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ヘルスケア業界に潜む、IoT活用の可能性と課題

2018年1月30日(火)
ReadWrite Japan

テクノロジーはヘルスケアや商業、金融を含むあらゆる産業を変えた。ヘルスケアは診断や治療に最も早くテクノロジーを取り入れている産業であり続けている。IoTに関して言えば、医療用デバイスにこれを取り入れることで、サービスの効率や質が図られている。

以下、IoTがヘルスケア業界でどのように使われ、全体にどういった影響を与えているかを示す統計のいくつかを見てみよう。

・ヘルスケア団体の約60%が施設にIoTデバイスを導入している。

・団体の73%はIoTをメンテナンスとモニタリングに利用している

・団体の87%は2019年までにIoTの導入を計画しており、これは同じく導入を考えているさまざまな分野の企業の平均が85%なのに対して若干高い数字である。

・ヘルスケアでのIoTの使われ方のうち、64%近くは患者のモニタリングである

・ヘルスケア団体の89%はIoT絡みの脆弱性問題に悩まされている

IoTデバイスが胎児の状態や血糖値レベル、心電図や体温などの測定に用いられていることは良く知られているところだ。しかしながらこれらツールの中には専門家のフォローアップを必要とするものもある。

さらには多くの病院が病床の空き具合を把握できるスマートベッドの導入に資金を投じている。IoTといえばデータのプライバシーとセキュリティについての懸念もある。だがしかし全ての人たちが適切な治療を受け、医者と患者の関係が完璧な状態にある限り、そのことは重要では無いかもしれない。

ヘルスケア業界は今やIoTを使って新しいレベルのパーソナライズされたヘルスケアをあらゆる人々に提供しようとしているところだ。

遠隔ヘルスモニタリングによるコスト削減

ヘルスケア団体にとってIoTを取り入れる一番のメリットはコスト削減だ。専門家たちは患者が家や職場などどこにいようと関係なく、わざわざ病院に患者が出向かなくとも遠隔で健康状態をモニタリングし、治療を進めることができる。

このことにより患者が大量に押し寄せることに耐えきれない専門家の負荷は下がる。また医療センターのスタッフ不足が診察に影響を及ぼすことも無くなるだろう。医療機関にかかりづらい第三世界や、洪水、自身、津波やハリケーンなどの災害に見舞われた地域においてもIoTは有効だ。テクノロジーにより、地域を問わず世界中でより良い医療設備が提供されることになる。

医療データの収集と理解

患者はその滞在期間中、心拍計、輸血機、人工呼吸器などの医療器具に囲まれて過ごすことになる。だが危機の運用および情報の記録は時間がかかり、またスタッフによるミスも起こりやすい。

今日ではIoTにより、患者のデータは自動的に電子健康記録システムに送られる。これによりデータの精度は上がり、看護師はより多くの時間を介護に回すことができる。

一方で医師は治療の方針を定めるためにデータを解釈しなければならない。医療機器の増加もあり、適切な診断結果に辿り着くのは大変なこともあるだろう。IoTソリューションは現場の人たちの支えとなり、さまざまな機器からのデータを集めて情報の氾濫を招くことなく患者の健康状態を見抜く助けとなる。

患者のモニタリング

Apple Watchなどのウェアラブルデバイスは進歩し、患者の健康状態のモニタリングに重要な役割を担いつつある。しかしながらこれらはいまだ、一般的な医療機器と比べて正確性に欠けることもある。

一方でウェアラブルデバイスは血圧や心拍数、脳波や体温、位置などの異なる情報を検知し分析することができる。
ヘルスケアの分野でIoTは革命を起こしているが、それでも分かっておかなければならない課題もいくつかある。それらを見ていこう。

ヘルスケアにおけるIoTの課題

セキュリティ上の懸念

規制する側にとって一番の懸念はデバイス間でやり取りされ、保管される個人の健康情報の安全についてだ。ヘルスケア団体の多くは扱いに注意が必要なデータのやり取りは暗号化した上で行なっているが、データをやり取りするアクセスポイントの安全性にまでは手が回っていない。接続するデバイスの数が増加するにつれ、このことは大きな脅威となってくることだろう。

複数デバイスの統合

複数デバイスの統合も、ヘルスケアでIoT導入を成功させる上での課題である。患者のデータを集めるため、今では病院内の設備の多くは接続できる必要性がある。例えば心臓病の患者がいたとすると、おそらく同時に高血圧の面からも測定が必要だ。

デバイス製造業者たちが共通のプロトコルや標準を作ることに同意していないのが一番の問題だ。さまざまなモバイルデバイスがネットワークに接続してデータ収集を行っているが、プロトコルが違えばデータをまとめるプロセスは複雑化する。医療用デバイスが協調して動かないことは、ヘルスケアでの成功は限られたものにするだろう。

大量のデータから推論しなければならないこと

データの収集には困難が付き物だ。患者から集められたこれらデータの組み合わせから新しい答えが生まれるかもしれないが、優れた解析プログラムやデータの専門家無しにその結論に至るのは容易なことではない。

増え続けるデータから結論を導き出すのは多くの医療専門家たちが厳しいと感じており、それらデータの中から使い物になる価値あるデータを特定することは非常に重要である。データが急速に増える中、意思決定プロセスはその正確性を欠いている。この懸念はより多くのデバイスが常時大量のデータを生む出すようになれば、より顕在化する。

結論

IoTがヘルスケア業界、そして患者の扱われ方を変えるのは疑いないことだ。医師たちにとってだけでなく、基本的な医療を受けられない人達にとっての利益にもなる。データのセキュリティなどいくつかの課題を解決することで、プライバシーを危険にさらすことなく医療業界に革命をもたらすことだろう。テクノロジーを忌まわしいものではなく恩恵ととらえ、これから何が起こるか見守ることとしよう。

RAY PARKER
[原文4]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
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