    Private myInfraredDescription As FrameDescription   (5)
7    Private myInfraredBitmap As WriteableBitmap   (6)
  1. Kinectの使用を可能にするために、Microsoft.Kinect名前空間をインポートします。続いて、メンバー変数を宣言します。
  2. Kinectセンサーを表すクラスであるKinectSensor型のメンバー変数myKinectSensorを宣言します。
  3. Integer型の定数メンバー変数myBytesPerPixelを宣言し、「2」で初期化しておきます。これはグレースケールの画像のデータサイズ(16ビット)をバイトで表したものです(16÷8=2)。
  4. 赤外線フレームのリーダーを表わすInfraredFrameReaderクラスのメンバー変数、myInfraredFrameReaderを宣言します。
  5. KinectSensorからのフレームのプロパティを表わすクラスである、FrameDescriptionクラス型のメンバー変数、myInfraredDescriptionを宣言します。
  6. WriteableBitmapクラス型のメンバー変数、myInfraredBitmapを宣言します。

ウインドウが読み込まれた時の処理

次は、ウインドウが読み込まれた際の処理を記述します。

リスト3 ウインドウが読み込まれた際の処理(MainWindow.xaml.vbの一部、リスト2の続き)

1Private Sub MainWindow_Loaded(sender As Object, e As RoutedEventArgs) Handles Me.Loaded
2    myKinectSensor = KinectSensor.GetDefault   (1)
3    myInfraredDescription = myKinectSensor.InfraredFrameSource.FrameDescription   (2)
4 
5    myInfraredFrameReader = myKinectSensor.InfraredFrameSource.OpenReader   (3)
6    myInfraredBitmap = New WriteableBitmap(myInfraredDescription.Width, myInfraredDescription.Height, 96.0, 96.0, PixelFormats.Gray16, Nothing)   (4)
7    AddHandler myInfraredFrameReader.FrameArrived, AddressOf myInfraredFrameReader_FrameArrived   (5)
8    myKinectSensor.Open()
9End Sub
  1. まずKinectセンサーを使用可能にします。
  2. myKinectSensor.InfraredFrameSource.FrameDescriptionで、赤外線フレームソースの赤外線フレームのプロパティを取得して、メンバー変数myInfraredDescriptionで参照します。
  3. InfraredFrameSource.OpenReaderメソッドで、赤外線フレームを開きます。
  4. 次に、WriteableBitmapのパラメータで初期化された、新しいインスタンス、myInfraredBitmapオブジェクトを作成します。WriteableBitmapの書式については第2回目を参照してください。今回は、PixelFormatsに「Gray16」を指定しています。「PixelFormats.Gray16」は、ピクセルあたりのビット数が「16」(65536段階)のグレースケールチャネルを表示できるピクセル形式を取得します。
  5. AddHandlerステートメントで、InfraredFrameReaderのFrameArrivedイベントにイベントハンドラを指定します。FrameArrivedイベントは、赤外線フレームが到着した時に発生するイベントです。
  6. OpenメソッドでKinectセンサーを開きます。

赤外線フレームが到着した時に発生するイベント

リスト3の(5)で指定したイベントハンドラの内容を記述します。

リスト4 赤外線フレーム到着時の処理(MainWindow.xaml.vbの一部、リスト3の続き)

01Private Sub myInfraredFrameReader_FrameArrived(sender As Object, e As InfraredFrameArrivedEventArgs)
02    Using myInfraredFrame As InfraredFrame = e.FrameReference.AcquireFrame   (1)
03        If myInfraredFrame Is Nothing = True Then
04            Return
05        End If
06 
07        Dim myInfraredBuffer As UShort() = New UShort(myInfraredDescription.Width * myInfraredDescription.Height - 1) {}   (2)
08        myInfraredFrame.CopyFrameDataToArray(myInfraredBuffer)   (3)
09        myInfraredBitmap.WritePixels(New Int32Rect(0, 0, myInfraredBitmap.PixelWidth, myInfraredBitmap.PixelHeight), myInfraredBuffer, myInfraredBitmap.PixelWidth * myBytesPerPixel, 0)   (4)
10        Image1.Source = myInfraredBitmap   (5)
11    End Using
12End Sub
  1. e.FrameReference.AcquireFrameメソッドで赤外線フレームを取得し、myInfraredFrameで参照します。
  2. UShort型の配列変数myInfraredBufferを宣言します。この配列変数の要素数はWidth(512)とHeight(424)の値を乗じた値となります。Color画像以外のDepth画像と赤外線画像の解像度は、512×424になります。
  3. CopyFrameDataToArrayメソッドで、赤外線フレームデータをUShort型配列にコピーします。書式は下記の通りです。

    CopyFrameDataToArray (frameData)

    frameDataには赤外線フレームデータをコピーする先の配列を指定します。この場合はUShort型の配列変数myInfraredBufferを指定しています。
  4. myInfraredBitmap(WriteableBitmapクラス)のWritePixelsメソッドで、ビットマップの指定した領域内のピクセルを更新します。書式については第2回目を参照してください。
  5. Image1のSourceプロパティにmyInfraredBitmapオブジェクトを指定します。これで赤外線センサーからの画像が表示されます。

ウインドウが閉じられる時の処理

最後は、ウインドウが閉じられる際の処理を記述します。

リスト5 ウインドウを閉じる際の処理(MainWindow.xaml.vbの一部、リスト4の続き)

01    Private Sub MainWindow_Closing(sender As Object, e As ComponentModel.CancelEventArgs) Handles Me.Closing
02        If myInfraredFrameReader Is Nothing = False Then
03            myInfraredFrameReader.Dispose()   (1)
04            myInfraredFrameReader = Nothing
05        End If
06        If myKinectSensor Is Nothing = False Then
07            myKinectSensor.Close()   (2)
08            myKinectSensor = Nothing
09        End If
10    End Sub
11End Class
  1. myInfraredFrameReaderをDisiposeし、全ての関連付けから解放します。
  2. Kinectセンサーも閉じ、全ての関連付けから解放します。

プログラムを実行すると、図2のように表示されます。

図2: 暗闇の中で取得した赤外線センサーからの画像が表示された(クリックで拡大)

次回からは、ゲームや3Dコンテンツの統合開発エンジンであるUnityからKinect v2を利用する方法をご紹介します。

  • Kinect v2で赤外線画像を取り込むサンプル

    『速攻攻略 Kinect v2 プログラミング入門』 第4回のサンプルプログラムです。
薬師寺国安事務所

薬師寺国安事務所代表。Visual Basic プログラミングと、マイクロソフト系の技術をテーマとした、書籍や記事の執筆を行う。
1950年生まれ。事務系のサラリーマンだった40歳から趣味でプログラミングを始め、1996年より独学でActiveXに取り組む。1997年に薬師寺聖とコラボレーション・ユニット PROJECT KySS を結成。2003年よりフリーになり、PROJECT KySS の活動に本格的に参加、.NETやRIAに関する書籍や記事を多数執筆する傍ら、受託案件のプログラミングも手掛ける。Windows Phoneアプリ開発を経て、現在はWindows ストア アプリを多数公開中

Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。Microsoft MVP for Development Platforms - Windows Phone Development(Oct 2012-Sep 2013)。Microsoft MVP for Development Platforms - Client Development(Oct 2013-Sep 2014)。Microsoft MVP for Development Platforms-Windows Platform Development (Oct 2014-Sep 2015)。

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