Gartner、エージェント型AIによってエンタープライズ・アプリケーション向け支出の2,340億ドルがリスクにさらされるとの見解を発表
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- 2030年までにエンタープライズ・アプリケーション市場のSaaS支出の約20%にあたる最大2,340億ドルが「エージェント型アービトラージ」の影響を受けるとGartnerが発表。AIエージェントが複数のシステム間でタスクを肩代わりし、ユーザーが従来型ソフトウェアのインターフェースを直接操作する必要がなくなる
- 企業の購買担当者の関心は「新しいツールやダッシュボードの導入」から「成果そのもの」へとシフトしており、UIを差別化要素とするSaaSのビジネスモデルが根本から問い直される
- これは「SaaSの終焉」ではなく変容であり、レガシーのダッシュボードやシート数課金モデルを維持するベンダーには脅威となる一方、クロスドメイン・ワークフロー対応プラットフォームを開発・提供するサービス事業者には大きな収益機会が到来する
📝 Think IT編集部の見解 📝
今回のGartnerの見解が示す本質は「ソフトウェアが見えなくなる」という変化だ。
これまでSaaSの価値は「誰でも使いやすいUI」にあった。しかしAIエージェントがシステムのAPIを直接呼び出してタスクを完結させるようになれば、エンドユーザーがそのUIを触る必要がなくなる。Gartnerが「ソフトウェアを見えなくさせる」と表現したのはこのことだ。
インフラエンジニアやSREの観点から見ると、この変化は二重の意味を持つ。一方では、自社で利用するSaaSツールの選定・調達の論理が変わる可能性がある。「どのUIが使いやすいか」より「どのAPIが信頼できるか」「どのデータが自社コンテキストを長期保持しているか」が評価軸になっていく。もう一方では、AIエージェントが複数システムをまたいで動作する環境の設計・運用という新たな責任領域が生まれる。エージェントの監査ログをどう取るか、異常動作をどう検知するか——これはまさにSREが担うべき問いだ。
一方でGartnerのバイスプレジデントアナリスト・本好宏次氏が補足するように、ERPをはじめとするミッションクリティカルなシステムについては「AIかSaaSか」という二者択一の話ではない。高い信頼性やコンプライアンス対応が求められるシステム全体を完全にAIに任せることは現実的ではなく、当面は既存アプリケーションを安定稼働させつつAIを組み合わせて機能を強化するアプローチが主流になるという見方は、現場感覚とも一致する。
📰 リリースまとめ 📰
Gartner、エージェント型AIによってエンタープライズ・アプリケーション向け支出の2,340億ドルがリスクにさらされるとの見解を発表
ビジネスおよびテクノロジのインサイトを提供するGartner, Inc.は2026年7月8日、エージェント型AIがエンタープライズ・ソフトウェアの収益モデルに大きなディスラプション(破壊)をもたらし、2030年までに最大2,340億ドルの支出がエージェント型アービトラージによって影響を受ける見込みであるとの見通しを発表した。2030年までに、この金額はエンタープライズ・アプリケーション市場におけるSaaS支出の約20%を占めることになる。
エージェント型アービトラージとは、AIエージェントが複数のシステム間でタスクを肩代わりすることで、ユーザーが従来型ソフトウェア・インターフェースとやり取りしなくてもすむようにする現象だ。
GartnerのManaging Vice PresidentであるGeorge Brocklehurst氏は「エージェント型AIはソフトウェアの経済そのものを変えます。エージェント型システムは成果を直接提供し、従来のアプリケーションのUXを迂回することで、ソフトウェアを見えなくさせます。これにより、多くのソフトウェア・ベンダーにとって、ユーザー数の増加と収益の増加との間にある関係性が断たれることになります」と述べた。
SaaSの終焉ではなく変容
この変化はすでに始まっており、ソフトウェアの構築・利用方法や価格設定のあり方が再定義されていくとGartnerは指摘する。「これによってSaaspocalypse(SaaS黙示録)、つまりレガシーSaaS市場の再編成が進むでしょう。これは、SaaSの終焉というよりも変容です。SaaS自体は、なくなるのではなく、新しい形に進化します。この変容は、既存・新規問わず、どのベンダーにとっても脅威になるとともに、新たな機会にもなります」(Brocklehurst氏)。
購買担当者の関心は機能から成果へ
Gartnerのアナリストは、ユーザー側の期待値も変化していると分析する。「企業の購買担当者は、新しいツールやダッシュボードの導入よりも、成果そのものへと関心がシフトしています。多くの場合、新しいAI機能を追加しても、コストばかり増えてしまい、本質的な成果にはつながりません。AIからより良い成果を得るには、長期にわたって組織の記憶や顧客のコンテキストを保持できるシステムが必要です」(Brocklehurst氏)。
既存ベンダーへのリスクと新規参入者への機会
既存のソフトウェア・ベンダーが競争力維持および成長機会獲得を図るためには、UI中心から成果中心の価値へと転換し、エージェント型能力を自社製品に組み込む必要があるとGartnerは指摘する。「レガシー・ダッシュボードやシート数課金モデルを維持するベンダーは、存在意義そのものが問われることになります。一方、クロスドメイン・ワークフロー対応プラットフォーム開発などのサービスを強化する事業者には大きな収益チャンスが到来します」(Brocklehurst氏)。
AIネイティブのスタートアップやサービス・プロバイダーは、企業システム全体を横断するエージェント型レイヤーとしての役割を担い、「機能」ではなく測定可能な「成果」を提供し、組織がAIを中心にワークフローを再設計する支援を行うようになるとGartnerは予測している。
国内ユーザー企業への補足
ガートナージャパンのバイス プレジデント アナリストである本好宏次氏は「ERPをはじめとするミッション・クリティカルなシステムについては、AIかSaaSかという二者択一的な話ではありません。確かに、ERP機能の一部が今後AIへ置き換わり、自律的に実行されるようになると考えられますが、高い信頼性やコンプライアンスへの対応が求められるシステム全体を、完全にAIに任せることは現実的ではありません。当面は、既存のアプリケーションを安定稼働させつつ、AIを組み合わせて機能を強化するアプローチが主流になるでしょう」と国内ユーザー企業向けに補足している。
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