第6回:RailsとGrailsの比較(前編) (2/3)

徹底比較!!Ruby on Rails vs Javaフレームワーク
徹底比較!!Ruby on Rails vs Javaフレームワーク

第6回:RailsとGrailsの比較(前編)

著者:アスタリクス  大西 正太   2006/10/18
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コントローラ(+サービス)の比較

   次にコントローラの比較をします。前述したようにGrailsのアーキテクチャではサービスクラスも含まれているため、ここでまとめて扱います。

URLとアクションのディスパッチ

   URLとコントローラ/アクションのマッピングについては、Railsとまったく同じです。

   つまり、コントローラクラスのメソッドが1アクションとして管理されます。そして各コントローラとアクションに対して「/コントローラ名/アクション名」というURLが命名規約により対応します。


ビューへの値受け渡し

   Railsではコントローラクラスのフィールドにビューが直接アクセスすることで値のやりとりをします。

   Grailsでもまったく同様の方法を利用できます。それに加えてリスト1のようにアクションの戻り値をハッシュにすることでの受け渡しもできます。

リスト1:戻り値によるビューへの値受け渡し
def list = {
   return {'person' : Person.list, 'book' : Book.list}
}


Dependency Injection

   RailsではDI(Dependency Injection:外部ファイルを用いて生成クラスを実行時に決定させる機構)を取り入れていませんでした。一方、GrailsではSpring Frameworkがうまく統合されています。

   以降では、それを具体的に見てみましょう。

   リスト2がサービスクラス、リスト3がコントローラクラスです。コントローラに「helloService」という名前のフィールドを宣言することで、自動的に「HelloService」クラスのオブジェクトがDIされます。

リスト2:Grailsのサービスクラス
class HelloService {
   def String sayHello(String name){
   …
   }
}

リスト3:Grailsのコントローラクラス
class HelloController {
   HelloService helloService
   def index = { return helloService.sayHello('xxx')}
}

   Spring Framework単体で利用した場合のように大量のXMLを記述することはありません。クラス名とフィールド名を命名規約にそって定義すれば、自動的にオブジェクトがDIされます。また、「GRAILS_ROOT/spring/resource.xml」に空のSpring定義ファイルが配置されており、必要に応じてこのファイルを編集することで明示的にDIするオブジェクトを指定することもできます。


トランザクション

   Grailsでは「***Service」という命名に従ったクラスを自動的にサービスクラスとみなし、宣言されたすべてのメソッドの開始から終了までをトランザクションに包みます。内部的にはSpring Frameworkのトランザクション機能を利用しているため、必要に応じて上述した定義ファイルを利用すれば、トランザクションの設定を宣言的に指定することもできます。

   Railsは宣言的なトランザクションへの対応がなく、ほとんどのアクションをtransactionメソッドで囲まなくてはなりません。この点ではGrailsの方が進んでいるといえるでしょう(Railsのトランザクションの詳細については「第4回:DIコンテナとの比較」を参照)。


コントローラ(+サービス)比較の結論

   HTTPやビューとのやりとり部分について、GrailsのコントローラはRailsとほとんど同様と考えてよさそうです。

   モデルとのやりとり部分については、Javaが持つ強力なトランザクションの機構を簡単に用いられるGrailsに軍配があがるように思います。

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株式会社アスタリクス 大西 正太氏
著者プロフィール
株式会社アスタリクス  大西 正太
JavaEEフレームワークの設計構築や開発プロセス策定などの業務を経て、現在は新規ビジネス創生に携わる。Ruby on Rails上に構築したオープンソースのCMS「Rubricks」(http://rubricks.org/)のコミッタ。


INDEX
第6回:RailsとGrailsの比較(前編)
  はじめに
コントローラ(+サービス)の比較
  ビューの比較
徹底比較!!Ruby on Rails vs Javaフレームワーク
第1回 O/Rマッピング
第2回 JSFとRailsで比較(前編)
第3回 JSFとRailsで比較(後編)
第4回 DIコンテナとの比較
第5回 テストフレームワーク
第6回 RailsとGrailsの比較(前編)
第7回 RailsとGrailsの比較(後編)
Ruby on Rails入門
第1回 Railsが注目されている理由
第2回 すぐできるアプリケーション作成
第3回 アーキテクチャと検索機能の追加
第4回 Railsでテストをしてみよう
第5回 Ajaxアプリケーションの作成
第6回 プラグインでさらに生産性アップ
第7回 Linux環境で動作させよう

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