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  インタビュー

日本と諸外国の懸け橋に。音声認識の分野で挑戦を続けるiProspectのグローバルディレクターNate氏が語る、人生のこれまでとこれから

2019年11月29日(金)
望月 香里(もちづき・かおり)

英国・ロンドンに本拠地を置くiProspectは、世界初のサーチエンジンマーケティング代理店として創業され、現在はパーフォマンスエージェンシーとしてデジタル広告の戦略から運用、デジタル技術の開発、ホワイトペーパーの作成、音声認識技術(Voice)のマーケティングにおける運用など、幅広い事業で56か国、94のオフィス展開する企業だ。

中でも、音声認識技術の事業では、Voice市場のインパクトを調査する目的でGoogleと協業してシンガポールにラボを設立、世界初のデータをビジュアライズする音声ポットの開発など、Voice分野での世界的な地位確立を推し進めている。

そのiProspectでこれらの音声認識技術事業のグローバルディレクターを務めるNate Shurilla(以下、Nate氏)は、米国出身ながら流暢に日本語を話し、富山県南砺市の市役所観光課で国際交流員を務めるなど、異彩な経歴を持つ人物だ。シカゴから1時間程にあるウィスコンシン州生まれで、日本への興味は、Nate氏が幼少時代の80年代に関東近辺でボランティアの英語教師をしていた父親の影響によるものだという。

今回は、そんなNate氏の人物像に注目し、波乱万丈な半生について振り返ってもらった(聞き手:Think IT編集部 伊藤隆司)。

iProspect Global Director of Commerce & Voice (音声認識技術) Nate Shurilla氏

― 来日のきっかけを教えてください。

幼少時代はウィスコンシン州で育ちましたが、大学は自然豊富なユタ州へ行きました。都会の刺激を求めていたことと、日本に行ってみたかったことが重なり、ボランティア団体に入ったのです。向かった先は山形。父親の影響で日本の言葉は少し分かる程度でしたが、昨日覚えた単語をその日の会話の中に無理やり入れるなど、楽しみながら日本語の習得に励みました。山形人の親切さや勤勉な部分に触れ、日本がより好きになりました。日本人の親切で勤勉な部分に魅了され、アメリカの大学を卒業後、覚えた日本語を活かしたいと渡日を決意しました。アメリカから日本へ渡日する方法として選んだのは、JETプログラムの国際交流員(CIR)。日本に来てからは富山県南砺市で様々なまちづくりに関わりました。自然豊かで食べ物も美味しく、人も優しかったのですが、自分以外に若い人が少なく、どこか違う場所を求めていた時、自分は国際ビジネスがしたかったことを思い出し、1年間の JETプログラムの任期を終え、知り合いが働いていた東京のプログラミング開発会社で働くことにしました。

― プログラミングはいつ頃学んだのですか?

高校から大学にかけてです。言語は色々で、 初めは Visual Basicを学びました。HTML、CSS、Webデザインと学び進み、最後はJavaを学びました。大学では天体物理学を専攻し研究も好きでしたが、「日本語が使えて人と接する仕事がしたい」という思いが強くなり、政治かビジネスの道に進みたいと思っていた時、会計プログラムの授業を受け、経営や会計を学んでいる内にビジネスを面白いと思うようになりました。

― プログラム開発会社では、主にどのようなお仕事をされていたのですか?

初めの1ヶ月はJavaの仕事をしました。仕事は順調で、どのような国からでも依頼を受けられるように社長が外国人を新規に14名(社員数は計20名)も採用しましたが、採用された外国人たちはプログラミング未経験だったため、その会社は1ヶ月で閉めることになってしまいました。私が会社を辞めるとき、そのことを聞きつけた、月に一度マーケティングのコンサルタントをしていた方から「ぜひうちに来て欲しい。日本の文化まで理解している君は素晴らしい人材だ!」と熱烈なオファーがあり、その誘いを受けることにしました。社員4名のベンチャー企業で、オフィスは背中合わせで座るような狭いところでしたが、半年間はAdobeのホワイトペーパーやWebサイトの記事執筆や運営など、コンテンツでユーザーを集客し、Webサイトに来てもらうコンテンツマーケティングの仕事をしていました。

そんな時、「集客も大切だけど、ユーザーがWebサイトに来てから『買うまで』や他の記事を読んでもらうための仕掛けも大切だ」と感じ、社長に「分析や最適化をやってみたい」と直談判しました。「お金になるならやっても良いよ」という社長の声で、自発的にセミナーに参加したり記事を熟読したりなど、独学でWebサイトの分析方法や最適化を学びました。その後、世界シェア第2位のVWO(Visual Website Optimizer)のABテストを受け、日本でもVWOが販売できるように交渉しました。社員4人のベンチャー企業ではセールス量も少なかったためソフトバンクと業務提携して、インドから仕入れたサービスを自社でコンサル・サポートし、ソフトバンクが販売するという流れを創出しました。

事業は波に乗りましたが、給料体系は年功序列型でした。成果を上げても給料が上がらない環境でいろいろと転職などを考えたのですが、iProspectなら自分の得意分野である分析や最適化の仕事ができると思い、就職試験を受けました。後から聞いたのですが、採用の際にエージェントを通していない私に対して社内で議論になったそうですが、渡辺大吾COOの熱烈なオファーのおかげで採用に至ったと聞きました。

― 波乱万丈でしたね。iProspectでのお仕事内容を教えてください。

iProspectは世界56ヶ国でグローバル展開しているデジタルパフォーマンスエージェンシーの1つです。入社後、すぐにクライアントのWebサイト最適化を担当しました。半年間の試用期間で2回昇進し、肩書きはアソシエイトアナリストからコンサルタント、最終的にHead of CRO & Analyticsになりました。様々なクライアントに分析やABテストを行ったり、シンガポール・中国・台湾のiProspectの最適化サービスやABテスト、事業の立ち上げに携わりました。

入社半年ほどが過ぎたころに「今後はeコマースが重要になってくる」と感じていました。自社は広告領域ではFacebookなどのペイドソーシャルやGoogleなどのペイドサーチやプログラマティック広告をメインとしていましたが、Amazonや楽天も大事なタッチポイントなのにeコマースの最適化を誰もやっていないことに気づき、率先して情報収集し、様々な会社とパートナーシップを結ぶなど、eコマース事業やサービス開発に携わりました。

また、同時期にAPACの社長が変わり、元Googleの女性が入社したことで、私のやっている仕事の重要性を認めてくれた彼女が、APACのリーダーシップチームに招待してくれました。APACチームの拠点はシンガポールにありますが、私は住みやすく大好きな日本に居たいと考えていたので、日本・韓国・香港・台湾など南北アジアのコマースとアジア全体のイノベーションに尽力しました。

銀座のiProspect Japanオフィス内を背景にポーズを取るNate氏

iProspectはもともとサーチマーケティングの会社です。SEMやSEOなどのサーチマーケティングに目が行きがちですが、eコマースをメインに現地のチームトレーニングや海外でのイベントで講演などする中で、「検索」の今後を見据えたとき、「音声認識対策の必要性」を感じ、再び独学で勉強を始めました。Voice体験アプリの開発など、コマースと音声認識の業務に携わり、いずれの領域でも最先端はアジアであることから「中国や東南アジアの近状を聞きたい」とアメリカやヨーロッパから相談が来るようになり、現在はグローバルディレクターとして仕事をしています。

iProspectのグローバルな業務内容としてはツール開発やイノベーションの印象が強いです。iProspect Japanは、電通グループの中にあり(編集部注:iProspectは2004年に英国に本社を構えるAegis Mediaの傘下に入り、2013年には電通によるAegis Mediaの買収により電通グループの一員となった)、デジタル広告とオウンドの全体戦略から運用まで一気通貫で提供しています。テクノロジーを活用することで、さらに効率を上げ作業環境を変えていくことができると思っています。

― 日本と海外の働き方について、どのように感じていらっしゃいますか?

海外では、確かに最初はバグが起きたりでうまくいかないこともありますが、トライアンドエラーを行いながら、これまで人力で行なっていた業務もテクノロジーを活用してみようと、考え方がとても柔軟だと感じます。人海戦術でない働き方に変化させていくためには、企業側の捉え方や考え方が柔軟でないと進んでいかないと思っています。シンガポール・ベトナム・ミャンマーは積極的にトライアンドエラーをし続けたことが、いまの日本との差を生んでいると推測しています。

日本は、新しく何かを始めることや成功事例のないことに対し、保守的な傾向がありますよね。iProspect Japanでは積極的に新しいことへチャレンジすることを推奨しています。中国やアメリカでは差別化するために、誰もやったことのない新規事業をやりたがります。 もちろん失敗はありますが、その分成長もできます。 スカンディナヴィアの方では「すごいことをするのは良いことだが、自慢し、他の人を悪い気持ちにさせるのは良くない」という「自慢する人達を出る杭のように打つ」という考え方があります。そちらの方が「出る杭は打たれる」という日本の考え方よりも人のためになるのではないかと思っています。

海外とのやりとりが増えてくるであろういま、テクノロジーを取り入れたイノベーション改革を諦めてしまったら、日本としての進歩もないと感じています。人が疲弊しながら働くことのないよう、テクノロジーをうまく活用して働く「エバンジェリストの立場」として思うことは、高度経済成長期のハングリー精神は、今の日本人にも受け継がれていると信じていて、もう一度その闘志を蘇らせたいと思っています。

― 日本人よりも日本人らしいですね! お話を伺っていく中で「常に挑戦していく」という印象を受けたのですが、ご自身の生い立ちの中で、いつ頃その精神が培われたと思いますか?

自分が積極的になったきっかけは、社員4人のベンチャーにいたときだと思います。最初は社長の指示で動いていましたが、ビジネスの根本や会社のことを考えると、新しい領域を開拓するためには自ら動く必要があると感じ、社長に様々な提案をしました。先ほどもお話しした「お金になるならやっても良いよ」という社長の後押しのおかげで、私は変われたと思っています。

英語で、起業家を「アントロプレナー」、企業内起業家を「イントロプレナー」と言います。私は、日本の企業内で社内新規事業の開発や立ち上げを推進するイントロプレナー起業家の創出を望んでいて、それがイノベーションラボ(編集部注:新たなデジタルエコシステムに対応するためにVoiceやニューロサイエンスなどの新しいテクノロジーを活用したマーケティングアプローチを調査・研究・企画・開発するために設立されたラボ)を立ち上げた理由の1つでもあります。

また、上司や会社との相性を大切にして欲しいと思います。日本は「伝言のみ」など、行き来するコミュニケーションの少ないことが働きにくさの原因のように感じます。お互いがそれぞれの強みややりたいことを尊重し、歩み寄ることで、皆が和解・妥協できる新しいアイデアがまとまることもあるものです。

日本をこよなく愛し、常に日本のことを憂慮するNate氏は日本人よりも日本人らしい

― これまで、日本は「アジアの盟主」と自負していたところがあると思いますが、実際のアジアから見た日本はどうですか?

日本はしっかりしているイメージがあります。日本以外のアジアはすごく革新的ですが、出来上がりの質が良くない部分もあります。また、多様性の話になると、日本がアメリカのようにならなくてはいけない訳でもなく、素敵な街やものづくりなど「職人技」の部分では日本はとてもレベルが高いと思います。傾向として、半年や1年など短い期間で結果を急ぎがちなので、長い目で捉える余白も大切だと感じています。

― 世界では、競争力の低下が著しい日本をビジネスパートナーとして見ない傾向にあるように思いますが、いかがですか?

日本人は対外国人となると、英語が話せる人が少なく、他の文化への理解が浅いなど、卓越した技術やプロセスがあったとしても、それをうまく伝えきれずに商談が成立しないことが多々あるように思います。日本語も英語も話せて、日本を含む諸外国の文化も理解している私は架け橋になれるので、自分にとっては素晴らしいチャンスだと思っています。

― 最後に、これから起業したい、独立したいと考えている人たちに向けて、メッセージをお願いします。

失敗を恐れずに今すぐに挑みなさい! 共に仕事をしている同僚からの私の評価は「会社の指示待ちでなく、独自に調査したデータを基に様々な提案をしてくるなど、働き方や仕事に向き合う気持ちが違う。話のセンスもあり、エバンジェリストにとても向いている」と聞いています。また、私自身が今のポジションに至った理由としては、事前に良い仕事をしておくことで、良い給料や良き機会が降りてくると信じ、自発的に分析や開発をする「ハードワーカーであったこと」と「自分の個性を認めてくれた上司がそばにいたこと」がすごく強かったのではないかと感じています。

日本人のスーパースターが少ない原因は、ぼーっとできる時間が少ないことにあると思います。余白の時間がないと、ひらめきは起こりにくくなります。 ぜひ、日本から、これまで以上にアントロプレナーとイントロプレナーが創出されてくることを願っています。

― ありがとうございました!

* * *

Nate氏の言葉には、自ら学び続けてきた経験が醸し出され、血が通っていると感じた。国や社会だけでなく「個人のGDP」をおのおのが磨いていくことが、社会全体を磨くことになることを、Nate氏を通して再認識した。日本のことを大切に思ってくれているNate氏へ「ありがとう」を伝えるとともに、今後の活動も応援していきたいと思う。

著者
望月 香里(もちづき・かおり)
元保育士、現マッチングサイト登録のベビーシッター。駆け出しライターとの二刀流フリーランス。ものごとの始まり・きっかけを聞くのが好き。2018年3月、映画『いただきます~みそを作るこどもたち~』自主上映会の企画・主催を機に、自分が大切にしたい・おもしろいと思う事などを不定期で開催するなど、イベントプランナーもこなす。
ブログ:https://note.mu/zucchini_232

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