Hyper-VでいよいよOS仮想化本番へ
パーティションを分けずにマルチブートのOS追加が可能
Hyper-Vの仮想マシンのハードディスクは、管理OSから見ると、1つまたは少数のファイルです。これはVHD(Virtual Hard Disk)という形式のファイルで、ハードディスクのイメージを表現するための形式です。
VHDには容量固定、容量可変、差分の3種類があります。
・容量固定
VHDファイルの作成時に指定した容量のファイルを作成するタイプで、パフォーマンス優先です。
・容量可変
作成時には最大容量のみを指定し、実際に書き込んだ分だけファイルサイズが大きくなっていくタイプで、ディスク容量優先です。
・差分ディスク
別の親ディスクに対して、関連する子ディスクとして作成するもので、子ディスクに対する変更は親ディスクには影響しません。
例えばWindows Server 2008 R2の仮想マシンを3台作成する場合、1つのマスターVHDファイルを用意し、そこからの変更分を記録する3つの差分ディスクを作成すると、必要なディスク容量が少なく済みます。
また、Hyper-Vではスナップショットとして、ある時点の状態を保存しておくことができます。これも差分ディスクの仕組みを利用しています。
仮想マシンの実体はこれらのVHDと構成ファイルだけですから、別のサーバーに移動する時も、少数のファイルのコピーだけで済みます。同様にバックアップもファイルのみ行えばよいということになります。仮想マシンも管理OSから見ると単なる少数のファイルというシンプルさが管理や展開の効率化につながっています。
ところで、Windows Server 2008 R2とWindows 7では、VHDファイルがネイティブ操作できるようになりました。つまりHyper-Vが有効になっていなくてもVHDファイルを作成したり、OSのドライブとしてマウントし、読み書きを行ったりができます。ファイルのアーカイブ形式としてはZIPなどが広く使われていますが、同様にVHDをやりとりすることで、そのまま読み書き可能なドライブイメージとして利用できます。
さらに、Windows Server 2008 R2とWindows 7 Enterprise、Ultimate では、VHDにOSをインストールして、そこから起動することができます。したがって、パーティションを分けずにマルチブートのOSを追加していくことができます。また、差分ディスクとして用意しておくと、いつでも最初の時点に戻すことができます。Windows Vista以降のコンピューターのバックアップにもVHDファイルが使われています。
このようにVHD形式のファイルは、仮想マシンのハードディスクイメージとしてだけではなく、さまざまな活用方法が増えてきています。
目的に合った管理OSを選択する
Hyper-Vで仮想環境を作り始めると、管理OSとしてフル仕様のWindows Serverを使うのは、リソースを無駄に消費しているように感じる事もあります。そのような場合には、GUIを持たず役割が限定されているServer Coreを使うという選択肢もあります。
Server Coreであれば消費リソースはより少なくなるとともに、Windows Update の更新プログラムの数もぐっと減少します。Windows Server 2008のServer Coreは、UIとしてコマンドプロンプトのみが提供されており、さまざまな設定をコマンドで行うために、手元にコマンド集が必要でした。Windows Server 2008 R2のServer Coreでは、sconfigというメニュー形式の設定ツールが追加され、コマンドを知らなくても基本的な設定ができるようになりました。
さらにHyper-Vベースのサーバー製品としてMicrosoft Hyper-V Server 2008 R2が無償で提供されます。これはHyper-Vの管理OSとして必要な機能のみを盛り込んだ仮想化に特化したサーバーです。といっても機能限定版ではなく、Live Migrationも使える本格的なサーバーです。ハードウエアメーカーとの協業により、フラッシュROMに入れておいて、スイッチオンで即座にHyper-Vが使えるようなサーバー機の発売も検討されています。
このように、管理OSとして、フル仕様のWindow Server、Server Core、Hyper-V Serverと選択肢があります。サーバー機の台数が少ない場合はGUI完備のフル仕様が、数多くのサーバー機をリモート管理する場合には、個々の管理OSはServer CoreやHyper-V Serverが向いているでしょう。構成に応じて選択してください。
次回はHyper-V 2.0の新機能や強化点について、さらに詳細に解説します。
※Think IT編集部注(2009.08.18):図3のVHDで本来C:¥となるところがD:¥となっておりました。お詫びして訂正させていただきます。