思ったことを英文にできない英語学習者におすすめの勉強法 ―瞬間英作文
はじめに
日本語では伝えたいことが一杯あるけれど、英語にしようとすると単語や表現の直訳が分からなくて止まってしまったという経験はありませんか。頑張って話そうとしているのに、日本語の文を英文に変換できないと、もどかしく、悔しい思いをしますよね。さらに、それが続けば自信を失い、「自分は英語には向いていないのでは」と感じてしまうかもしれません。
しかし、そのような心配は無用です。語彙や基礎文法の学習に加え、今回紹介する「瞬間英作文」を実践することで、思っていることを素早く英文にできるようになります。
この瞬間英作文は、多くの英語講師や英語学習者にも効果が認められている勉強法です。「思い通りに英語が話せない」という方は、ぜひ、この瞬間英作文を実践いただければと思います。
瞬間英作文の方法
瞬間英作文のやり方はとても簡単です。「瞬間的に日本語の文を参考に、英文を作る」だけです。
例えば、下記の文を英語で伝えたいとしましょう。
「打ち合わせを金曜日に延期したい」
瞬間英作文は、例えば「1文を5秒以内に英語で言う」と決めて行うようにしましょう。書くと時間がかかるので、口頭で行います。
最初のうちは時間オーバーになってしまったり、単語や表現が分からずに止ってしまったりします。しかし、重要なのは諦めずに瞬間英作文の練習を「習慣化」することです。1日に10~20の日本語文を決めた秒数内で英文にする練習を毎日行いましょう。間違っていても構いません。その時点で作れる最高の文を作れたらそれで良しとします。
また、分からない単語や表現があることは当たり前なので、その時点で思いつく英単語や表現を入れます。これらの分からない単語は後でじっくり調べて、単語力の強化に繋げましょう。自宅で学習する際は、日本語訳が付いている瞬間英作文用の教材を探し、それを使って学習することをおすすめします。
また、外出先で学習する場合、教材を持って出なければ瞬間英作文の練習を行うことは少し難しい場合もありますが、街中で目に飛び込んでくる映像を瞬時に頭の中で英文にするというやり方も効果的です。
瞬間英作文の方法をまとめると、次のようになります。
- 日本語の文を決めた時間内(5秒等)で瞬間的に口頭で訳す
- これを1日に10~20の日本語文で毎日行う(出来ればこれを1セットにして数回行う)
- 瞬間英作文の練習には、手元にある日本語訳のある英語教材を使う(新たに瞬間英作文用の教材を購入しても良い)
- 外出先で教材がない場合は、街中で目に飛び込んでくる景色や人物、物を表す文を瞬時に作る
最初は難易度が高く感じるかもしれませんが、少しずつ慣れてくるので、継続して行うようにしましょう。
瞬間英作文の効果
瞬間英作文から得られる効果は多くあります。その中でも、特に次の2点が英語を話せるようになる上でとても重要です。
効果1「思ったことを瞬時に言葉にできるようになる」
英語に限らず、会話をする際にとても重要となるのは、相手の発言に如何に素早く反応できるかです。
2人の会話であれば、多少反応が遅れても、優しい人であれば待ってくれます。しかし、複数人の会話ではどうでしょう。誰かの発言にあなたが何かを言おうと思っても、話し始めるまで何秒もかかってしまったら、会話に参加している他の人が先に反応してしまうでしょう。瞬時に反応できないままでいると、いつの間にか会話から取り残されてしまいます。
私の経験上、日本語の会話よりも、英語の方が次から次へと積極的に発言する人が多いと思っています。よって、とにかく素早く自分の言いたいことを英文にして、瞬間的に言う必要があります。瞬間英作文ができるようになれば、より会話に参加しやすくなるのです。
効果2「情報を伝えることに意識を向けられるようになる」
後述する「瞬間英作文のポイント」でも触れますが、瞬間英作文を練習すると、英文を作る際に「何が大切か」が分かるようになります。
学校の英語の授業では、日本語の文があり、それを英訳するという練習を何度もしてきたと思います。その際は日本語を直訳出来なければ正解にならず、点数を落とすことになります。この経験から、英語を勉強している多くの日本人は、文を作る際に「如何に日本語の文を英訳するか」という点を意識して英作文をするようにしています。
しかし、瞬間英作文を行うと、英作文で重要なことは「文の形を訳すのではなく、伝えるべき情報を意識して英作文する」ことだと気付くのです。
この2つの効果は、英会話をする際にとても重要です。瞬間英作文の学習によりこの2つの効果が生み出され、結果的に英会話力の向上に繋がります。
瞬間英作文のポイント
瞬間英作文を行う際に意識すべきポイントは、下記の3点です。
- ポイント1:速度重視で文を作る
- ポイント2:文ではなく伝えるべき情報を考えて英作文を行う
- ポイント3:同じ日本語文を何度も英作文する
ポイント1「速度重視で文を作る」
瞬間英作文は、英会話ができるようになるための勉強法です。よって、スピード感がとても重要です。文法等の正確性を高めるための英作文の練習には、瞬間英作文ではなく、時間をかけて文を書きながら正確性を確認すると良いでしょう。
繰り返しになりますが、瞬間英作文は、英語を主に会話で使えるようにしたいという方におすすめの勉強法です。スピード重視で、口頭で英文を話すことを意識しましょう。
ポイント2「文ではなく伝えるべき情報を考えて英作文を行う」
前述の「瞬間英作文の効果」で少し触れましたが、英作文をする際に、特に中級者くらいまでの方は、日本語文を直訳しようとする癖がついている傾向にあります。しかし、日本語のプロが作る文に登場する単語や表現、文章構文を一語一句英訳することは現実的ではありません。
また、そもそも直訳が出来ない、または直訳が極めて難しい単語や表現も存在します。これは、文化的な背景の違い等の理由によるものです。
では、どうすれば良いのでしょうか。それは、日本語文を一語一句訳すことに頼り過ぎず、伝えるべき情報が何かを理解し、それを自分が訳せる単語や表現を使って伝えるようにすれば良いのです。
例えば、冒頭で登場した「打ち合わせを金曜日へ延期したい」という文を見てみましょう。冒頭では、I want to postpone the meeting to Friday.と訳しました。
しかし、もし「延期する」という意味を持つpostponeが分からない場合どうなるでしょうか。I want toで止まってしまいます。ここで思い出して欲しいのは、英作文、さらに言えば英会話は「文の形よりも情報を正しく伝えるほうが重要」という点です。つまり、postponeという単語を使わなくても、何らかの形で「延期する」という情報が伝われば良いのです。
この文では、reschedule、put off、change the date等を使えば、その情報を伝えられます。
ポイント3「同じ日本語文を何度も英作文する」
瞬間英作文は、瞬時に英語で情報を伝える練習ができます。しかし、何事も1回行うだけでは記憶に残りません。前述の教材を使った1日10~20の文で練習する場合、同じものを1日朝昼晩合計で3セット行ったり、数日おきに同じものを復習として3~4回行うと良いでしょう。これにより、その文が記憶に残り、似た文が登場した場合でも応用できるようになります。
ただし、外出先で、目で見たものについて瞬間英作文を行う場合は、1回のみでも問題はありません。
おわりに
最初は、瞬間英作文を上手にできないことも十分に考えられます。瞬間的に文を作ろうとしても、いつの間にかじっくりと考えてしまっているということもあります。
しかし、今回紹介した瞬間英作文の方法や効果、ポイントを思い出しながら、例えば時間を計って行う等をしていくうちに、少しずつ時間をかけずに英文を作れるようになってきます。これを習慣化しつつ、同時に単語や表現を増やす、また文法の見直し等も行えば、必ず会話に役立つ英語力を身につきます。
ぜひ、皆さんも、この瞬間英作文のトレーニングを試してみてください。