Open Source Summit Japan 2018開幕 Jim Zemlinの講演に続きAGLやHyperledgerの事例を発表

2018年8月10日(金)
高橋 正和

Hyperledgerの2プロジェクトがバージョン1.0に到達

ブロックチェーンプラットフォームのHyperledgerプロジェクトでExecutive Directorを務めるBrian Behlendorf氏は、「How Blockchain Continues to Reinvent THe Way The World Works」と題してHyperledgerプロジェクトを紹介した。なお、Behlendorf氏はApache Software Foundationの創設者でもある。

HyperledgerプロジェクトのExecutive DirectorのBrian Behlendorf氏

HyperledgerプロジェクトはThe Linux Foundationにホストされているが、プロジェクトがさらにさまざまなプロジェクトをホストする「温室」となっている。例えばフレームワークが5つあり、「データベースにMySQLやPostgreSQLなどいろいろなものがあるのと同じだ」とBehlendorf氏は説明した。

Hyperledgerプロジェクトは10のプロジェクトの「温室」

プロジェクトの姿勢についてBehlendorf氏はCauchy氏の講演を引用して「AGLが“Code First”と言うように、Hyperledgerでは“We are Builders”と言っている。稼ぐのがコードより先の会社もあるが、われわれは逆だ」と語った。

Hyperledgerプロジェクトには5つのツールと5つのフレームワークで10のプロジェクトがある。これまで47,000コミットが集まり、プロジェクトで商業的に使えるとみなしたバージョン1.0に到達したプロジェクトが2つある。

Hyperledgerプロジェクトに関する数字

メンバーには250もの組織が加盟しており、日本からプレミアメンバーには富士通、日立、NECが、アソシエートメンバーにはNTTデータが参加している。

Hyperledgerのプレミアムメンバー
Hyperledgerのアソシエートメンバー

Behlendorf氏はブロックチェーンには幅広い種類があるとして、パブリックかプライベートか、パーミッションドかパーミッションレスかの2つの軸での分類を紹介した。パブリックでパーミッションレスなものになBitcoinやEtheriumが、プライベートでパーミッションドなものには医療記録などがある。

またブロックチェーンネットワークの利用分野として、金融や、自動車などのサプライチェーン、ヘルスケア会社を挙げ、さまざまなユースケースに適用できるとBehlendorf氏は語った。

ブロックチェーンの種類

HyperLEdgerの事例としては、まず銀行業界でSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication、国際銀行間通信協会)が国際送金にHyperledger Fabricベースのブロックチェーンを採用した実験を発表している。これにより、従来は3〜4日かかっていた手続きが5分に短縮されるという。

SWIFTの事例

またブロックチェーンによる国際取引システムのwe.tradeは、ドイツ銀行やHSBCなど大手銀行のコンソーシアムによる。Hyperledger Fabricをベースにしており、「先週、本番環境で使われるようになった」とBehlendorf氏は紹介した。

we.tradeの事例

ダイヤモンドが採掘されてから販売されるまでをHypberledger Fabricベースの分散台帳でトレースするEverledgerという取り組みもある。これにはSAPやIBMなども参加している。

Everledgerの事例

海産物を、漁船からサプライチェーン、スーパーマーケットまでトレースし、漁獲枠を守ってとられた魚であることを担保する取り組みも、Intelが中心になってなされている。これはまだ初期段階だという。

海産物トラッキングの事例

音楽著作権をASCAPやBMI(あるいは日本でいうとJASRAC)のように集中管理するのではなく、ブロックチェーンで分散管理する「dotBlockchain」という取り組みも、Hyperledgerを使っている。

dotBlockchainの事例

フィリピンでは資金洗浄防止のために銀行口座に身元確認を求めるKYC(Know Your Customer、顧客確認)ルールがある。そこで、フィリピン銀行協会(BAP)とAmihan社では、Blockchain Indyを使ったデジタルなアイデンティティ証明を実験しているという。

フィリピンの事例

事例に続いて、各プロジェクトをBehlendorf氏は紹介した。まずHyperledger Fabricフレームワークは、2017年7月にバージョン1.0を迎え、現在バージョン1.1がリリースされている。

Hyperledger Fabricプロジェクト

Hyperledger SwatoothはFabricの姉妹プロジェクトのようなものだという。2018年1月にバージョン1.0に到達した。コンセンサスアルゴリズムに大規模でもエネルギー商品の低いPoETアルゴリズムなどを採用している。

Hyperledger Sawtoothプロジェクト

Hyperledger Indyフレームワークは、ブロックチェーンによるデジタルアイデンティティに焦点をあてている。

Hyperledger Indyプロジェクト

Hyperledger Burrowフレームワークは、Etherium Virtual Machine(EVM)上で動き、そのコンセンサスアルゴリズムをSawtoothやFabricにも移植されている。

Hyperledger Burrowプロジェクト

ツールのHyperledger Composerは、ブロックチェーンネットワークをすばやく作れる。REST APIを提供し、Angular.jsに組み込むことができる。

Hyperledger Composerプロジェクト

ツールのHyperledger Quiltは、分散台帳間の相互運用のためのプロジェクトだ。NTTデータとRippleがコントリビュートした。

Hyperledger Quiltプロジェクト

最後にBehlendorf氏は、Hyperledgerプロジェクトでは多くのプロジェクトと同じようにTechnical Steering Communityがあること、毎週ミーティングが行われていることなどを紹介した。

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

連載バックナンバー

業務アプリイベント

Money 20/20開催。Wells Fargoの謝罪から学ぶ重要課題は信用という話

2018/12/14
金融業界のカンファレンスMoney 20/20にて、自社のトラブルを引き合いに信用が大切ということを示す異例のキーノートが行われた。
業務アプリ

Money 20/20開催「カンバセーショナルAI」が研究から応用へ

2018/12/13
金融業界の最大のカンファレンスMoney 20/20が、ラスベガスで開催された。銀行の未来からクリプトカレンシー、サイバーセキュリティ、人工知能まで多彩なセッションが開催された。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています