Googleの止まらない人材流出が示すその「弱み」と「暗い展望」
クリス・アームソン氏は、Googleの自動運転車プロジェクトの技術チーフだったが、その彼が今月初めに他のベテラン2人を連れて会社を去った。
この退社はかなりインパクトのある出来事だ。アームソン氏は(Googleの共同設立者セルゲイ・ブリン氏を除けば)3人の主要なエンジニアの最後の一人であり、同部門は自動運転車レースで優勝したスタンフォード大の『Stanley』から2005年に端を発している。
セバスティアン・スラン氏とアントニー・レヴァドゥスキ氏の二人もまた有名人だったが、それぞれがUdacityとOttoを始めるため、2013年、2014年に会社をやめている。
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プロジェクトを立ち上げた才能が去っていくことはシリコンバレーでは自然なことであり、FacebookやTwitter、PayPalにもともと居たエンジニアの大半は、数年たてば会社を去っている。だが、こういった自然ななりゆきが会社にとって健康的であるとは限らない。Googleの場合、自動運転車部門のキーパーソンを失うことは多大な時間と資金の浪費につながりかねない。
迫り来る新たな競争相手
自動運転車市場は加熱しており、Fordは最近、ハンドルやペダルがないLevel4の自動運転車を2021年に売りだすと発表したばかりだ。BMWもその数カ月前に同じような発表をおこなっている。
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GMはCruise Automationを6億ドル、Lyftを5億ドルで買収し、TeslaはAutoPilot機能を使って1億マイルを走破したと今年のはじめに発表し、Googleの自動運転が達成した300万マイルを大きく上回った。
さらにいうと、カーシェアリングの大手UberもVolvo SUVを使った自動運転車を自社の戦列に加えるプランを掲げたところだ。
しかも、Googleの自動運転システムに興味を示している大手自動車メーカーはいない。検索大手の同社にとって悲惨な状況なのかもしれない。アームソン氏はGoogleを去る前、GMやFord、そのほかの大手自動車メーカーとのパートナーシップを模索していた。
Googleがパートナーシップを築けない限り、自前で車を作るかFiatやVolvoといった小規模なメーカーと手を組むしかない。自動車を販売したりカーシェアリングでUberと争うのはそこからだ。こういったGoogleの弱みについては、以前記事にしたことがある(関連記事参照)。天才肌の人間にありがちな弱みのような気もするが、ビジネスの世界ではそうも言ってられないだろう。
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さて、自前か小規模メーカーと手を組むか、どちらの選択肢も惹かれるものとは言いがたい。我々の予想では、2020年には自家用車率が下がり、メーカーにとって自動運転車は今ある普通の車よりコストがかかるものになる。GoogleがUberとカーシェアリングで争うのも難しいことだろう。
自動運転車市場で起こるであろうことは、Googleの将来の雲行きを怪しくしはじめている。同社の自動運転車部門の評価額は100億ドルだが、研究開発にかかるコストは投資者およびGoogleの経営陣の懸念の種になっている。もし自分たちの自動運転車を投入するに見合う市場が見つからない場合、部門が売却されることもあるのではないだろうか。
ReadWrite[日本版] 編集部
[原文4]
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