OpenStack Days Tokyo開催、Ops Workshopにみる開発者以外を重視する姿勢とは

2016年7月20日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
OpenStackに関する2日間のイベント、OpenStack Days Tokyo 2016が開催された。多くのスポンサーと参加者の影でひっそり行われていたOps Workshopとは?

2016年のプライベートクラウドインフラと言えばOpenStackというのが、多くのエンタープライズ企業が思い浮かべる製品名ではないだろうか。今年4月にテキサス州オースチンで開かれたOpenStack Summitにも多くの日本人エンジニアが参加しており、その流れを受けての東京での2日間のイベントとなったOpenStack Days Tokyo 2016であったが、総来場者数が3000名を超えるという大きなイベントとなった。

特にダイアモンドスポンサーであるミランティスは、OpenStack Foundationのマーク・コリアー氏による基調講演の直後のスロットを最大限に利用して、自社の持つ強みについて訴求したと言えよう。ミランティスは冒頭からOpenStack Summitでも登壇したボリス・レンスキー氏が登場して、この7月に新しく登記されるミランティス・ジャパン株式会社について説明し、その中で新たに日本法人社長となる磯逸夫氏を紹介。ベンダーロックインを防ぐという「Pure Play OpenStack」を、満員の参加者に訴えた。

2日目の基調講演は、日本OpenStackユーザー会の会長であるNTTの水野伸太郎氏が司会を進行する中、NTTドコモ、富士通などが登壇し、JFEスチールなど日本での事例について強調する流れになった。その後に行われたミランティスと同じダイアモンドスポンサーであるNECによるセッションは、自社のOpenStackへの関わりを強調する演出として、OSS推進センターの鳥居隆史氏がNEC社内でOpenStackに関わっているエンジニアを次々と登壇させ短いプレゼンテーションを行うというものであった。最後には、先日NECがインドに設立したOSS関連のソフトウェア開発拠点のシニアエンジニアを登壇させ、エンジニアの層の厚さを見せつけることとなった。

今回のイベントでは、国内のSIではNEC、日立、富士通、NTTコミュニケーションズ、CTC、LinuxディストリビューションやOpenStackのディストリビューションでお馴染みのRed Hat、Canonical、SUSE(日本国内ではノベル株式会社)、外資系ベンダーではIBMやEMCに混ざってハイパーコンバージドのNutanixとSDNのMidokuraがプラチナスポンサーとしてイベントを支援している。その他にも多くの国内外のベンダーがスポンサーとして参加しており、オースチンでのイベントでも目立っていた台湾のベンダーも参加していたのが印象的であった。

またセッションもスポンサー枠のセッションは当然、自社の宣伝となるのは当たり前だとしても、主催者企画としてOpenStackのより深い内容に切り込んだセッションも目立ち、単なるベンダーのプレゼンテーション大会にはしたくないという主催者サイドの意図が感じられた。

エンジニアが集うOps Workshop

そんな中、この記事ではOps Workshopについて紹介したい。これはOpenStackを利用している企業の運用サイドのエンジニアが、自社が抱える問題点や悩みなどを話し合うミーティングで、OpenStack Foundationが支援するコミュニティ活動の一環である。

OpenStack Foundationのコミュニティ活動

https://wiki.openstack.org/wiki/Governance/Foundation/UserCommittee

今回は、OpenStack Days Tokyoと同時開催ということで、東京に本社を構える多くのIT企業、NTTなどのキャリア、システムインテグレーターなどから多くのエンジニアが参加し、総勢40名弱というミーティングとなった。OpenStack Daysと同時開催のイベントなので、当然ながらイベントのスポンサーが自社の宣伝に励んでいるセッションと並行して行われており、しかも13時半から18時までという長丁場のミーティングである。スポンサー各社のプレゼンテーションを聞くよりも、価値があると感じたエンジニアが40名弱はいたということであろう。

実際にこのミーティングの冒頭では、OpenStackの導入事例としてNTTレゾナントの事例、NTTコミュニケーションズのパブリッククラウドサービスのプラットフォームとしての事例、GMOの事例などが紹介された。通常のセッションのように一方的なプレゼンテーションではなく、随時、参加者から質問が飛び出す辺りは、ワークショップという名前に負けない内容となった。

狭い部屋だが熱気のあるワークショップとなった

狭い部屋だが熱気のあるワークショップとなった

そしてOpenStackを運用する際の問題点という部分の議論では、「OpenStackのライブマイグレーション(別名:ローリングアップデート)は可能か?」「ドキュメントが更新されない問題点や、OpenStackが吐き出す大量のログの処理をどうしているのか?」などといった課題が挙げられ、参加者からの赤裸々な実情が伺える内容となった。今回のワークショップでは解決策が即座に提示されるということはなかったが、実際に運用をしているエンジニアが各々抱えている問題点について、本音ベースで話をすることでエンジニア同士の横のつながりができ、チャットやメイリングリストだけでは共有しきれない問題点やアイデアなどが共有されたということが成果だったように思われる。

またOpenStack Foundationのコミュニティマネージャーであるトム・ファイフェルド氏が、1日目のミーティングに参加していた。ファイフェルド氏は、日本語で行われる議論を全て理解しているとは思えなかったが、進行役を務めたNTTの水野伸太郎氏の質問に的確に答えることで、コミュニティマネージャーとしての役目を果たしていた。これをみてもOpenStack Foundationが、このようなワークショップを重視していることがわかる。

進行役のNTT水野氏とコミュニティマネージャーのトム・ファイフェルド氏

進行役のNTT水野氏とコミュニティマネージャーのトム・ファイフェルド氏

またOpenStack関連のソリューションを提供しているベンダーのソリューションについても手厳しい意見が飛び交い、ユーザーサイドからの評価がよく見える一面もあった。OpenStackのソリューションを提供しているベンダーの担当者にとって、セッションで宣伝するのも大切だろうが、こうした現場での評判を自分の耳と目で確かめて、開発現場にフィードバックすることの重要さにも気づいて欲しい。

ワークショップの内容についてはここで確認できる。

Ops Workshopの議事録

https://etherpad.openstack.org/p/JP-Ops-workshop-2

次回の日本でのOps Workshopは、12月の沖縄での開催が予定されている。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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