「TAURI」にも必要な「Rust」の「クレート」を使う
サウンドを扱う「kira」クレート
今度は「Ogg」形式などのサウンドファイルを読み込んで再生するだけの「kira」クレートの使い方を解説します。このkiraクレートはゲームサウンドの再生向けだそうです。
サンプルプロジェクトのzipファイルをダウンロードすれば「sound」フォルダにサンプルのOggファイルが入っています。Ogg形式のファイルはWindowsの場合なら次のURLの「えこでこツール」などで「Wav」ファイルや「Mp3」ファイルからOggファイルに変換できます。Windowsの場合だけ説明しましたが、筆者はmacOSの「GarageBand」という音楽アプリを使ってサウンドをWavファイルに書き出しました。
・えこでこツールのURL
https://www.vector.co.jp/soft/winnt/art/se445019.html
プロジェクトの作成
まず、Rustプロジェクトの作成からです。Tauriプロジェクトではありません。「Rust」などのフォルダをカレントフォルダにして、ターミナルで次のコマンドを実行して「sound」プロジェクトを新規作成します。プロジェクト名は任意の名前で構いません。それからカレントフォルダを作成されたsoundフォルダに変更します。
・soundプロジェクトの作成$ cargo new sound
「Cargo.toml」ファイルにクレートを追記
サウンドを扱うkiraクレートをsoundプロジェクトに加えましょう。それからkiraクレートを使う設定を次のように「Cargo.toml」ファイルに追記します。さらにファイルを開くダイアログを扱う「native-dialog」クレートの設定も追加します。これで2つのクレートをrsファイル内で使えるようになり、ビルド時にダウンロードやコンパイルされます。
・「Cargo.toml」ファイルに追記[package] name = "sound" version = "0.1.0" edition = "2021" [dependencies] kira = "0.8.5" # サウンドのクレート native-dialog = "0.6.4" # ファイルダイアログのクレート
「src」→「main.rs」ファイルでサウンド再生
次のサンプルコードのように「src」→「main.rs」ファイルでkiraクレートを使ってサウンドを再生してみましょう。「cargo run」すれば下図のように「ドレミ」の音が再生されます。本来なら何行もコードを書かなければならないところ、kiraクレートを使えば20行にも満たないコードでサウンドを読み込んで再生できます。
「sleep」関数で1秒ずつ止まっているのは、もし止まることなく「main」関数を終了してしまうと、サウンドもメモリから解放されて再生されることなく終わってしまうからです。
・soundプロジェクトのサンプルコード// サウンドを扱うクレート use kira::{ manager::{AudioManager, AudioManagerSettings,backend::DefaultBackend}, sound::static_sound::{StaticSoundData, StaticSoundSettings}, }; //スレッドを扱うクレート use std::thread; //時間の間隔を扱うクレート use std::time::Duration; //メイン関数 fn main() { // オーディオマネージャの生成 let mut manager = AudioManager::::new(AudioManagerSettings::default()).unwrap(); //サウンド配列 let sound_data = vec!{ //サウンドの読み込み StaticSoundData::from_file("C4.ogg", StaticSoundSettings::default()).unwrap(), //サウンドの読み込み StaticSoundData::from_file("D4.ogg", StaticSoundSettings::default()).unwrap(), //サウンドの読み込み StaticSoundData::from_file("E4.ogg", StaticSoundSettings::default()).unwrap(), }; //forループ for i in 0..3 { //サウンドの再生 manager.play(sound_data[i].clone()).unwrap(); //1秒スリープ thread::sleep(Duration::from_millis(1000)); } }
【サンプルコードの解説】
use文でkiraクレートのオーディオマネージャとスタティックサウンドの構造体を使えるようにします。またスレッドと時間の間隔を扱うクレートも使えるようにします。
メイン関数で「AudioManager」構造体のコンストラクタ(newメソッド)でインスタンスを生成し「manager」変数に代入します。
「ド(C4.ogg)」「レ(D4.ogg)」「ミ(E4.ogg)」サウンドファイルを「StaticSoundData」構造体の「from_file」メソッドで読み込んで、「vec!」マクロで「sound_data」配列に代入します。
オーディオマネージャの「play」メソッドで「sound_data」配列の0~3未満の要素のサウンドを順番に再生します。この際スレッドの「sleep」関数で1秒スリープして止まることで1秒ごとにドレミを再生します。
ファイルダイアログでサウンドファイルを開いて再生
今度は自分で開くファイルを選んでからサウンドを再生します(図4)。ファイルダイアログは開くファイルのパス名を取得するだけで、実際にパス名のファイルを開くのはkiraクレートの役割です。
皆さんご存じの通り、ファイルを開くダイアログは前ページのファイルを名前を付けて保存するダイアログと違い、既存のファイル名を選択しても上書き確認されることなくファイルを開くことができます。
・サウンドファイルを開くサンプルコードuse kira::{ manager::{AudioManager, AudioManagerSettings,backend::DefaultBackend}, sound::static_sound::{StaticSoundData, StaticSoundSettings}, }; //ファイルダイアログを扱うクレート use native_dialog::FileDialog; use std::thread; use std::time::Duration; fn main() { let mut manager = AudioManager::::new(AudioManagerSettings::default()).unwrap(); //ファイルダイアログ let path = FileDialog::new() //最初にデスクトップを開く .set_location("~/Desktop") //ファイルの種類をOggだけに .add_filter("Ogg Sound", &["ogg"]) //開くダイアログ .show_open_single_file() //失敗した場合を無視 .unwrap(); //パスの場合分け match path { //パス名が存在した場合 Some(path) => { //サウンドの読み込み let sound_data = StaticSoundData::from_file(path, StaticSoundSettings::default()).unwrap(); //サウンドの再生 manager.play(sound_data.clone()).unwrap(); //2秒スリープ thread::sleep(Duration::from_millis(2000)); }, //パス名がない場合 None => return, }; }
【サンプルコードの解説】
use文で「native_dialog」クレートの「FileDialog」構造体を使えるようにします。
FileDialog構造体のコンストラクタ(newメソッド)でインスタンスを生成し「path」変数に代入します。「set_location("~/Desktop")」メソッドで最初に開くフォルダをデスクトップにします。「add_filter("Ogg Sound", &["ogg"])」メソッドでファイルの種類を「Ogg」拡張子だけにします。「show_open_single_file()」メソッドでファイルダイアログの種類を1ファイルだけ開くダイアログにセットします。
path変数にパス名が存在する場合はパス名のサウンドを、オーディオマネージャのplayメソッドで2秒間再生します。パス名が存在しない場合はreturnでmain関数を抜け出します。
今回サウンドを再生することになり、困ったことがありました。筆者の作業場のWindowsマシンのサウンドドライバがどうしても認識しないのです。Intel iMacのBootcampなのでHDMIでディスプレイに繋いでいるわけでもなく一体型のディスプレイです。そこでUSBスピーカーを買ったら正常にサウンドが鳴りました。最近はBluetoothスピーカーが主流かもしれませんが、結局は電源を有線で繋がなければならないので、USBで電源も供給するUSBスピーカーを選びました。
おわりに
今回は、次回からTAURIを本格的にプログラミングしていく際に避けては通れないクレートの使い方を解説しました。クレートを使えば面倒な機能を簡単に扱えるようになることがよくあります。画像とサウンドのクレートは今後も登場します。今度はTAURIの中で使う予定です。
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