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「きちんと日本語」から始めよう。誰でもできるスムーズに英語を学ぶ基礎作り

2020年8月12日(水)
山口 秀子(やまぐち ひでこ)

はじめに

「英語は難しい」「文法が分からない」と悩む人はとても多いです。日本人の英語習得のハードルを高くしている原因の1つが「日本語と英語の違い」です。この日本語と英語の違いを理解することから始めれば、英語学習への第一歩がとても踏み出しやすくなります。

例えば、サッカーのルールしか知らない人が、いきなり野球をやろうと思っても、「ボールを投げる」や「グローブをつける」などの基本的な野球のルールが分からず、ひたすらボールを蹴ろうとしてしまい、野球になりません。

同様に、日本語と同じ感覚で英語を使おうとしても、様々なルールの違いが邪魔をして、なかなかうまくいきません。

そこでおすすめなのが、日本語の癖を知り、その使い方を見直すことから始めてみることです。まず日本語をきちんと使えるようになることで、英語の文法・文型が分かりやすくなるのです。

今回は、この日本語と英語の違いについて見ていきます。

日本語と英語の違い~2つの癖~

日本語でのコミュニケーションに慣れてしまっている私たちには、自分でも気づかない「癖」が身についています。この癖を意識し、直していくだけでも、頭の中で英語の文を作りやすくなります。ここでは、数ある日本語の癖の中から2つ紹介しましょう。

日本語の癖① 主語が抜ける

日本語では「私は」「あなたが」「彼らは」と主語をつけて文を作ることはめったにありません。しかし、英語の文は必ずI、You、Theyなどの主語から始まります。これが1つ目の大きな違いです。

例えば、日本語では、話している相手が「お腹が空いた」と言えば、『その人のお腹が空いたんだな』と分かります。(英語では、I am hungry.) または、赤ちゃんを抱っこしているお母さんが「お腹が空いたみたい」と言えば、『赤ちゃんのお腹が空いたんだな』と推測できます(英語ではThe baby is hungry.)。

このように、日本語では主語がなくても、大抵の場合は誰のことを話しているのか分かります。これは「察し合う」という日本語コミュニケーション独特のルールも影響しています。

しかし、英語ではこのルールが通用しません。“hungry”だけでは文が成り立たず、「誰が?」を示す主語が必要です。また、英語では「聞き手が察する」ことよりも「話し手が伝える」ことの方が重視されるため、曖昧な表現や伝え方は好まれません。

特に、ビジネスの場面では話し手本人の意見には主語“I”を、会社や組織の代表として意見を述べている場合は主語“We”を使うため、主語の使い方ひとつでメッセージに大きな違いが出てきます。

普段日本語で話す私たちは「意識して主語を使わない」という癖があることを覚えておきましょう。

日本語の癖② 目的語が抜ける

同様に、文中で「何を?」を意味する目的語が欠けるのも日本語の特徴です。

例えば、話し相手が「昨日は楽しかったね。また行きたいね。」と言えば、聞き手は『何が楽しかったのか?』『どこにまた行きたいのか?』が分かる場合が多いです。

しかし、どちらの文も『誰が?』を指す主語だけでなく『何が?』『どこが?』を指す目的語も抜けています。

英語では、主語と同様に目的語がないと意味が通じません。上記の日本語を英訳して“enjoyed. want to go again.”と言っても、文として成り立っておらず、他人がこの会話を聞いても何について話しているのか、全く分かりません。

例えば「昨日は、私たち(主語)買い物をして(目的語)楽しかったね。また私たち(主語)、コストコに(目的語)行きたいね。」のように主語と目的語を入れることで誰が聞いても話の内容が明確になります(英語ではWe enjoyed shopping yesterday. We want to go to Costco again.)

このように、目的語がない文を作ってしまうという日本語独特の癖があることも覚えておきましょう。

まずは「英語に訳せる日本語」を目指そう

主語・目的語が抜けることが多い日本語を英語に訳すことはとても大変です。筆者も様々な場面で通訳・翻訳をしてきましたが、曖昧な表現の多い日本語を話す方の通訳をする際にはとても苦戦しました。

できる限り話者の言いたいことを察しながら訳していましたが、どうしても分からないときは間違ったことを伝えてしまったら大変なので、「何についてお話しされていますか? (主語は何ですか?)」と確認しながら訳したこともあります。

また、日本語の歌詞の英訳をした際には「会いたいよ」なんて歌詞があると、主語も目的語もない…と思いつつ「あなたに会いたい」という意味だと信じてI miss you.と訳したりしました。

このような経験から言えることは、英語を勉強することも大切ですが、まずは主語と目的語がきっちり入った「英語に訳せる日本語」を意識することが最初の一歩としては非常に重要です。

もし通訳をお願いすることがあっても「誰が?」「何を?」という情報がきちんと入った日本語を話すことができれば、通訳を通してでも誤解のないコミュニケーションを取ることができます。

「きちんと日本語」をマスターしよう!

主語・目的語が抜けることの多い日本語と同じ感覚で英語を話そうとすると、なかなかうまくいきません。そのため、まずは主語と目的語が入った「きちんと日本語」を練習していきましょう。

下記の文を見てください。

「昨日はセミナーに参加しました。
初めて参加したけど、とても勉強になりました。
おすすめです。」

この文に主語と目的語を入れてみましょう。どのようになるでしょうか? 日本語の先生になったつもりで考えてみてください。

例えば、このような主語と目的語が入ると考えられます。

「昨日、私は()セミナーに参加したよ。
は()セミナーに()初めて参加したけど、とても勉強になったよ。
そのセミナーは()あなたにも()おすすめです。」

「誰が?」「何を?」と考えながらら主語と目的語を入れてみると、この様になりました。

あくまでも想像なので、自分も含む数名でセミナーに参加した場合は、①は「私たちは」かもしれません。また、話し相手ではなく、ある男性にセミナーをおすすめしたい場合は⑤は「彼にも」かもしれません。

文中で何度も「セミナー」という言葉を繰り返すのは不自然なので、本来であれば③④は「それ」(英語ではit)のような代名詞を使って表します。

このように主語・目的語が明確でない文は、その場で話を聞いている人にしか分からない情報が多く、下手に推測されてしまうと間違った意味で伝わってしまう可能性もあります。

主語・目的語はとても大切な役割を持っているので、普段日本語を使う時に意識してみましょう。

とはいえ、日本語でいちいち主語や目的語を入れて話すと、なんだか話し方がくどくなったり、不自然になる場合もあるので、臨機応変に使い分けましょう。

ポイントは「きちんと日本語」を意識することで、「どうやったら相手に伝わりやすいか?」を考えながら話すことです。そうすると、自然と説明できるようになります。

それこそが、日本語と英語に共通する大切なコミュニケーションの基本です。

きちんと日本語の練習問題

それでは「きちんと日本語」の練習をしてみましょう。下記の文に必要に応じて主語・目的語を入れて、通訳を通しても間違いなく意味が伝わる文に修正してください。日常生活で使われる曖昧な文が多いので、創造力を働かせて「きちんと日本語」にしてみましょう。

① 英語は難しいと思います。
② 週末は忙しかったので、疲れました。
③ 昨日はありがとうございました。
④ 明日までにお願いします。

さて、どのような文になったでしょうか? 例えば、こんな文にできるのではという修正例を紹介します。

①英語は難しいと思います。
私は英語は難しいと思います。/私たちは英語は難しいと思います。

主語がないので、「これは誰の意見なのか」が分からないですね。話し手だけがそう思っているのなら、主語「私は」が入ります。話し手が複数の同意見の人を代表して話している場合は、主語は「私たちは」になります。

②週末忙しかったので、疲れています。
私は週末忙しかったので、私は疲れています。/私たちは週末忙しかったので、妻は疲れています。

忙しかったのは、そして疲れているのは誰なのかが分かりません。どちらも話し手だけなのであれば、主語は「私」です。

もし夫婦で何かをして忙しく、妻だけ疲れてしまったという場合は、最初の文の主語は「私たち」、次の文の主語は「妻」と2つの文の主語が別々である可能性もありますね。

③昨日はありがとうございました。
→ 昨日は会議へのご参加ありがとうございました。/昨日はお電話をいただきありがとうございました。

これは日本語ではよく使われる文ですが、「何に対して感謝しているのか」が分かりません。具体的に「会議に参加してくれたこと」や「電話をくれたこと」など、感謝している内容も含めて伝えると良いでしょう。

④明日までにお願いします。
→ 明日までに資料の確認をお願いします。/明日までに会議室の予約をお願いします。

これも日本語でよく使われる文ですが、「何をお願いしているのか」が分からず、私自身も明日までに何を完了したら良いのかと確認することが良くあります。「資料の確認」なのか、「会議室の予約」なのか、具体的にお願いしたいことをしっかり述べ、誤解のない様に伝えることが大切です。

このように、日頃無意識で使っている日本語の文でも、少し意識をするだけでより伝わりやすい文にすることができます。そして、それが英語を学ぶ際にとても大切な土台となります。

「きちんと日本語」を意識して
英語習得の基礎を作ろう

日本語でも英語でも、伝えたいことをしっかり伝えることがとても大切です。そのための第一歩として、まずは「きちんと日本語」を日々の生活で意識することで、言葉の使い方に敏感になることから始めてみてはいかがでしょうか。

例えば、新聞や雑誌を読んでいるときに「この文は主語がないな、これは誰の意見なのか」など、少し疑ってみることから始めると、徐々に自分が話したり、書いたりする際にも、そのような点を意識できるようになってきます。

「きちんと日本語」ができるようになれば、英語の文法や文型をスムーズに理解するためのベースができます。

英語を学ぶのはハードルが高いけど、日本語なら、すぐに取り掛かることができます。まずは日本語の使い方を見直し、日本語を鍛えて、しっかり英語習得の土台を作っていきましょう。
著者
山口 秀子(やまぐち ひでこ)
株式会社グローレン
株式会社グローレン マネージャー。学生時代、ガーナに1年間留学。外資系自動車メーカーにて、南アフリカへの2年の駐在やグローバルプロジェクトのPMO、役員通訳を勤める。日系商社にて海外メーカーとの取引・交渉も経験。現在は、ビジネス英会話等のレッスンカリキュラム・教材作成を担当し、オンライン学習プログラムMOVAEICを企画・運営。TOEIC985点。

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