間違いだらけの製品選び
製品選定の推奨ステップ(1)
以下では、製品選定の方法論を解説します。方法論は数多く存在し、正解というものは存在しませんが、筆者は以下のようなステップを踏むことにより、ユーザー企業が「何も決まらない」「間違った製品を選定してしまった」という問題に陥らないように注意しています。
ステップ1「現在の課題をエンドユーザーから確認」
まずは、粗くても良いので、利用する各部門のエンドユーザーの代表からヒアリングを実施し、現状の課題を抽出することが大切です。ユーザー企業の中には「要件は特に無い」と言う方もいますが、それではシステムの導入が目的になってしまい、業務の課題を解決するという本来の目的とは異なる方向に進んでしまいます。
エンドユーザーは、必ず業務上の課題や新システムに対する要望を抱えています。それは、報告書の作成に時間がかかる、といった業務プロセスの改善から、レスポンスが悪い、グラフの表現力が弱い、といったシステム面の要望までさまざまです。
ステップ2「パートナから製品情報を収集する」
ステップ1で得た情報をもとに、ある程度製品を絞って情報を収集します。やみくもに製品のデモンストレーションを見てまわることは、時間を浪費するだけですので、パートナに要件を伝えつつ、どのような製品が適しているか相談しながら、ある程度の製品に絞ってデモンストレーションを依頼しましょう。強引に特定の製品を推奨するパートナではなく、多製品を扱うパートナに依頼する方が適切です。
その際、単に似たような製品を見比べるのではなく、同じ方向性を持ちつつ異なる特徴を持つ製品同士を組み込むようにして、その特徴を説明のなかに盛り込むよう依頼しておくと良いと思います。
最近の製品は、機能面において非常に似通っているため、単なる製品説明を聞くと、どれも同じような印象を受けてしまいます。主だった特徴を知っておくことは、最終的な製品選定で迷った際に役立ちます。
ステップ3「詳細な製品比較を実施する」
エンドユーザーの要件を理解して、製品の情報も収集すると、ある程度の方向性が見えてきたと思います。ここで、もう一度あらためて要件を整理しましょう。
連携するシステムの情報、今後の拡大イメージなどがそれに当たります。耐障害性などのシステム要件を整理したり、エンドユーザー要件をもう少し詳細にヒアリングしたりするのも良いかも知れません。その上で図3のような比較表を作成して要件を埋め、あとは各パートナに実現方法の回答を求めます。
製品選定の推奨ステップ(2)
必須要件を整理したり、各要件を重要度に応じて重み付け/点数付けすることで、その企業の要件にあった製品を選定することができます。
ステップ4「実機検証」
ステップ3の製品比較表において各製品間で明らかな違いがでなかった場合、実機検証を実施します。ほとんどの製品ベンダーが試用版を用意しているので、それを社内に構築して、パートナの支援を受けながら検証を実施するのが良いかと考えます。
ただし、実機検証は長い期間を要し、技術支援費用もかさみます。そこで、筆者が所属する伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)が用意しているDWCC(DWH/BI Competency Center)のような専用検証施設を利用することも検討するとよいでしょう。検証施設を利用すれば、検証に必要な工数を削減しながら、異なるベンダーの複数の製品を検証できます。
検証施設を利用する際には、検証のポイントを何点か用意しておいて臨みます。ポイントはユーザー企業によって異なりますが、実際の例としては、「表計算ソフトを報告書として利用する場合の、データ連携方法の違いによる、ステップ数の違い」を比べた企業もありました。
BIの導入を提案する製品ベンダーやSIベンダーは、製品の押し売りにならないように注意します。一方、ユーザー企業は、製品導入までのプロセスを正しく思い描きます。これらによって、製品選びの上で発生する各種の問題を比較的簡単に回避できると考えます。
ユーザー企業の中には、専門知識を身に付けたパートナと対等に会話するのは難しいと考える方もいるかと思います。この場合は、パートナに対し、正直に相談されるのも良いかと考えます。筆者が所属するCTCでは、ユーザー企業の要望に対し、個別で簡単な知識を身に付けるための研修も用意しています。
では、前回から説明してきたDWHやBIの利用で、どのようなソリューションが展開可能なのでしょうか。次回はCTCが推進しているCCW(Customer Centric Warehouse)を例に「情報活用のトレンドと導入ノウハウ」を説明します。