IT運用に求められる統合フレームワーク
「サービス管理」 - 自動化の司令塔
サービス・ビジネス管理の下に位置するのがサービス管理のレイヤーである。ここでは、サービスのデリバリ管理などを実施する。例えば、「2010年3月1日にサービスを開通」というように、イベントに応じてプロビジョニングのためのトリガーを出すといった具合である。
クラウド・サービス事業者ごとに顧客管理のためのアーキテクチャーは異なるが、一般的には図2のようなサービス・インスタンス管理を行う。
クラウド・サービスにおけるサービス・インスタンスとは、仮想マシンや仮想アプライアンス、あるいはSaaSアプリケーションのインスタンスのことである。クラウドにおけるサービス管理フレームワークとは、さまざまな属性を基にインスタンスを構成し、モニタリングを開始し、課金をスタートするためのベストプラクティスである。
なお、サービス管理には、サーバー・システムを購入して構築するときに行うことがすべて含まれる。例えば、フロア計画からネットワーク・ポートの払い出し、電力バジェットの割り当てやVLAN、ストレージの割り当てなどである。また、インベントリ(システム構成/資産)情報はコストに関係するため、リソース消費スピードの予測が重要になる。
「ITシステム管理」 - サービス管理と自動連携
サービス管理の下位レイヤーに位置するのが、ITシステム管理である。上位のサービス管理と“自動的”に連携するべきものであり、運用者からはその存在が見えないことが理想である。
システム管理には、大きく以下の4つがある。
(a)システム・プロビジョニング(システムの配置)
(b)オーケストレーション(自律化)
(c)モニタリング(監視)
(d)ワークロード管理(負荷管理)
システム・プロビジョニング
(a)システム・プロビジョニングには、リソースの予約、切り出し/割り当て、解除、などの要素がある。
サーバー仮想化から見た管理リソースには、仮想CPUや仮想メモリ、ストレージ・ボリューム個数、ストレージ容量、VLAN-IDなどがある。これらをフレームワークで管理することはそれほど難しいことではない。実際、米VMwareの仮想化ミドルウエア・パッケージ「VMware vSphere 4」では、仮想サーバーに関する管理機能が統合されている。
サーバー仮想化ソフト(ハイパーバイザ)がネットワーク上に分散している環境では、ネットワーク管理用のフレームワークが有効になる。ネットワーク用のフレームワークには、分散したスイッチの構成を一元的に行うことができる製品もある。
仮想サーバーの運用にはストレージも不可欠である。ストレージの運用管理フレームワークには、SNIAが定めてANSI標準となっている「SMI-S」(Storage Management Initiative - Specification)などがある。SMI-S準拠のフレームワークであれば、Fibre Channel(ファイバ・チャネル、FC)のスイッチ機器を含めてプロビジョニングできる。
例えば、米IBMのストレージ管理ソフト「IBM Server Storage Provisioning Tool」を使うと、SAN上にあるFCスイッチの発見からプロビジョニング、ストレージ・ボリュームの切り出しまでを統合的に行える。単一のコンソール上で自動的に管理対象を発見できる点は重要である。
次ページでは、システム・リソースの自律的な構成や、性能/負荷の監視について解説する。