Microsoft AzureのCTO「人工知能の進化はOSSとクラウドのおかげ」と語る
The Linux Foundationが開催した「Open Source Leadership Summit」では、近年注目を集めている人工知能、深層学習などについても講演が行われた。今回、紹介するのはMicrosoft AzureのCTO、Mark Russinovich氏によるキーノートだ。
タイトルは「AI owes its Rise to Open Source and the Cloud」、直訳すれば「人工知能の発展はオープンソースとクラウドのおかげ」であり、現在のAIの急速な技術開発のスピードは、オープンソースとクラウドコンピューティングがなければ不可能だったというものだ。
Russinovich氏が例に挙げたのは、ロールスロイスの事例と、DiagnostiXというX線画像を用いて肺炎を早期に発見するためのシステムだ。どちらも膨大なデータから異常を検知することにより、問題を解決するというものだ。ロールスロイスであれば、それは航空機のエンジンの故障を予知することであり、DiagnostiXは多くの開発途上国で幼児の主要な死亡原因である肺炎を早期に発見することである。
かつての人工知能は、解答を導く推論を行う際のルールをどうやって取り出すか? という知識獲得が課題であったが、現代の人工知能は膨大なデータを素早く処理することで、解答を得ることができる。その膨大なデータとアルゴリズムを実装する部分に、オープンソースソフトウェアが使われているというのがこのセッションでの要点だ。
またMicrosoftが2016年に買収したLinkedInのリサーチデータを使って、2018年に最も需要のありそうな職種として「Cloud&Distribution Computing」「Statistical Analysis and Data Mining」を挙げて、業界全体がビッグデータと人工知能の活用に向かっていることを紹介した。
人工知能とビッグデータに関しては、ハードウェアの進化が後押しをしているとして、パブリッククラウドによるスケーラブルなコンピュートノード、安価なストレージ、そして人工知能アルゴリズムを実行するのに最適なGPUの登場が、その要因として挙げられていた。
特にGPUに関しては、CPU以上に性能の向上が著しいとして、NVIDIAのGPUの性能をグラフで紹介。ハードウェアとオープンソースソフトウェアがうまく同期して、進化の波に乗っていることを解説した。
またデータセンターにおけるサーバーのネットワーク帯域も、高速なネットワークインターフェースの利用によって大幅に向上しており、プロセッサ、ストレージ、ネットワークがそれぞれ進化し続けていることを解説した。
次にソフトウェアについてもデータベース、解析ツール、開発言語がそれぞれオープンソースソフトウェアとして常に開発を続けられていること、Microsoftが開発を推進するCNTK(Microsoft Cognitive Toolkit)やTensorFlow、MXNet、ONNX(Open Neural Network Exchange)などが、オープンソースのプロジェクトの一部として紹介された。
Facebookと共同のプロジェクトとしてスタートしたONNXは、その後AWSの協力を得て、ONNX 1.0が2017年12月にリリースされている。ONNXは深層学習のオープン標準フォーマットであり、次期Windowsが標準でサポートすると発表されている。これによって、フレームワークの壁を超えて深層学習アルゴリズムを再利用できることになる。
参考:ONNX
事例として、Microsoftが開発を進めているというDiagnosticXについて概要が説明された。このシステムはまだ情報が公開されていないのか、公開されている情報がほとんど見つからないものの、肺炎の早期診断をX線データから行う論文は多数存在しているので、それらの実装例ということだろう。
最後にオープンソースとクラウドコンピューティングが、人工知能及び機械学習を進化させていることを再度強調して、プレゼンテーションを終えた。
オープンソースソフトウェアに関するカンファレンスにMicrosoftのエンジニアが登壇することは、すでに当たり前の風景だが、AzureのCTOが人工知能の領域でオープンソースを褒め称え、クラウドコンピューティングによるビッグデータの活用が人工知能の隆盛の後押しとなったというのは正論過ぎて驚きがないといったところだろう。しかしこのサミットに集まったビジネス系の人たちに対して、Googleと同様にMicrosoftも人工知能を重要視していると印象付けることは成功したと思われる。
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