実践!ビジネス・プロセス・インテグレーション 2

サービス呼び出し(Invoke)方式

サービス呼び出し(Invoke)方式

O社のネット注文システムのビジネスプロセスではサービスの呼び出し方式として次の2つの方法を利用している。

同期呼び出し
呼び出し先のシステムから応答が戻されるまでビジネスプロセスの処理はブロックされる。要求の順番通りに応答が戻る。短い時間で結果が戻される処理で使用する。
非同期呼び出し
呼び出し先のシステムから応答が戻されるまでビジネスプロセスは別の処理を実行できる。要求の順番通りに応答が戻ることは保障されない。比較的時間のかかる処理で使用する。

表3:ビジネスプロセスではサービスの呼び出し方式


これら2つの呼び出し方式の実装について、O社のネット注文システムの「注文情報の入力」処理と「発送準備の手配」処理を例に見ていく。

同期呼び出し

注文管理システムへの注文情報の入力処理は比較的短い時間で結果の戻される処理であり、同期呼び出しによる実装方式に向いている。そこで、同期呼び出しでサービス呼び出しを実装するために、インターフェースに入力と出力を定義して1つの"Invoke"アクティビティで出力を受け取るようにビジネスプロセスを記述した。

同期呼び出し
図4:同期呼び出し

非同期呼び出し

発送管理システムへの発送準備の手配を依頼する処理では、依頼を受けた発送管理システムが発送を完了してから完了の通知をプロセスに戻している。この処理は比較的長い時間がかかるため非同期呼び出しに適している。この呼び出しを非同期呼び出しで実装するために、"Invoke"アクティビティ と"Receive"アクティビティを図5のように組み合わせてビジネスプロセスを記述した。

非同期呼び出し
図5:非同期呼び出し

ここでは、一度"Invoke"により呼び出した処理の結果を後続のアクティビティである"Receive"で受け取っている。しかし、ビジネスプロセスは一度"Invoke"アクティビティにより処理を呼び出した後、発送管理システムとの接続を閉じてしまう。そのため、このような連携を実現するには応答メッセージを要求メッセージと関連付けるための仕組みが必要となる。

WSBPELではこのような関連付けを行うためにCorrelation setと呼ばれる仕組みを提供している。Correlation setとはビジネスプロセスのインスタンスを特定するためのプロパティセットであり、各プロパティは入出力のメッセージに含まれる情報から定義される。

O社のネット注文システムでは、プロセスのインスタンスは注文データに含まれる注文番号により特定できることから、Correlation setとして注文番号を使用する。また、Correlation setの初期化は最初に注文データを受け付けたときに行うものとし、「発送準備の手配」での"Receive"では最初に初期化された値と同じ Correlation setを持つメッセージを自分宛のメッセージだと判定させることにする。

図2のWSBPELの中でこれを記述しているのは次の箇所である。

Correlation set定義箇所の抜粋
図6:Correlation set定義箇所の抜粋

ここでは、orderNumberという名前のプロパティセットをcorrelation setとして定義している。このorderNumberと各インターフェースのパラメータ内の値との関連付けはWSDLファイルの中で記述する。この correlation setを使用した"Receive"アクティビティの記述は次のようになる。

注文データを受け付ける
図7:注文データを受け付ける"Receive"記述箇所の抜粋
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

注文データを受け取る際にはCorrelation setの初期化を行うため、correlation要素のinitiate属性がyesとなっている(青字箇所)。発送管理システムからの応答を受け取る際の"Receive"では初期化を行わないためこの属性はnoとなる。

WIDを使用して開発を行った場合、先述のビジネスプロセスエディタ上のGUIベースでの設定からこれらの成果物が生成される。

この記事をシェアしてください

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る