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ミドルウェア市場動向と今後の展望
第３回：セキュリティ管理機能の伸びが著しい統合運用管理ソフト
著者：
矢野経済研究所 入谷 光浩
2006/8/8
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中堅・中小市場で求められる運用管理ツールとは
統合運用管理は大手企業での導入が中心であり、中堅・中小企業のマーケットにはあまり浸透していない。ただ、セキュリティ管理は大小問わず必要なツールであり、従来、小型機やオフコンなどが中心であった中小企業において、管理の自動化をはかるジョブ管理や散在するIT機器を管理するIT資産管理のニーズは高い。
例えば日立製作所では、中小企業向けに「JP1 Smart Series」を用意している。機能はジョブスケジューラをスタンドアロンタイプで用意されるほか、IT資産管理とあわせ中小企業でも最も必要とされているモジュールを揃えている。
またNECでも中小企業向けに「WebSAMオフィススイート」を2006年1月30日から販売開始している。これは中小企業での導入に適した6製品（システム統合管理、サーバ管理、IT資産管理、システムリカバリ運用、リモート運用、リモートデスクトップ運用）をパッケージ化したものだ。
このように各ベンダが中堅・中小企業に対して販売を強化している。さらに中堅・中小向け製品ではパートナー販売が大きく影響するため、パートナーの拡大やパートナーへの支援を強化が今後の市場を動かす大きなポイントになってくるだろう。
ITILの立ち上がり
統合運用管理ソフト市場で今最も大きな話題となっているのがITIL（Information Technology Infrastructure Library）である。ITILは英国商務局が、ITサービス管理・運用規則に関するベストプラクティスを調和的かつ包括的にまとめた一連のガイドブックのことだ。ITサービス管理を実行する上での業務プロセスと手法を体系的に標準化したもので、ITに関する社内規則や手順などの設定・見直しを行う際のガイドラインとして活用されることが期待されている。
ITILは、運用管理業務を日常的にユーザが必要なサービスを利用できるようサポートする「サービスサポート」と、サービスを高い投資効率で長期的に改善していく「サービスデリバリ」の2つに分けて考えられている。それぞれ表1のように各プロセスに分類している。
サービスサポート
サービスデスク（注2）
インシデント管理
問題管理
構成管理
変更管理
リリース管理
サービスデリバリ
サービスレベル管理
ITサービス財務管理
キャパシティ管理
ITサービス継続性管理
可用性管理
表1：プロセスの分類
※注2：
サービスデスクは機能でありプロセスではない
各ベンダはITIL導入のためのアセスメントや導入サービスを提供するとともに、統合運用管理ソフトのITIL対応を進めている。現状はサービスサポートが中心となっており、具体的な製品として出荷されているのがサービスデスクである。
サービスデスクはITとユーザの間に位置し、ユーザからの問い合わせや要求を受け付ける運用インターフェースで、ITILの導入にあたりまずはサービスデスクの設置から入るユーザが多い。これはサービスデスクに強みを持つ日本HPでは、出荷が好調であると述べていることからも伺える。ただし、サービスデスクは機能でありプロセスではないため、ITIL導入の前準備という意味合いが強い。
サービスサポートで土台となるのがITILプロセスの遂行に欠かせない各種情報を管理するデータベースCMDB（Configuration Management Database）である。これにより、各プロセスの活動における各種レポート作成や監査作業に必要な情報出力の自動化も可能になる。各ベンダは現在このCMDB製品の開発に取り組んでいる状況だ。またそれとあわせ、資産管理製品にインシデント管理や問題管理などに対応した機能を強化している。
現状でITILはサービスデスク以外の製品販売にまだ結びついていない。各ベンダは当初2005年から具体的な案件が立ち上がると見ていたが、実際は提案やコンサルが長引き、
売上に結びつくのは2006年以降
になるとの見解を示している。
また日本版SOX法ではシステムの運用管理が監査の対象になることから、よりITILのニーズが高まっていくだろう。内部統制が求められる日本版SOX法の施行にともなって、市場が動いていくのは必至といえよう。
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著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所 入谷 光浩
民間総合調査会社である矢野経済研究所のITリサーチ部門にて、サーバやミドルウェアを中心としたエンタープライズコンピューティングのリサーチを担当。近年はエンタープライズにおけるOSSの市場動向に着目しリサーチを行っている。
INDEX
第3回：セキュリティ管理機能の伸びが著しい統合運用管理ソフト
統合運用管理ソフトの市場動向調査の内容
セキュリティ管理が大きく成長
ベンダ別出荷動向
中堅・中小市場で求められる運用管理ツールとは
