「一歩上の英語」を目指す学習者のための丁寧な表現
はじめに
英語はフレンドリーな言語で、目上の人にも対等な話し方をする印象を持っている人も多いのではないでしょうか。
確かに、先生を「Teacher!」と呼ばずに「Mr. Smith」のように苗字で呼んだり、先輩にも友達に話すような言葉遣いをすることがあります。日本語のように敬語を意識する必要はないと言っても間違いはないかもしれません。
しかし、日本語のような敬語はなくても、しっかりと目上の人やTPOに相応しい話し方があります。それを表すものが丁寧な表現です。丁寧な表現を知り、正しく使いこなすことで、一歩上の英語を話せるようになります。
今回は、3つの考え方を中心に、これらの表現の作り方を解説します。
1. Pleaseを避ける丁寧な表現
まずはPleaseです。丁寧な表現を作ろうとした場合、あなたならどうしますか? 多くの方が文頭にPleaseを付けると考えたのではないでしょうか。
Pleaseを日本語に訳すと「お願いします」になるので、文頭にPleaseを付ければ丁寧な文になると思いますよね。また、学校でもそのように教えられたかもしれません。
しかし、実はPleaseを使う際は注意が必要なのです。Pleaseを文頭に付けても、実際に思っているほど「丁寧」にはならないからです。また、下手をすれば相手に嫌な思いをさせてしまう可能性もあります。
例文で説明していきます。
Please call me when you get this message.
(この伝言を聞いたら電話をしてください)
丁寧な表現に見えるかもしれませんが、Pleaseを消してみるとどうなるでしょうか。
Call me when you get this message.
(この伝言を聞いたら電話して)
そうなのです。Pleaseを文頭に付ける場合、基本的に命令形の文の前に置くことになります。よって、実はあまり丁寧に聞こえないのです。
もちろん命令形の文よりは、Pleaseを付けた方が良いことは間違いありません。しかし、それでも相手は選択肢がなく、押し付けられているような印象を受けます。
相手に「○○をしてください」とサクッと指示する際は、文頭にPleaseを付けて伝えることはよくあります。
例えば、同僚を尋ねて来た方に「スミスは間もなく戻りますので、あちらのソファでお待ちください」と伝える場合、Mr. Smith will be with you soon. Please have a seat on the sofa over there.と言うことは問題ありません。
それでは、Pleaseを使わずに丁寧に話したい場合はどうすれば良いのでしょうか。それはPleaseを使わない丁寧な表現を使うことです。内容にもよるので全てに当てはまるとは言えませんが、基本的には下記の2点を意識して表現を選ぶと良いでしょう。
①相手にお願いする
②相手の意思・希望を尋ねる
最初の「この伝言を聞いたら電話をしてください」という文を①の「相手にお願いする」方法にした場合、下記のような丁寧な表現が使えます。
May I ask you to call me when you get this message?
Would you mind calling me when you get this message?
これらの文の意味は「この伝言を聞かれたら、お電話いただけますか?」です。何らかの行動を行ってほしい場合、このように疑問文を使ってお願いする形にすることで、とても丁寧に聞こえます。
また、疑問文以外では、下記のように感謝をする表現を使ってお願いすることもできます。
We would appreciate it if you could call me when you get this message.
表現としては長くなりますが、英語の丁寧な表現は、基本的に少し長めになる傾向があります。
次に②の「相手の意思・希望を尋ねる」方法を見てみましょう。何かを相手に行ってほしい場合でも、下記のように相手の意思や希望を尋ねる形にすることで、丁寧な印象を与えることができます。また、その過程で本来は相手に行ってほしいことでも、こちらが行うと提案することで相手がどうしたいのか意見を引き出すことができます。
Would you like us to call you again later tonight?
(また今晩、こちらからお電話しましょうか?)
If you’d like, we could call you again later tonight.
(もしよろしければ、また今晩、こちらからお電話します。)
このように伝えて相手の意思や希望を確認することで、「いえ、こちらから連絡します」という回答が来るかもしれません。
他にも使える表現はありますが、これら2つのポイントを意識することで文頭にPleaseを使わずに丁寧な表現を作ることができます。
2. 主語をYouにしない伝え方
2つ目のポイントは、主語をYouにしないというものです。英文を作る際は基本的に主語が必要で、Youを使うこと自体は全く問題ありません。むしろ、それが普通です。
しかし、使い方によっては、相手が失礼と捉えてしまうこともあるので注意が必要です。例えば、下記の文を見てみましょう。
①You need to pay the rental fee by this Friday.
(あなたはレンタル料を今週の金曜日までに支払わなければならない。)
②You mustn’t talk to anybody about the project.
(企画について誰とも話してはならない。)
これらの表現は、いずれも相手に強めに言っているように聞こえますよね。もしそれらの行動をする(またはしない)ことで相手が危険な目に遭ってしまったり、誰かに損害が生じるような場合には強めに言う必要があります。そのような場合にはYouを使って強めに言うことも理解されます。
しかし、そうではない場合にはYouと言われた相手は「なぜそんな言い方をされないといけないの?」と不信感を持ったり、上から目線でものを言われているようで不快に思う可能性があります。特にYouを使う場合、その対象は「あなた」になるため、内容によっては個人攻撃されているように感じてしまう場合もあるので注意が必要です。
それでは、どうしたらそのような印象を与えずに、例文にあるような内容を伝えられるか見てみましょう。冒頭でお伝えした「Youを使わない」というものです。
①の例文を見てみましょう。
You need to pay the rental fee by this Friday.
Youを主語に使わない場合でも、英文には主語が必要です。それならば、Youの代わりになる主語を見つけてくれば良いのです。
この例文では「誰が支払う必要があるのか」となっていますが、「誰が」ではなく「何を支払う必要があるのか」という点に焦点を当てることで、主語を変えることができます。その際には、文の形が受動態になるので覚えておきましょう。
①の例文は、下記のようになります。
The rental fee needs to be paid by this Friday.
(レンタル料は今週金曜日までに支払われる必要があります。)
これで「あなた」という口調を避けることができますね。次に②の例文を見てみましょう。
You mustn’t talk to anybody about the project.
もちろん、念を押す理由で特定の相手(You)にそれを伝えるのであれば、この文を使うことには問題ありません。しかし、一般論として「企画の話は誰にもしないでくださいね」ということであれば、この表現は強すぎますし、特定の人を指して言うことはお勧めできません。
この場合、下記のような方法で文を変えることが考えられます。
(1)主語のYouをWeにして、全員がしてはならないとする
(2)主語のYouをNo oneやNobodyといった言葉に変える
この2つのポイントに沿って、例文を変えてみましょう。
(1)We mustn’t talk to anybody about the project.
(私達は企画について誰にも話してはならない。)
(2)No one must talk to anybody about the project.
(誰も企画について他言してはならない。)
Youを使わないことで「あなた個人」ではなく、そういったルールであるということを伝える文を作ることができます。こういったことも、一歩上の英語を話すための工夫です。
3. 直接的にならない言い換え
日本人に比べて、外国人の方は物事をはっきり、直接的に言う印象がありますよね。確かに外国人には日本人よりも「良いものは良い」「ダメなものはダメ」とはっきり言う人はとても多いですが、だからと言って、英語を話す際に全て直接的に言えば良いかと言えば、そうではありません。
例えば、下記の会話を見てみましょう。
A: Can I borrow your car tomorrow? I need to take a lot of books to the office.
(明日車貸してくれる? 本を沢山事務所へ持って行かないといけないんだよね。)
B: No. I need it.
(ダメ。必要なんだ。)
日本語でもそうですが、英語でもあまりにも直接的で、失礼に聞こえますよね。はっきり断ることと、直接的で失礼になることは違います。では、このような場合に、どのような表現を使えば、はっきり断りつつ、丁寧に聞こえるでしょうか。いくつか見てみましょう。
・I’m sorry, but I need it tomorrow.
・I’m afraid I need it tomorrow.
・Unfortunately, I need it tomorrow.
・I wish I could, but I need it tomorrow.
I’m sorry, butやI’m afraid、Unfortunately,は全て「残念ながら」という意味になります。Unfortunately,はこの中でも少し硬めに聞こえる表現です。
また、I wish I could, butは「そうできたら良いのだけど」という意味で、何かを断る際によく使われる表現です。
いずれも何かを断ったり、残念なお知らせを伝える際に、直接的に聞こえさせないための丁寧な表現です。また、今回のように何かを断る際、これらの表現に理由を加えると、相手に嫌な思いをさせることはなくなりますよ。
おわりに
今回は、「一歩上の英語」を目指す学習者のための丁寧な表現を紹介しました。これらの表現を知り、会話や文書の中で使うことで相手に良い印象を与えたり、「信頼できる人」と受け止めてもらえる可能性が高くなります。
人と接する際に相手のことを考えて行動するように、言葉を使う際にも相手を気遣う丁寧な表現や言い回しを意識するようにしましょう。きっと、一歩上の英語が使えるようになりますよ。
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