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第4回:中身の濃い進捗報告会を作るには〜後編〜

著者:ウルシステムズ  村上 歴   2007/8/31
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課題管理表・ToDo管理表だけではみえない進捗状況を共有する

   この連載には、ユーザ企業代表C社の新プロジェクトリーダー・結佐(ゆうさ)氏と、開発ベンダー代表R社の若きエースプロジェクトマネージャー・弁田(べんた)氏が登場します。

   両者の間には立場の違いから来るギャップがありますが、それを埋めるためには、リアリティをもったプロジェクト像を描いて両者の認識をあわせるとよいという思いのもと、2人は奮闘しています。

   最終回となる今回の話のテーマは「第3回:中身の濃い進捗報告会を作るには〜前編〜」に引き続き、進捗定例の定番である「進捗の報告と課題・ToDo管理」です。

   前回の課題管理と同じく、ここで紹介するやり方ですべてのプロジェクトがうまくいくとはいえませんが、どのようなことを工夫すれば、形式的になりがちな進捗定例でユーザ企業と開発ベンダーが同じ立場からプロジェクトを語れるようになるのかをみていきましょう。

まずは全体感をわかりやすく伝える

   弁田氏が席に戻ると、結佐氏からメールが入っていた。

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To: 弁田さん
Subject: 進捗報告でお願いしたいこと

弁田さん

C社の結佐です。お世話になっております。

次回からの進捗報告ですが、以下をご検討のうえ、報告をお願いしたいと思っています。

・まず、今のやり方のままで次の主要マイルストーンが達成できる見込みなのか、それとも遅れそうなのかを一言で教えてください。
・進捗のパーセント表示は、意味が曖昧になるのでいりません。その代わり、現在の工程で作らなければいけないものがいくつあって、そのうちいくつが完成しているのを教えてください
・1週間以上遅れた線表はいりません。実現可能なものにリスケしてください。
・問題と対処については、弊社側にやって欲しいことを中心に記述をお願いします。

具体的なやり方はお任せします。いつも無理難題を押しつけてすみませんが、期待しております。
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   弁田氏は、結佐氏がどういう思いでこのようなメールをだしてきたのかわからなかった。具体策を考えるには本人に相談するのが手っ取り早いと判断し、忙しい結佐氏に少しだけ時間を空けてもらった。こういうちょっとした相談がしやすいのが、C社に常駐している最大のメリットである。

   弁田氏「さっきのメールのことなんですが」

   結佐氏「ああ、すみません、つい先走ってしまったのですが、進捗定例をどうにかしたいと思ってお願いしたんです。進捗定例って、いつも当たり障りがないように感じています。その割に、大事な話は現場から急に上がってきたりするので、やり方を少し工夫したいと思っているんですよ」

   弁田氏「なるほど……そういうことでしたか。では、メールの依頼事項について、もうちょっと確認させてください」

   弁田氏「最初の、マイルストーンが達成できるかを一言で報告して、という話ですが、極端な話、何も問題なければ『問題ありません』の一言でよいということですか?」

   結佐氏「極端にいえばそうですが、もちろん、ちゃんと問題がないことを客観的に示してもらう必要はありますよ。だからその次に書いた『成果物が何個中何個完成しているか』で詳細を報告してもらいます」

   弁田氏「では、報告の最初は『プロジェクト全体の概況』として、直近のマイルストーンと、それに対する達成見込みを書くことにします」

   結佐氏「その前に、全体の大線表があるといいですね。主要マイルストーンは、フェーズの切れ目とチーム間をまたがる成果物の完成時点、あとは契約の更新時点や機器の発注など、発注金額を確定しなければならない時点においてください」

   弁田氏「了解です。……こんな感じですかね」

   弁田氏がその場でサンプルとして作った進捗報告の最初の部分は、以下のようなものになった。
弁田氏の作成したプロジェクト概況報告案
図1:弁田氏の作成したプロジェクト概況報告案
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   結佐氏「いいですね!」

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ウルシステムズ株式会社 村上 歴
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  村上 歴
シニアコンサルタント。8bit時代からのコアな技術屋であり今でもそのつもりだが、最近はパワーポイントの方が主な成果物になっている。「この矢印の意味は何ですか?」のように、文書を添削してくれるツールがつくれないか思案中。


INDEX
第4回:中身の濃い進捗報告会を作るには〜後編〜
課題管理表・ToDo管理表だけではみえない進捗状況を共有する
  進捗状況や遅れへの対処は具体的に
  どんな「進捗報告」が必要なのかは対話からみつかる