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  インタビュー

【Azure Database座談会】識者が語るMySQL/PostgreSQLマネージドサービスのメリットとは

2017年11月17日(金)
鈴木 教之(Think IT編集部)

ーーフィードバックへはどうやって対応していってますか?

MS 新井:コミュニティからのフィードバックにいかに対応するかは、(マイクロソフト社内の)開発者本人の評価軸にもなるくらい重要視しています。先ほどのPostgreSQLの機能拡張のリクエストはまさに対応しているところで、コミュニティの皆さんに対してAzureの検証環境を提供したりもしています。また、機能的なリクエストだけではなく、石井さんからはOSSコミュニティとの関わり方のアドバイスもいただき、非常に参考になりました。

MS 石坂:これまで日本のデータベースチームは1つでしたが、PostgreSQLとMySQLのチームを分けてエンジニアの人数を増やしています。日々世界中から集まるフィードバックに対して、グローバルで要望が高いものから改善のプロセスを進めていっています。日本独自のニーズや、ゲーム業界ならではのものなどもありますが、日本チームとしていかにフィードバックをしていくかが重要になってきます。

気になる機能とバージョン対応

ーー他にもこれは必要だという機能があればぜひお願いします

NHNテコラス 伊東:メトリック(ステータス表示)の機能がちょっと弱い気がします。もちろん外部サービスをつなげればデータは取れるのですが、自分で用意するのはちょっと手間なので最初からオフィシャルで何らか提供されていると嬉しいです。Azureで完結されているサービスであればなおのこと、WebやDBなどまとめて表示されると良いのではないでしょうか。

また、サイズ(価格レベル)によってパラメーターが変わっていないものがあるのが気になりました。実際のサービスでは、サーバーのスペックにあわせてパラメーターをチューニングする必要がありますが、PaaSであれば構成に応じたチューニングが自動でされていて然るべきだと思います。

MS 新井:性能をアップ・ダウンするときは、内部的には別のインスタンスが立ち上がり、データをコピーするという仕組みを取っています。そこで切り替え時にチューニング済みの設定が自動で反映されるようになると良さそうですね。

SRA OSS 石井:リードレプリカの機能についてはロードマップに含まれているとのことでしたね。PostgreSQLではレプリケーションの機能がどんどん改良されていっています、最新バージョンのPostgreSQL 10では、ロジカルレプリケーションも導入されました。こうした機能がサポートされていくとお客さんも増えてくるのでないでしょうか。

ーーバージョン対応の方針を教えてください

MS 新井:現状、Azure Database for MySQLではMySQL 5.6と5.7、Azure Database for PostgreSQLではPostgreSQL 9.5と9.6をサポートしており、今後はメジャーバージョンを3つまでサポートするポリシーになります(PostgreSQLの場合は最新版を含めた10/9.6/9.5の3バージョンを予定)。マイナーバージョンのアップデートについては、セキュリティパッチを短期間で対応していきます。過去バージョンの対応については、どれくらいのバージョンの分布があるかを照らし合わせて調査してきましたが、概ね3バージョンあればある程度のユーザーに対応できると判断をしています。

MS 石坂:実際のところバージョン分布はどんな感じでしょうか?

NHNテコラス 伊東:弊社で管理しているものだと、ざっと5.5が50〜60%、5.6が20〜30%、5.7はまだ少ないですね。ゲーム系は比較的バージョンアップが早い印象で、今なら5.6か5.7で構築することがほとんどだと思いますが、ずっと動いているケースだと5.0などもあるかもしれません。強制アップデートはちょっと辛いですが、3バージョンあればほぼ大丈夫ではないかと。また、バージョンアップしたほうが性能は上がることが多いのでユーザメリットにも繋がると思います。

SRA OSS 石井:脆弱性への対応という観点では、PostgreSQLではコミュニティ版のバージョンサポートは5年と決められています。全体の8割は過去5年以内のバージョンを使っているというイメージになります。

クラウドサービスとオンプレの共存へ向けて

ーー今後のご自身のチャレンジやAzure Databaseへの期待をお願いします

NHNテコラス 伊東:オンプレのように手動でフェイルオーバーさせる必要がなくなれば、手間から開放されて運用が非常に楽になります。あとはオンプレくらいに安くなると嬉しいですね(笑)。クラウドが高くてうち(ホスティング)に戻ってきた事例もあります。

MS 石坂:何割くらい安くしたら良いのか具体的なイメージはありますか? でもサーバーの規模によってケースバイケースですかね。

NHNテコラス 伊東:IPベースのフェイルオーバーや、無停止でのスケールアップ・ダウンはAzureの大きなメリットですね。オンプレの場合は、レプリケーションの張り替えとなると作業時間もそうですが、レプリケーション先のサーバーを物理的に用意しないといけないのは手間です。ジャストアイデアですが、複数のデータベースをマージしてスケールアップできる機能なんかがあると面白いのかなと思いました。

MS 新井:変化があるサービスに対応しやすいのはクラウドならではだと思います。

SRA OSS 石井:PostgreSQL用の拡張としてリードレプリカにクエリを振り分ける「Pgpool-II」を提供しています。今後Azure側でリードレプリカをサポートしたらぜひ対応していきたいと思います。クエリのルーティング、負荷分散、クエリキャッシュなどが使えるようになります。

PostgreSQLのコミュニティは非常に柔軟です、今後はコミュニティとの連携をより深めていけると良いのではないでしょうか。

MS 新井:PostgreSQLのコミュニティとはイベントへのスポンサードも進めていて、例えばPGConf.ASIA 2017には日本マイクロソフトだけではなくマイクロソフト本社もスポンサードを希望しているくらいです。

ーーオンプレのビジネスへの影響はどうでしょうか?

SRA OSS 石井:最初はIaaS上にOSSを構築する話をしようかと思っていましたが、実際にPaaSのサービスに触れお客さんの反応を聞いていると使い勝手が良いと返ってきます。ただ、クラウド時代になってもデータベース管理は本質的には大変な作業であることに変わりはなく、今後もプロフェッショナルであるわれわれの仕事は十分にある、Win-Winの関係性を築けると思っています。また、PostgreSQLのいちエバンジェリストとしては、コミュニティが拡大していくことは非常にハッピーだと考えていますね。

ーー皆さんありがとうございました

(撮影:柳川 勤)

著者
鈴木 教之(Think IT編集部)
株式会社インプレス Think IT編集グループ 編集長

Think ITの編集長兼JapanContainerDaysオーガナイザー。2007年に新卒第一期としてインプレスグループに入社して以来、調査報告書や(紙|電子)書籍、Webなどさまざまなメディアに編集者として携わる。Think ITの企画や編集、サイト運営に取り組みながらimpress top gearシリーズなどのプログラミング書も手がけている。

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