第3回:DOAを進めるためのミニマムセット (2/3)

データ指向アプローチ
DOAとは何か!〜開発現場から見るDOA〜

第3回:DOAを進めるためのミニマムセット

著者:システムズ・デザイン  DOA推進ワークショップ   2007/5/23
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業務フロー

   業務フローとは、該当業務に関係する担当者やものに加え、手続きの順序やタイミングとチェックポイントが表現されているものを指します。
業務フローの必要性

   業務フローの必要性には、大きく分けて以下の3点があります。

  • 企業内の業務を可視化し、正しくムダなく業務が行われていることを見極めるための資料
  • 業務担当者の引き継ぎ資料
  • 担当者不在時でも業務を止めることなく、一定のサービスを提供するための業務マニュアルの概要としての役割

表3:業務フローの必要性

   内部統制の観点から、その重要性がさらに増していることは周知のとおりです。


システム開発での成果物

   システム担当者が書いた業務フローでは、システムやソフトウェアの使い方に重点が置かれ、業務の流れが読み取れないケースが見受けられます。ユーザ側が本来の目的が込められている業務フローを書くことが可能であればよいのですが、開発者側にもそれを検証し、ブラッシュアップするスキルが必要です。

   つまり業務SEであるのなら、少なくとも対象としている業務分野に精通しようとする姿勢が求められます。このスキルがあってはじめてユーザインタビューが行えると筆者は考えます。この点を「コミュニケーション能力」という言葉でひとくくりにしてはいけません。

   また、業務フローで表現する粒度については、非常に難しい問題です。1つ1つのプロセスをどのレベルまでドリルダウンするか、開発スピードを考えると筆者も非常に頭が痛くなります。決定的な解決策はありませんが、筆者は、次のように心がけています。

   適用業務を作業単位にブレークダウンしたとしても、個々の作業にも必ず達成しなければならない目的があります。その目的が明確になるように分割を行い、その分割単位をひとつのプロセスとして定義するようにします。

   例えば「伝票を起票する際、明細行を埋めるために複数の情報を閲覧する」というプロセスがあったとしても、それは伝票を起票するという目的を達成するための手段だととらえます。このため「ある作業が持つ目的が達成されるまで」を1つのプロセスの最小単位と位置づけるよう意識しています。


DFD(データフローダイアグラム)

   DFDは魅力的な階層構造を持ち、順次詳細化を行っていくことにに適した技法です(図1)。

DFDの階層化イメージ
図1:DFDの階層化イメージ

   これは1970年代にトム・デマルコらにより構造化分析が提唱されて以来、広く活用されてきた技法ですが、現在でも、例えば日本IBMが適用しているDOAでは、DFDを中心とした分析・設計を行っていくプロセスを採用しています。

   筆者がはじめて関わった開発現場では、客先のプロジェクトリーダーが極端にDFDを推奨していたこともあり、その扱いはまさに「DFD=万能選手」といった感がありました。筆者も当時はそのような幻想を持っていましたし、現在でも魅力的なダイアグラムであることに変わりはありませんが、その役割はある程度限定した方がよいと考えています。


DFDでどこまで描くのか

   一般的に詳細化のレベルについては「データフロー、データストア、プロセスが明確になるレベルまで」といった説明が行われます。そして、最下層のDFDをそれぞれ、データストア記述書、データフロー記述書、プロセス記述書といった資料で補完するのが伝統的な手法です。なおDFDで用いる記号については図2を参照してください。

DFDで用いる記号
図2:DFDで用いる記号

   しかし、この手法では多量に工数がかかり、さらに大量のドキュメントが発生します。また、DFDではプロセスの順序性や条件分岐は表現しませんが、レベルが下位になるほど、そのような点を表現したくなってしまうものです。そして何をもって「データやプロセスが明確なレベル」と判断するのかが、曖昧な点もあるのです。

   このため現在では、DFDの役割について下記のように考えることができます。

  • 対象業務の抽象化により、視覚的に関係者間の共通の理解をはかる
  • システム化範囲の明確化の材料
  • 以降の設計作業の基礎材料

表4:DFDの役割

   この表4にしたがうことで、DFDで表現するのは業務領域単位までとし、階層化は第2レベルもしくは複雑な業務領域での第3レベルまでが妥当だと感じています。

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システムズ・デザイン株式会社 DOA推進ワークショップ
著者プロフィール
システムズ・デザイン株式会社  DOA推進ワークショップ
ビジネス解析方法論であるDOAと、開発プロセス方法論であるRAD、ウォーターフォール、UPなどを現場の最前線で適用している技術者を中心に開設した、sdc独自のワークショップ。PDCAサイクルを回して、さらなる進化と「確かなモデリング∧確かな開発プロセス→いい仕事」の可能性を追求する。


INDEX
第3回:DOAを進めるためのミニマムセット
  システム開発におけるドキュメントのあり方
業務フロー
  データモデル
DOAとは何か!〜開発現場から見るDOA〜
第1回 データ連携の必要性を再確認
第2回 正規化されたRDBとJavaによるデータアクセス
第3回 DOAを進めるためのミニマムセット
第4回 届いてないよ、聴かせてよDOA

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