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EIP
企業情報ポータルによるアプリケーション統合

第1回:なぜ今、EIPなのか
著者:みずほ情報総研  平古場 浩之   2006/7/3
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企業情報ポータル(EIP)とは何か

   米国のとある調査によれば、企業では毎年60%以上の割合でデジタルデータ量が増加し続けているという。財務データや顧客情報などの定型的なデータやビジネス文書だけでなく、電子メールやインスタントメッセンジャーなどを通じて交わされるコミュニケーションの結果もデータとして蓄積されることを考えると、このデジタルデータ量は企業活動が生み出す情報量そのものに限りなく近い値と考えられる。

   しかもこれらのデータは1箇所に蓄積されているとは限らない。例えば部門ごとに構築されたWebサイト/ファイルシステム/業務システムのほかにも、グループウェアのような情報共有系のシステムにも分散して蓄積されているのだ。

   知的生産活動という行為の大部分が、情報を見つけだし取捨選択する作業の連続であるとすれば、この状況がどれほど非効率的なことであろうか。

   システムごとに分散している情報を集約して、利用者が欲しい情報に直接アクセスできるインターフェースが提供できれば、知的生産活動を効率的に遂行できるかもしれない。このような企業情報への一元的な入り口のことを、企業情報ポータル(ポータル、注1)と呼んでいる。

※注1:
一般に企業情報ポータル(Enterprise Information Portal)はEIPと略称されるが、本連載では概念としてのポータルと、ソフトウェアやツールとの違いを明確にするため、前者を「ポータル」、後者を「EIPツール」として記載する。

ポータルの導入により利用者は必要な情報を一元的に取得できる/出所:みずほ情報総研
図1:ポータルの導入により利用者は必要な情報を一元的に取得できる
出所:みずほ情報総研


新しいキーワードではない

   企業情報ポータルというキーワードは新しいキーワードではない。インターネットの技術が企業に採用されはじめた1990年代末頃に誕生した技術である。当時はWebサイトや限られた社内Webシステムへのリンク情報を提供する静的なWebページに過ぎなかった。

   しかし現在では電子メールやグループウェア、ファイルシステム、顧客管理システム(CRM)や業務管理システム(ERP)などと連携し、企業におけるすべての情報への入口の実現を目指すEIPツールがミドルウェアベンダやグループウェアベンダを中心に提供されている。


そして今、ポータルが再び注目されている

   多くの企業が企業情報ポータルに注目し、本格的な導入に着手しはじめたのは3年前が1つのピークだったように思われる。当時は都市銀行や大手製造業などの、いわゆる重厚長大な企業において企画・導入が進められた。

   当時は統合や大規模な事業再編などを経て、分散してしまった情報やナレッジ(知識)、新組織内における人間関係の再構築を狙ったナレッジマネジメントの実現手段としての導入が多かったように思われる。

   そして2006年に入りポータルの導入を検討する企業が再び増えてきている。今回は3年前の情報共有やナレッジマネジメントの実現ではなく、ポータルを企業システムの統合プラットフォームと位置づけて検討をはじめる企業が多いようだ。

   まずはポータル導入の目的が変わってきた背景について、IT投資の動向から分析してみたい。

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みずほ情報総研株式会社 平古場 浩之氏
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社   平古場 浩之
システムコンサルティング部コンサルタント
システム開発部門でのSE経験の後、社内システム企画部門、EIP事業企画を経て2003年から現職。現在はナレッジマネジメント、情報共有に関連するコンサルティング業務のほか、EIPやECM(企業コンテンツ管理)、SNS(ソーシャルネットワーク)などのICTツール動向の調査などを担当している。


INDEX
第1回:なぜ今、EIPなのか
企業情報ポータル(EIP)とは何か
  ユーザ企業がITに求めているもの
  解決策はあるか
  新しいプラットフォームとしての期待