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スケジュールとコストに関する指標が一目瞭然にわかるEVM
スケジュールとコストに関する指標が一目瞭然にわかるEVM

第1回:EVMの導入効果と概要
著者:プライド   三好 克典   2006/3/6
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EVM概要

   ここからは、EVMについてより具体的な内容に話を進めていく。これまでにEVMについて、プロジェクト管理を扱っている書籍や雑誌の特集読んだことがある人も多いだろう。

   今回解説するEVM概念はすでに十分理解している方には物足りないと思うが、今回の記事は次回以降の事例解説や問題発見時の対応について参考にしていただきたい。まったく知らないという方はもちろん、「他の記事などでなんとなくわかったけど、なんだか小難しい用語がたくさん出てきた」という方には是非読んでいただきたい。

   そもそもEVMは難しい概念ではなく、次のことを順番に実施していくことである。

  1. いつまでにどれだけの成果物を作成するか明確にする
  2. その作成にかかる時間・金額を見積る
  3. それぞれの時点で出来高と使用した金額をチェックする
  4. 成果物の作成遅延やコスト超過といった問題点を発見する
  5. 最終的にかかるコストと納期を予測する

表3:EVMが実施すること

   表3のことは、物作りをする上でまったく当たり前のことをしているだけである。それがなぜ「なんとなく」レベルの理解になっているかというと、慣れない用語がたくさんでてきて、用語と意味の関連付けが曖昧なまま放置してしまうからだろう。

   その考え方を人に説明できるレベルで理解するには、実際手を動かしてみるのが一番である。次回は練習問題を用意するので、自分の手で計算して理解レベルを深めていただきたい。今回は基本用語と概要図の説明で終わることとする。


EVMの基本値

   EVMの本質を理解する上で、基本となる値は表4の3つだけである。

  1. PV(Planned Value)
    成果物の作成期限と作成に必要な金額を見積ることで算出される値。実績測定ベースラインとも呼ばれる。この値を基準として、スケジュール遅延及びコスト超過を判断することになる。
  2. EV(Earned Value)
    出来高と呼ばれるある時点までに完了した作業の価値として算出される値。成果物の完成状況をあらわす。PVと比較することでスケジュールをチェックする。
  3. AC(Actual Cost)
    ある時点までに実際に使用した費用として算出される値。PVと比較する事でコスト進捗をチェックする。

表4:EVMの本質を理解する上で、基本となる値

EVMの概要図
図1:EVMの概要図

   単なる例では面白くないので少々意味を与えてみた。Aの時点では実績コスト(AC)、出来高(EV)ともに予定(PV)に達しておらず、プロジェクトの進行そのものに対する妨げがあった可能性がある。

   例えば、プロジェクトの立ち上げで体制や環境作りに失敗し、スタートダッシュがかけられなかったことが考えられる。Bの時点になるとどうだろう。出来高(EV)は予定(PV)に近くなっているが、実績コスト(AC)は先程とは逆に予定(PV)を大幅に上回っている。

   例えば、進捗遅れを取り戻すために大幅なリソースを投入した結果、遅れは取り戻したが、コストは大幅に超過してしまったと考えられる。図1の場合、当初からスケジュール遅延が発生しているため、EVMを使わなくてもアラーム自体はあがっているだろう。

   しかし、Bの時点で遅延が解消されたことに満足し、終わってみればコスト超過だったというケースもあり得る。EVMでチェックしていれば、Bになる前にコストをかけすぎていることを察知できる可能性が高くなる。

   ここまでの内容は、「ある時点において、予算/予定(PV)に対して、いくら(AC)使って、どれだけの物(EV)が作成されたか」というだけである。基準が適正でなければ判断を誤る可能性が高くなる。ベースライン(PV)が重要であることは次回まで記憶しておいて欲しい。

   次回は基本値から導出される値の説明と実践的なEVMの練習問題を掲載する。

参考文献:
平成14年度情報技術・市場評価基盤構築事業(情報処理振興事業協会)
EVM活用型プロジェクトマネジメント導入ガイドラインの作成(情報処理振興事業協会)
PMBOK(R)ガイド 2000年版(PMI)

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株式会社プライド 三好 克典
著者プロフィール
株式会社プライド   三好 克典
前職にてプロジェクト管理や標準化が非常に重要であると考え、技術習得及び実践の場を求めてプライドに入社。現在、システム開発方法論「プライド」を軸に、プロジェクト管理、標準化、情報資源管理の支援に携わっている。

INDEX
第1回:EVMの導入効果と概要
  はじめに
  EVMの導入効果
EVM概要