Kinect v2の深度センサーから取り込んだ画像を表示する

2014年9月18日(木)
薬師寺 国安

「Depth画像の表示」とは、Kinect v2センサーの「深度センサー」から画像を撮り込むことを指します。第1回目でも解説していたように、v2からはDepth画像の解像度が512×424にアップし、Kinect v1(320×240)よりも繊細な画像を表示できるようになりました。第1回目でも解説していたように「Depth画像」は、ピクセルの一つ一つが深度(距離)データを保持しています。そのため、「Color画像」と組み合わせて距離を測ったり、画像をマスクしたりするのに使用されます。今回は、Kinect v2の基本の一つである、この「深度センサー」を使って画像を撮り込む方法を解説します。まずはプロジェクトからの作成です。

プロジェクトの作成

VS 2013のメニューから[ファイル]ー[新規作成]ー[プロジェクト]と選択します。次に、「テンプレート」から「Visual Basic」を選択し、右に表示される項目名から「WPF アプリケーション」を選択します。「名前」に任意のプロジェクト名を指定します。今回は「Depth_Basic_Sample」という名前を付けています。

コントロールの配置

デザイン画面上にツールボックスからImageコントロールを1個配置し、「名前(x:Name)」に「Image1」と指定しておきます。

レイアウトは図1のようになります。

図1: デザイン画面上にImageコントロールだけを配置している(クリックで拡大)

リスト1 編集し、書き出されたXAMLコード(MainWindow.xaml)

<Window x:Class="MainWindow"
    xmlns="http://schemas.microsoft.com/winfx/2006/xaml/presentation"
    xmlns:x="http://schemas.microsoft.com/winfx/2006/xaml"
    Title="MainWindow" Height="600" Width="800">   (1)
    <Grid>
        <Image x:Name="Image1"  />   (2)
    </Grid>
</Window>
  1. Window要素のHeightプロパティに「600」、Widthプロパティに「800」と指定しておきます。
  2. 名前がImage1というImageコントロールを配置しています。

参照設定

ソリューションエクスプローラー内の「参照設定」に、Microsoft.Kinect.dllを追加する必要があります。この手順については第1回で解説していますので、そちらを参照してください。

ロジックコードを記述する

次に、ソリューションエクスプローラー内のMainWindow.xamlを展開して表示されるMainWindow.xaml.vbをダブルクリックして、リスト2のコードを記述します。

リスト2 名前空間のインポート、メンバー変数の宣言(MainWindow.xaml.vbの一部)

Imports Microsoft.Kinect   (1)
Class MainWindow
    Private myKinectSensor As KinectSensor   (2)
    Private myDepthFrameReader As DepthFrameReader = Nothing   (3)
    Private myBytesPerPixel As Integer   (4)
    Private DepthImageFrameData() As UShort   (5)
    Private DepthImageBitmapRect As Int32Rect   (6)
    Private DepthImageStride As Integer   (7)
    Private DepthImageBitmap As WriteableBitmap   (8)
  1. Kinectの使用を可能にするために、Microsoft.Kinect名前空間をインポートします。次は、メンバー変数を宣言します。
  2. Kinectセンサーを表すクラスであるKinectSensor型のメンバー変数myKinectSensorを宣言します。
  3. DepthFrameReaderクラス型のメンバー変数、myDepthFrameReaderを宣言します。DepthFrameReaderクラスは、深度(距離)フレームのリーダーを表わすクラスです。
  4. Integer型のメンバー変数myBytesPerPixelを宣言します。この変数には、深度(距離)データからのピクセル データのサイズ(ピクセルあたりのバイト)を格納します。
  5. UShort型の配列メンバー変数DepthImageFrameDataを宣言します。この配列変数では、DepthデータのWidthとHeightを乗算した分の配列を確保します。
  6. Int32Rect構造体のメンバー変数DepthImageBitmapRectを宣言します。Int32Rect構造体は、長方形の幅、高さ、および位置を表す構造体です。このメンバー変数は、Int32Rectのパラメータで初期化された新しいインスタンスを作成します。
  7. Integer型のメンバー変数DepthImageStrideを宣言します。この変数にはDepthのストライドを格納します。
  8. WriteableBitmapクラス型のメンバー変数DepthImageBitmapを宣言します。

ウインドウが読み込まれた時の処理

次に、ウインドウが読み込まれた際の処理を記述します。

リスト3 ウインドウが読み込まれた際の処理(MainWindow.xaml.vbの一部、リスト2の続き)

    Private Sub MainWindow_Loaded(sender As Object, e As RoutedEventArgs) Handles Me.Loaded
        myKinectSensor = KinectSensor.GetDefault   (1)

        If myKinectSensor Is Nothing = False Then
            myDepthFrameReader = myKinectSensor.DepthFrameSource.OpenReader   (2)
            Dim myDepthFrameDescripton As FrameDescription = myKinectSensor.DepthFrameSource.FrameDescription   (3)

            DepthImageBitmap = New WriteableBitmap(myDepthFrameDescripton.Width, myDepthFrameDescripton.Height, 96.0, 96.0, PixelFormats.Gray8, Nothing)   (4)
            myBytesPerPixel = myDepthFrameDescripton.BytesPerPixel   (5)
            DepthImageFrameData = New UShort(myDepthFrameDescripton.Width * myDepthFrameDescripton.Height - 1) {}   (6)
            DepthImageBitmapRect = New Int32Rect(0, 0, myDepthFrameDescripton.Width, myDepthFrameDescripton.Height)   (7)
            DepthImageStride = myDepthFrameDescripton.Width * myBytesPerPixel   (8)
            AddHandler myDepthFrameReader.FrameArrived, AddressOf myDepthFrameReader_FrameArrived   (9)
            myKinectSensor.Open()   (10)
        End If
    End Sub
  1. まずKinectセンサーを使用可能にします。Kinectセンサーが使用可能な状態にある場合は、以下の処理を行います。
  2. 深度(距離)フレームのソースを取得する、DepthFrameSourceのOpenReaderメソッドで、深度(距離)フレームのソースフレームのリーダーを開きます。
  3. KinectSensorからのフレームのプロパティを表わすクラスである、FrameDescriptionクラス型の変数myDepthFrameDescriptonを宣言し、myKinectSensor.DepthFrameSource.FrameDescriptionで、深度(距離)フレームソースの深度(距離)フレームのプロパティを取得します。
  4. 次に、WriteableBitmapのパラメータで初期化された、新しいインスタンス、DepthImageBitmapオブジェクトを作成します。WriteableBitmapの書式については、連載の第2回目を参照してください。今回はPixelFormatsに「Gray8」を指定しています。「PixelFormats.Gray8」は、ピクセルあたりのビット数が8で256段階のグレイスケール チャネルを表示する「Gray8」ピクセル形式を表します。
  5. メンバー変数myBytesPerPixelに、深度(距離)データからのピクセル データのサイズ(ピクセルあたりのバイト)を格納します。「2」という値が格納されます。グレイスケールは16ビットで、BytesPerPixelプロパティで、ピクセルあたりのバイト数を取得すると、16÷8の「2」が取得できます。
  6. 要素の個数が、深度(距離)フレームのWidthとHeightの積であるUShort型の配列を確保し、メンバー変数DepthImageFrameDataに格納します。
  7. Int32Rectのパラメータで初期化された、新しいインスタンスDepthImageBitmapRectオブジェクトを作成します。Int32Rectの書式については、第2回目を参照してください。
  8. メンバー変数myBytesPerPixelが格納している値「2」と、深度(距離)フレームのWidthである「512」を乗算した値(1024)を、メンバー変数DepthImageStrideに格納します。
  9. AddHandlerステートメントで、DepthFrameReaderのFrameArrivedイベントにイベントハンドラを指定します。FrameArrivedイベントは、深度(距離)フレームが到着した時に発生するイベントです。
  10. OpenメソッドでKinectセンサーを開きます。

深度(距離)フレームが到着した時に発生するイベント

リスト3の最後で指定したイベントハンドラの内容です。

リスト4 深度(距離)フレーム到着時の処理(MainWindow.xaml.vbの一部、リスト3の続き)

    Private Sub myDepthFrameReader_FrameArrived(sender As Object, e As DepthFrameArrivedEventArgs)
        Using myDepthFrame As DepthFrame = e.FrameReference.AcquireFrame   (1)
            If myDepthFrame Is Nothing = False Then
                myDepthFrame.CopyFrameDataToArray(DepthImageFrameData)   (2)
                DepthImageBitmap.WritePixels(DepthImageBitmapRect, DepthImageFrameData, DepthImageStride, 0)   (3)
                Image1.Source = DepthImageBitmap   (4)
            End If
        End Using
    End Sub
  1. e.FrameReference.AcquireFrameメソッドで深度(距離)フレームを取得し、myDepthFrameで参照します。
  2. CopyFrameDataToArrayメソッドで、深度(距離)フレームデータをUShort型配列にコピーします。書式は下記の通りです。

    CopyFrameDataToArray(frameData)

    frameDataには深度(距離)フレームデータをコピーする先の配列を指定します。この場合はUShort型の配列変数DepthImageFrameDataを指定しています。
  3. DepthImageBitmap(WriteableBitmapクラス)のWritePixelsメソッドで、ビットマップの指定した領域内のピクセルを更新します。WritePixelsの書式については、第2回目を参照してください。
  4. Image1のSourceプロパティにDepthImageBitmapオブジェクトを指定します。これで深度(距離)センサーからの画像が表示されます。

ウインドウが閉じられる時の処理

最後に、ウインドウが閉じられる際の処理を記述します。

リスト5 ウインドウを閉じる際の処理(MainWindow.xaml.vbの一部、リスト4の続き)



    Private Sub MainWindow_Closing(sender As Object, e As ComponentModel.CancelEventArgs) Handles Me.Closing
        If myDepthFrameReader Is Nothing = False Then
            myDepthFrameReader.Dispose()   (1)
            myDepthFrameReader = Nothing
        End If

        If myKinectSensor Is Nothing = False Then
            myKinectSensor.Close()   (2)
            myKinectSensor = Nothing
        End If
    End Sub
End Class
  1. myDepthFrameReaderをDisposeし、全ての関連付けから解放します。
  2. Kinectセンサーも閉じ、全ての関連付けから解放します。

上記のプログラムを実行すると、図2のように表示されます。

図2: 深度センサーからの画像が表示された(クリックで拡大)

次回は、赤外線画像の取り込みにチャレンジします。

  • Kinect v2の深度センサーから取り込んだ画像を表示する

    『速攻攻略 Kinect v2 プログラミング入門』 第3回のサンプルプログラムです。
薬師寺国安事務所

薬師寺国安事務所代表。Visual Basic プログラミングと、マイクロソフト系の技術をテーマとした、書籍や記事の執筆を行う。
1950年生まれ。事務系のサラリーマンだった40歳から趣味でプログラミングを始め、1996年より独学でActiveXに取り組む。1997年に薬師寺聖とコラボレーション・ユニット PROJECT KySS を結成。2003年よりフリーになり、PROJECT KySS の活動に本格的に参加、.NETやRIAに関する書籍や記事を多数執筆する傍ら、受託案件のプログラミングも手掛ける。Windows Phoneアプリ開発を経て、現在はWindows ストア アプリを多数公開中

Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。Microsoft MVP for Development Platforms - Windows Phone Development(Oct 2012-Sep 2013)。Microsoft MVP for Development Platforms - Client Development(Oct 2013-Sep 2014)。Microsoft MVP for Development Platforms-Windows Platform Development (Oct 2014-Sep 2015)。

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