音読のススメ― 真似するだけで英語力アップ! 楽しく学べる勉強法

2021年1月20日(水)
山口 秀子(やまぐち ひでこ)

はじめに

今回はおすすめの英語勉強法である「音読」について解説します。英語の勉強というと、まずは単語を覚えることや文法を学ぶことを思い浮かべるかもしれません。基礎知識の学習は大切ですが、それに加えて「音読(英語を口に出して読む練習)」を行うことで、「英語を話せるようになりたい」という目標に確実に近づくことができます。

さらに、音読は「話す」「聞く」「読む」「書く」の4技能を総合的に伸ばすことができる勉強法でもあります。小学生も国語の宿題として音読を行ったり、脳トレ目的の大人向け音読本も増えていたり、音読の効果は様々な観点から注目されています。

今回は、英語力アップのための音読の重要性と方法を紹介します。動画も用意しているので、動画を見ながら音読に挑戦し、日々の勉強にも取り入れていきましょう!

音読をおすすめする理由とその効果

「英語を聞き流せば、聞き取れるようになる」という学習教材がありますが、効果はあまり期待できないだろう、というのが筆者の意見です。人間は「自分が発音できない音は聞き取れない」という法則があるからです。

英語を聞き流すだけ・黙読するだけでは「発音する練習」ができないので、聞き取れるようにはなりません。そしてもちろん、発音する練習をしなければ、英語を話せるようにもなりません。

英語には日本語にはない発音が多くあります。また、英語特有の音の変化があるため、単語のスペルは知っているのに、聞いても聞き取れない、ということもあります。

音の変化の例として、下記のようなものがあります。

  • 【音の繋がり】
    get upは「ゲット アップ」ではなく、getup「ゲタップ」と発音する
  • 【音の省略】
    get thereは「ゲット ゼア」ではなく、gether「ゲゼア」と発音する

音の変化の詳細については、第11回で詳しく解説しています。英語を話し、聞き取れるようになるには、英語を声に出して読む練習をする「音読」がとても効果的です。

さらに、音読には英語を読む力、書く力を鍛えるステップも含まれているので、話す、聞くと併せて4技能をバランスよく総合的に伸ばすことができるというのもおすすめの理由です。

それでは、音読のやり方を5つのステップに分けて見ていきましょう。

音読の方法:5つのステップ

音読は、まずは短い文から始め、徐々に長文に挑戦するのがおすすめです。今回は、下記の2文を音読してみます。

I spoke with our chief engineer yesterday. He assured me that the software will be ready on schedule.

動画でも各ステップの進め方を紹介しているので、ぜひ動画を見ながら一緒に音読していきましょう。

Step 1. 文の意味・文法を理解する

最初に、文中の分からない単語に印をつけ、意味を調べます。そして意味のかたまりごとにスラッシュを入れて、文法を確認します。

例えば、assuredという単語が分からない場合、オンライン辞書(Weblio)等で調べて「保証する」という意味であることを確認します。

次に、意味のかたまりごとにスラッシュを入れて文を区切り、主語「誰が」と動詞「何をした」、その他の追加情報を確認します。

例えば、下記の位置にスラッシュを入れると、文法を理解しやすくなります。

I spoke / with our chief engineer /yesterday. / He assured me / that the software / will be ready / on schedule. /

最後に、かたまりごとに文の意味をしっかりと確認し、理解します。

I spoke:私は話しました(主語+動詞)
with our chief engineer:主任技術者と
yesterday:昨日

He assured me:彼は私に保証しました(主語+動詞)
that the software:ソフトウェアは
will be ready:準備が整うだろうと
on schedule:予定通りに

意味の分からない文を音読しても、効果はあまり期待できません。文の意味をしっかり理解してから音読に取り組むことがとても大切です。

Step 2. 音源を聞いてから読む

英文を見ながら、音源を聞きましょう。音源を聞く際には、音の変化(音の繋がり・音の省略)を確認します。

1度音源を聞いた後は、声に出して読みます。スムーズに読めるようになるまで、何回かこれを繰り返します。

Step 3. 音源に合わせて読む

次に、音源に合わせて読む「シャドーイング」と「オーバーラッピング」を行います。

シャドーイングは、音源を聞きながら、音源の後を影のように追いかけながら読む方法です。聞こえた音をすぐに発音する、というイメージです。シャドーイングを行うことで、発音を真似し、強弱やリズムを身につけることができます。慣れてきたら、音に集中するために、紙を見ずに行ってみましょう。

オーバーラッピングは、音源と同時に読む練習です。自分の声が音源と一体化して聞こえるように、スピードについていく必要があります。そしてシャドーイングと同様、発音・抑揚も音源の真似をすることを意識します。

Step 4. 音読筆写

続けて、英文を書きながら発音する「音読筆写」を行います。短い文の場合は全文、長文の場合は読みにくい文を1つ選んで音読筆写しましょう。

文字を綺麗に書く必要はなく、「自分だけがなんとか読めるかな?」くらいの感覚で、文字を書きながら声に出して読みます。これを5回ほど繰り返すと、読みにくかった文がスラスラと読めるようになります。

Step 5. 速読

最後に、音源のスピードよりも速く、早口で英文を読む「速読」を行います。通常よりも速いスピードで読む練習をすることで、普通のスピードで読むことが楽に感じるようになります。ここでは抑揚・強弱は気にせず、とにかく速く3回英文を読みましょう。

速読の後に通常のスピードで読んでみると、口がスムーズに動く感覚を実感できると思います。

以上、音読の5ステップを紹介しました。どれも大切なステップなので、確実にできるようになったと感じるまで繰り返し行ってから、次のステップに進むようにしましょう。

音読におすすめの参考書

音読を行う際は、必ず音源がある英文を使うようにしましょう。そして、音読する英文を選ぶポイントは、最初に音源を聞いたときの理解度が60~70%のものを使うことです。「少し難しいな」と感じる英文を使うことで、単語や文法の学習をしながら、スキルアップのための音読練習ができます。

本格的に音読に取り組む場合は、音読に特化した参考書を使うこともおすすめです。どんな場面で英語を使いたいのかによっても選ぶ参考書は違ってくるので、ここではおすすめの2冊を紹介します。

●日常会話のための音読におすすめの参考書
1分間英語で自分のことを話してみる
自己紹介や仕事・趣味について話す例文と音源が収録されています。英語を話す上で、まずは自分のことを伝えられるようになるのはとても大切です。すべて1分以内で読める文なので、毎日気軽に音読に取り組むことができます。英語学習初心者におすすめです。

●ビジネス英語のための音読におすすめの参考書

英語 徹底耳練!
オフィスでの同僚・上司との会話やプレゼンテーションなど、ビジネスの場面の例文と音源が収録されています。実践的な英文を通して、様々な単語・表現を学びながら、音読練習ができるので、ビジネス英語を上達させたい方におすすめです。

この2冊以外でも、すでに音源付きの参考書をお持ちの場合は、その中の英文を使って音読を始めてみるのもOKです。その他にも、好きな海外ドラマや映画を字幕付きで見て、ある場面を再生・停止・巻き戻しを繰り返しながら音読するのも楽しいですよ。

おわりに

ピアノを弾けるようになりたい人が楽譜を眺めていても上手くならないように、また、サッカー選手になりたい人がサッカーの試合を見ていても上達しないように、英語も読むだけ・聞くだけでは話せるようにはなりません。

間違えながらも指を動かしてピアノを弾くこと、そしてサッカーボールを蹴って走り回ることが大切なのと同じで、英語力を伸ばすためには、お手本を真似しながら、声に出して英語を読む練習が欠かせません。

音読は、最初は難しいと感じるかもしれませんが、慣れてくれば、ただ黙読する・聞くという受け身の勉強法よりも、楽しく行うことができます。

音読を続ければ確実に英語力は向上します。例えば、「毎日15分音読する」と決めて、継続して習慣化すれば、確実に英語力が伸びていることを実感できること間違いなしです!

著者
山口 秀子(やまぐち ひでこ)
株式会社グローレン
株式会社グローレン マネージャー。学生時代、ガーナに1年間留学。外資系自動車メーカーにて、南アフリカへの2年の駐在やグローバルプロジェクトのPMO、役員通訳を勤める。日系商社にて海外メーカーとの取引・交渉も経験。現在は、ビジネス英会話等のレッスンカリキュラム・教材作成を担当し、オンライン学習プログラムMOVAEICを企画・運営。TOEIC985点。

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