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グループウェア調査
中堅・中小企業におけるグループウェアの利用実態

第1回:グループウェアを使い切っていない中堅・中小企業
著者:ノーク・リサーチ  伊嶋 謙二   2006/10/30
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はじめに

   メディアなどで日々3文字アルファベットが取り上げられる昨今、中堅・中小企業(以下SMB)において着々と「グループウェア」の利用率が伸びている。

   「グループウェア」の利用が伸びている理由として、その謳い文句である「簡単」「すぐにでも」「安く」「便利」などの極めてイメージしやすいコンセプトについて、言い換えれば「これで何ができるのか」といった機能を、買い手である企業が「役にたつことをダイレクトに実感」できるからだ。

   というのも、これまでの歴史を紐解いていけば、これと対極にある新ソリューションの多くは概念ばかりが先走り、その多くは市場として定着せずに消えていく運命にあった。その上、これらのソリューションは大きなコストと長い構築期間に加えて、導入効果も見えにくいため、SMBが敬遠しがちになるのは当然といえよう。

   このような状況の中で、ようやくSMBに定着しつつあるのがERP(統合業務パッケージ)である。かつてERPはコンセプトこそユーザに伝わったものの、とにかく「高価」という大きな壁が立ちはだかっていた。しかし現在では、売り手群雄割拠の時代を迎え、低価格のもとで、さらに購買意欲を刺激するようなわかりやすいコンセプトを多くのベンダーが提示するようになったため、ここまで普及したといえよう。

   話が脱線したが全2回で構成される本連載では、ノーク・リサーチで毎年行っている「中堅・中小企業のITアプリケーションの利用実態調査」のデータ(+αとして関連データも加える)を用いて、SMBにおける「グループウェア」の利用実態を紹介していく。なお最新のデータは今年8月に調査を終えたばかりのものである。

   さて第1回では、冒頭でわかりやすいと述べた「グループウェア」のコンセプト(機能)について今一度振り返った上で、SMBにおけるグループウェア市場を概観していく。第2回では、過去数年のデータからSMB市場におけるグループウェアパッケージのシェア・満足度を含めて動向を追っていきたい。

SMBに導入されてからそろそろ10年、今後も利用率増が期待

   「グループウェア」が注目されはじめたのは今から10年ほど前で、実際にSMBに導入されだしたのは98年頃からだ。これはちょうど企業にパソコン導入のドライブが掛かった時期とシンクロしている。

   機能としての「グループウェア」を活用するためにパソコンを導入するのではなく、すでにパソコンが社内に行き渡ったところで、「グループウェア」で1つのグループ(部門=組織=企業)でリンケージして活用しようという流れだ。現在その導入率は6割を超えており、昨年度調査60.9%から3.0ポイント増で63.9%となった。

   年商50億円未満で50.0%、年商50億円以上で76.4%となっており、中堅・中小企業でも規模の大きい企業の方が利用率は高めであることがわかる。いまや企業規模に関係なく、1人1台のパソコンとそのネットワークの利用環境がほぼ完備され、リテラシの高まりもあり、利用感の充実による本来のグループウェアのメリットを享受できる準備が整ったのは事実であろう。

アプリケーション利用率
図1:アプリケーション利用率

年商別に見たアプリケーション利用率
図2:年商別に見たアプリケーション利用率

   グループウェアを導入することは簡単であり、利用する場合も特別なスキルを必要としない。問題は「いかに有効に活用するか」にある。理想としては、ユーザが日々の情報を確実に、かつ着実に入力し、独自のデータベースを構築して、グループウェアの持つ多彩で便利な付加価値を享受することだが、現実は少し違う。

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有限会社ノーク・リサーチ 伊嶋 謙二
著者プロフィール
有限会社ノーク・リサーチ   伊嶋 謙二
1956年生まれ。1982年、株式会社矢野経済研究所入社。パソコン、PC(IA)サーバ、オフコンなどをプラットフォームとするビジネスコンピュータフィールドのマーケティングリサーチを担当。とくに中堅・中小企業市場とミッドレンジコンピュータ市場に関するリサーチおよび分析、ITユーザの実態を的確につかむエキスパートアナリスト/コンサルタントとして活躍。1998年に独立し、ノーク・リサーチ社を設立。IT市場に特化したリサーチ、コンサルティングを展開すると同時に、業界各誌への執筆活動も積極的に行っている。
ホームページ:http://www.norkresearch.co.jp/


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第1回:グループウェアを使い切っていない中堅・中小企業
はじめに
  有効な情報共有には基本機能をフル活用すべき
  そのメリットを享受するために必要なこととは