失敗は成功のもと、これが満点ロボットだ!

2008年4月18日(金)
酒井 秀樹

アタッチメントを下げながらスペースエレベータに向かって進め

最初にチームが試みた第1の戦略を紹介しよう。ますベースからスペースエレベータに向けてスタートする。においの分子を取り、レバーを押すバーを下げながら、スペースエレベータまで行き、レバーを押す。そのまま後進し、ベースに戻る。この戦略は相手もクリアしないとポイントが得られない、協調戦略だ。

この戦略用にチームは図2(1)のロボットを開発した。このロボットの特徴は、同時に2つのミッションに対応できることだ。手前に取り付けた「すだれ状」のアタッチメントにより、においの分子を回収することができる。このすだれは一方向にしか動かず、においの分子を取り込むと、外に逃がさないような仕組みとなっている。

スペースエレベータをクリアするアタッチメントは、ロボット前方上部に装備しモーターにより上下に動くようになっている。スタート当初は、においの分子を取り込むため、このアタッチメントは上に上がっているが、においの分子を取り込みながら下に下がるようになっている。

ロボットは、スペースエレベータに向かって壁とは斜めの方向に直進するが、レバーは壁に対して垂直に押す必要があることから、このアタッチメントのレバー部分は壁に対して平行になるように斜めになっている。そうすることにより、ロボットは壁に対して斜め方向に進むが、正しい角度でレバーを押すことができる。


(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

自分たちだけでクリアに挑戦

チームが次に考えたのが、自力でスペースエレベータをクリアする戦略だ。この戦略は、スペースエレベータの向きを考慮しつつ、自力でミッションをクリアするものだ。実際の大会では、Aサイド、Bサイドどちらにアサインされるか、試合直前までわからない。そのため、どちらの向きでも対応できる戦略が必要であり、手前側用と奥側用の2種類のアタッチメントを作成した

この戦略用にチームは図2(2)のロボットを開発した。このロボットの特徴は、短時間で3つのミッションを行うことができることだ。アタッチメントが柱をまわりこむようにしてスペースエレベータの籠にかむため、比較的許容範囲が広く、左右5mm程度のブレまで対応できた。また、ライントレース時のセンス時間間隔を細かくすることにより、正確にエレベータまで行き着くことができた。

この戦略は奥と手前とでアタッチメントが異なるため、エレベータの向きによって準備を変えないといけないなど、神経を使った。たまたま全国大会では、すべて奥側だった。加えて、アタッチメントの先端についている部品がくるっと反対方向を向いていることがあり、最初にそれに気づかないで失敗することがあった。さらに、アタッチメントの数が前後2つあり、着けるのに時間がかかることも苦労した。

この戦略は、次の点で確実性を欠いた。ロボットはライントレース機能により、正確にスペースエレベータまで行き着くはずだった。しかし、実際にはスペースエレベータの設置位置が大会当日若干ずれていたため、ロボットが期待通りに動いてくれなかった。

大会当日のミッションフィールドのコンディションについては、当日の審査委員と運営スタッフなど関係者が行うのだが、どうしてもチームが練習で使っているフィールドと違いが出てくる。ロボットは精密に動くようにデザインされているので、数cm違うだけで影響を受ける。ここに落とし穴があった。

チームはまた1つ学んだ。つまり、練習と本番でと環境が異なっても、対応できる許容力を備えたロボットの開発が必要だと。また、全国大会でライバルチームが異なった方法で強引にエレベータを上げるのを見て、奥側と手前側とを共通の方法でやろうと考えた。

オムニチュア株式会社
1990年4月、日本総合研究所に入社。1999年2月SAPジャパンに転職、国内最大手製造業のGlobal Alliance Account Director、副社長補佐を経て、現在はオムニチュア(株)に勤務。FLLには2005年、2006年にメンター・コーチとして参加、2年連続で世界大会に出場。

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