中国企業が目立ったKubeCon Chinaの2日目のキーノート

2018年12月27日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
KubeCon+CloudNativeCon China、2日目のキーノートはほぼ中国語で実施され、中国からの参加者を重視した内容だった。

KubeCon+CloudNativeCon Chinaの2日目、11月15日のキーノートは主に中国の企業が全面に立ったものになった。CaicloudのCOOとCEO、HuaweiのCloud Business Unitのトップ、ライドシェアを手がけるLyftのエンジニアによるユースケース、TencentのPaaS部門のDirectorが演壇に立った。そして再びHuaweiのVPでCNCFのボードメンバーであるAnni LaiとCTOが登壇し、ゲノムシーケンシングシステムにおけるユースケースなどを経て、最後はクラウドネイティブなカスタマーを表彰するという流れでJD.comが表彰された。Lyft以外のプレゼンテーションは全て中国語で、同時通訳で英語を聞くという形式だった。

プレゼンテーションを行うCaicloudのCEOのXin Zhang氏(左)とCOOのJulia Hang(右)

プレゼンテーションを行うCaicloudのCEOのXin Zhang氏(左)とCOOのJulia Hang(右)

CaicloudはKubeFlowを使って機械学習を実装、HuaweiもTensorFlowをエッジ側で稼働させるサーバーレスなKubernetesの事例を紹介した。

HuaweiのエッジにおけるKubernetesの実装例

HuaweiのエッジにおけるKubernetesの実装例

LyftのVicki Cheung氏のプレゼンテーションは、ライドシェアサービスで存在感を出しつつあるLyftのクラウドネイティブなシステムに関する解説となった。

LyftのVicki Cheung氏

LyftのVicki Cheung氏

Lyftのシステムは300種類以上のマイクロサービスで構成され、AWSのEC2のインスタンスが40,000以上稼働しており、その全てがEnvoyの上で実装されているという。EnvoyはLyftが開発し、オープンソースとして公開されたプロキシソフトウェアである。

Lyftのシステム概要

Lyftのシステム概要

当然のように全てがマイクロサービスとして構成されている点は、流石にEnvoyを産んだ現場といったところだ。そんなLyftでも、ひとつのリクエストに対して200以上のRPCが発生するというシステムをモニタリングし、最適に運用するのは難しいという。しかしKubernetesをブラックボックス化させないように、ツールチェインを構成しているという辺りは参考になるのかもしれない。実際にはレガシーなシステムとも連携しているということで、Lyftですらレガシーなシステムとの連携が必要であるという部分は興味深いものだった。

ひとつのリクエストが20から30のサービスを利用する

ひとつのリクエストが20から30のサービスを利用する

Lyftの後は、また中国企業の出番ということでTencentが登壇した。

Tencentのクラウドネイティブの道

Tencentのクラウドネイティブの道

Tencentのプレゼンターが登壇すると、ステージ前にメディアではなさそうなカメラマンが3名も現れて写真を撮影していた。これも、TencentがKubeConのキーノートに登場するということを記録に残すための社員だろうか。

Tencentのプレゼンターを撮影しまくるカメラマンたち

Tencentのプレゼンターを撮影しまくるカメラマンたち

システムとしては、大量のGPUを活用した機械学習などが実装されているという。このスライドではコンピュートノードからトポロジー的に近いGPUを選択して、演算に使うクラスターの紹介がされた。

複数のGPUを効率良く使う仕組みの紹介

複数のGPUを効率良く使う仕組みの紹介

TencentはKubernetesを活用するために、社内向けにKubernetes-as-a-Serviceを開発して利用しているという。この辺は日本のサイバーエージェントと同じ発想だろう。つまり多くのデベロッパーに開放するためには、素のKubernetesでは難しすぎるということだ。

その後に登壇したHuaweiも、遺伝子シーケンスの研究にKubernetesを活用しているというユースケースを紹介した。ここでは、オンプレミスとパブリッククラウドを使い分けて研究を行っているという概要を紹介していた。

Huaweiのユースケース

Huaweiのユースケース

最後にCNCFのChris Aniszczyk氏が登壇し、End User Awardのプレゼンテーションを行った。受賞したのは中国のJD.comだ。これは中国の現況を考えて、ベンダーではなくエンドユーザーにもっと活動してもらいたいというCNCFの意向が強く現れた形となったように思える。TencentやAlibabaなどの中国のインターネットジャイアント以外にも、クラウドネイティブなシステムを使ってもらいたいという強いメッセージだろう。

受賞したJD.comの担当者とCNCFのAniszczyk氏

受賞したJD.comの担当者とCNCFのAniszczyk氏

そして最後の最後に、来年2019年の予定が公開された。

来年のKubeConはバルセロナ、上海、そしてサンディエゴ

来年のKubeConはバルセロナ、上海、そしてサンディエゴ

来年も再び上海で開催されるKubeConだが、今回の内容と併せて、いかにCNCFが中国を重視しているのかという証のようにも思える。実際2日目のキーノートは、1日目よりもさらに中国の企業に多くの時間を与え、中国からの参加者に最大のインパクトを与えることを狙った構成になった。またキーノート以外のセッションも多くは中国語で実施され、英語によるセッションに比べて活発な質疑応答が行われていた。この点から見て、中国語をメインにしたことは正しい選択だったようだ。

以前北京でインタビューしたRed Hatのエンジニアは「中国国内に顧客が存在し、国外に出ていく必要がないため、なかなか英語が身につかない」とコメントしていたが、中国ではやはり中国語のドキュメテーション、そしてコミュニケーションが必要なのだと思い知らされた一日だった。

参考:LinuxCon Chinaで中国人エンジニアに聞いた中国のオープンソース事情

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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