第1回:国産セキュアOSの歩み (3/4)

TOMOYO Linux
初体験 TOMOYO Linux!

第1回:国産セキュアOSの歩み

著者:NTTデータ  原田 季栄   2007/6/22
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TOMOYO Linuxの歴史

   さて、実際にTOMOYO Linuxの機能を紹介する前に、TOMOYO Linuxの歴史について紹介しておきます。

   プロジェクトの発足から2005年11月にオープンソースとして公開に至るまでの開発の経緯については、OSDN主催のイベントである「Linux Kernel Conference 2005」で講演を行っており、資料は下記URLで参照できます。
Linux Kernel Conference 2005:
http://osdn.jp/event/kernel2005/

   ここでは、それ以降の主な歩みについて紹介します。


表2:TOMOYO Linuxのこれまでの歴史

   2006年12月に行った「CE Linux Forum(以下、CELF)」での講演はプロジェクトにとって大きな転機となりました。説明の際に「国産セキュアLinuxとして、組み込み系の方々を含め、国内のニーズに応えていきたい」と話したところ、組み込みLinuxのコミュニティの方々より「ぜひメインライン(Linux標準ソースコードへの組み込み)を目指して欲しい」とのご意見をいただきました。これは全く予想していないことでした。

   開発を始めてからはずっと成果の公開(オープンソース化)が夢でした。公開はやろうと思えば誰でもできますが、メインライン化は、まず自分達が作ったものを説明し、興味をもってもらい、世界中のLinux開発者と議論した上で、開発成果の評価を得なければなりません。CELFの方々から、「人数は関係ない」「提案することに意義がある」といわれて、ちっぽけなプロジェクトでは無理なことだとあきらめていた自分に気づき、自らの志の低さを恥じました。このときからメインライン提案を行うことがプロジェクトの重要な目標となりました。

   フォーラムでは、合わせてサンノゼで開催される組み込みLinuxの国際会議「Embedded Linux Conference 2007 (ELC2007)」の応募を勧められました。投稿した提案は無事採用され、4月には講演とチュートリアル、デモを行っています。これはTOMOYO Linuxとしてはじめての海外での発表となりました。

   CELFから2ヶ月後、2007年の2月には国内Linuxのアクティブなコミュニティとして知られる横浜Linux Users Groupで「TOMOYO Linux Night(開発者が語るTOMOYO Linux)」というイベントを開催しました。

横浜Linux Users Group、「TOMOYO Linux Night(開発者が語るTOMOYO Linux)」を開催
http://www.thinkit.co.jp/free/news/0702/9/4.html

   ここでもメインライン提案に向けて激励をいただきました。信じられない偶然ですが、YLUGで話をしたその日がまさにOLS2007の投稿期限だったはずが、なぜか期限が一週間だけ延期されていました。YLUGの方々より、Linux関係者にとって総本山ともいえるOttawa Linux Symposium 2007(OLS2007)について、非常に熱くチャレンジを勧められ、急遽検討、応募した内容はBOFとして採択されました。昨年12月にCELFのお話をいただいていなければ、あるいはYLUGの開催日が一週間ずれていたら、そう思うと、不思議な力を感じずにはいられません。


メインライン化の意義

   普段Linuxを利用されていない方には「メインライン」に含まれることの意味がピンとこないかもしれません。メインラインに含まれていない現在の状態では、NTTデータが開発の終了を宣言した場合、それはTOMOYO Linuxの終了を意味します。何故ならLinuxは文字通り日々進化しており、それに追随できないということは実質的にソフトウェアとしての死を意味するからです。

   プロジェクトが続いていたとしても一社で行う開発には限界がありますし、世界中の人々に知ってもらうことは困難です。メインライン化提案を行うということは、TOMOYO Linuxという成果をLinuxの中で活かし続けるということです。それはまた、技術的検証やコメント(評価)を受けるということであり、同時にLinuxコミュニティへの開発成果のフィードバックという意味があります。オープンソースの世界は「give & take」です。プロジェクトとして、日本からの貢献を目指したいと思っています。

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株式会社NTTデータ 原田 季栄
著者プロフィール
株式会社NTTデータ  原田 季栄
1985年北海道大学工学部応用物理学科卒。同年NTTに入社し、現在はNTTデータ技術開発本部に勤務。MITでのマルチメディアオーサリングシステムの開発、デジタル放送、営放システム等放送関連のシステム開発とマネージメントを経て、2003年よりオープンソースの研究開発に従事し、シンクライアント、Linuxのセキュリティ強化に取り組む。「使いこなせて安全」を目指すセキュアOSとして知られる国産セキュアOS、TOMOYO Linuxのプロジェクトマネージャ。


INDEX
第1回:国産セキュアOSの歩み
  はじめてのTOMOYO Linux
  セキュリティ強化Linuxの現状
TOMOYO Linuxの歴史
  TOMOYO Linux開発の現状
初体験 TOMOYO Linux!
第1回 国産セキュアOSの歩み
第2回 TOMOYO Linuxの導入とアクセス制御を初体験
第3回 TOMOYO Linuxで管理業務を委託
第4回 不正なログインを防止する方法
第5回 TOMOYO GUIとTOMOYO Linuxの素敵な関係
第6回 EclipseとTOMOYO GUIでWebサーバを簡単管理

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