Open Source Summit Japan 2018開幕 Jim Zemlinの講演に続きAGLやHyperledgerの事例を発表
Hyperledgerの2プロジェクトがバージョン1.0に到達
ブロックチェーンプラットフォームのHyperledgerプロジェクトでExecutive Directorを務めるBrian Behlendorf氏は、「How Blockchain Continues to Reinvent THe Way The World Works」と題してHyperledgerプロジェクトを紹介した。なお、Behlendorf氏はApache Software Foundationの創設者でもある。
HyperledgerプロジェクトはThe Linux Foundationにホストされているが、プロジェクトがさらにさまざまなプロジェクトをホストする「温室」となっている。例えばフレームワークが5つあり、「データベースにMySQLやPostgreSQLなどいろいろなものがあるのと同じだ」とBehlendorf氏は説明した。
プロジェクトの姿勢についてBehlendorf氏はCauchy氏の講演を引用して「AGLが“Code First”と言うように、Hyperledgerでは“We are Builders”と言っている。稼ぐのがコードより先の会社もあるが、われわれは逆だ」と語った。
Hyperledgerプロジェクトには5つのツールと5つのフレームワークで10のプロジェクトがある。これまで47,000コミットが集まり、プロジェクトで商業的に使えるとみなしたバージョン1.0に到達したプロジェクトが2つある。
メンバーには250もの組織が加盟しており、日本からプレミアメンバーには富士通、日立、NECが、アソシエートメンバーにはNTTデータが参加している。
Behlendorf氏はブロックチェーンには幅広い種類があるとして、パブリックかプライベートか、パーミッションドかパーミッションレスかの2つの軸での分類を紹介した。パブリックでパーミッションレスなものになBitcoinやEtheriumが、プライベートでパーミッションドなものには医療記録などがある。
またブロックチェーンネットワークの利用分野として、金融や、自動車などのサプライチェーン、ヘルスケア会社を挙げ、さまざまなユースケースに適用できるとBehlendorf氏は語った。
HyperLEdgerの事例としては、まず銀行業界でSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication、国際銀行間通信協会)が国際送金にHyperledger Fabricベースのブロックチェーンを採用した実験を発表している。これにより、従来は3〜4日かかっていた手続きが5分に短縮されるという。
またブロックチェーンによる国際取引システムのwe.tradeは、ドイツ銀行やHSBCなど大手銀行のコンソーシアムによる。Hyperledger Fabricをベースにしており、「先週、本番環境で使われるようになった」とBehlendorf氏は紹介した。
ダイヤモンドが採掘されてから販売されるまでをHypberledger Fabricベースの分散台帳でトレースするEverledgerという取り組みもある。これにはSAPやIBMなども参加している。
海産物を、漁船からサプライチェーン、スーパーマーケットまでトレースし、漁獲枠を守ってとられた魚であることを担保する取り組みも、Intelが中心になってなされている。これはまだ初期段階だという。
音楽著作権をASCAPやBMI(あるいは日本でいうとJASRAC)のように集中管理するのではなく、ブロックチェーンで分散管理する「dotBlockchain」という取り組みも、Hyperledgerを使っている。
フィリピンでは資金洗浄防止のために銀行口座に身元確認を求めるKYC(Know Your Customer、顧客確認)ルールがある。そこで、フィリピン銀行協会(BAP)とAmihan社では、Blockchain Indyを使ったデジタルなアイデンティティ証明を実験しているという。
事例に続いて、各プロジェクトをBehlendorf氏は紹介した。まずHyperledger Fabricフレームワークは、2017年7月にバージョン1.0を迎え、現在バージョン1.1がリリースされている。
Hyperledger SwatoothはFabricの姉妹プロジェクトのようなものだという。2018年1月にバージョン1.0に到達した。コンセンサスアルゴリズムに大規模でもエネルギー商品の低いPoETアルゴリズムなどを採用している。
Hyperledger Indyフレームワークは、ブロックチェーンによるデジタルアイデンティティに焦点をあてている。
Hyperledger Burrowフレームワークは、Etherium Virtual Machine(EVM)上で動き、そのコンセンサスアルゴリズムをSawtoothやFabricにも移植されている。
ツールのHyperledger Composerは、ブロックチェーンネットワークをすばやく作れる。REST APIを提供し、Angular.jsに組み込むことができる。
ツールのHyperledger Quiltは、分散台帳間の相互運用のためのプロジェクトだ。NTTデータとRippleがコントリビュートした。
最後にBehlendorf氏は、Hyperledgerプロジェクトでは多くのプロジェクトと同じようにTechnical Steering Communityがあること、毎週ミーティングが行われていることなどを紹介した。
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