ソーシャルグルメ写真アプリ『miil』開発チームが目指す、“ニットのような”チーム作り
フリーランス マーケター
梅木雄平
フリーランスにてWebサービスの新規事業のコンサルティングやマーケティング、ライティングを手掛ける。VC業界での経験を活かした事業分析や投資家関連の記事を展開するブログメディア「The Startup」を主宰。有料オンラインサロン「Umeki Salon」は会員100名突破間近
『miil』を運営するFrog Appsは2012年5月に2.4億円の資金調達を実施しており、今後さらなる成長が期待されるスタートアップだ。今回はFrog AppsのCTO、増井雄一郎氏に『miil』の開発の概要について伺った。
増井氏はフリーランスのエンジニアとして渡米していた際に写真共有アプリを制作した経験があり、その経験を元に写真共有アプリのフレームワークを作ろうと考えていた。そんな折に、食べ物の写真共有アプリをやりたいと思っていたFrog Apps代表取締役の中村(仁)氏と出会う。増井氏は同氏の話を聞き、自身のノウハウを活かして『miil』に取り組めれば面白いのではないかと思い、『miil』を開発するFrog AppsにCTOとして参画することになった。
『miil』は2011年10月にリリースされた「食事をもっと楽しもう」をコンセプトとしたソーシャルグルメ写真アプリで、特に主婦が投稿する手作り料理の写真を中心にコミュニティを醸成している今注目のアプリである。コミュニケーション機能の一つである「食べたい」ボタンは現在(2012年6月13日)までで約200万回以上押されている
サーバ・iOS・Andoroidの3名を1チームにし、2ライン体制を構築したい
2011年10月にアプリをリリースした際は、サーバサイドを増井氏が手掛け、iOSエンジニア1名がフロントエンドを開発していた。今はAndroid開発を担当するエンジニアが1名加わった3名体制となっており、賄い切れない部分は外注している。適材適所の開発スタイルを進めているため、今までiOSエンジニアは4名変わっており、みなフリーランスエンジニアであった。
「開発チームを作るよりも、まずはサービスの土台作りを優先してきた」と話す増井氏
スピードを優先したため、チームを組んでじっくり開発するよりも、能力が高くて勘が良い人を短期間で採用してきた。4名が入れ替わり立ち代わりiOSアプリ開発にかかわっていてもソースコードは一度も破綻しておらず、引き継ぎもスムーズ。能力の高い人で素早く立ち上げるという開発方法は、一つの手法として機能していた。
また、増井氏自身がTitaniumのエバンジェリストとしてオープンソースコミュニティに携わっていることもあり、大人数で一つのシステムを作ることに関しては一日の長がある。『miil』の開発でも、プログラムをパートで分けたり、後でマージしやすい開発環境を作れたりしたのも、その経験が活かされているそうだ。
だが、「今後さらにサービスを拡大していくには、現状では開発速度が追いつかず、フルタイムのエンジニアを採用したい」と、増井氏は話す。サーバサイド、iOSエンジニア、Androidエンジニアの3名を1チームとし、既存のチームに加えてもう1チーム組成し、平行して2ライン体制を整えたいと考えている。チーム内でプロジェクトを1カ月くらいずつ回すサイクルを作りたいようだ。
オンラインベースのつながりで、ニットのような開発チームを目指す
普段オフィスで隣り合わせの席で仕事しているわけではなく、それぞれがオフィス外で仕事をしているFrogApps。Facebookグループでのコミュニケーションを中心としているのが、開発の決めごとだ。
口頭だけのコミュニケーションではなく、オンラインだとすべてログが取れているため、結果として抜け漏れがない密なコミュニケーションができている。例えば、Facebookグループで仕事の相談や情報共有をしたり、タスク化した事項に関してはRedmineに落とし込んで管理したりしているそうだ。その他に週に2度、1時間ほど『miil』関係者全員参加のグループチャットで業務連絡を行い、週に1度、全員がオフラインで顔を合わせた打ち合わせをしている。
プロジェクトの進め方に関しては、増井氏が以前1人の部下にプレゼンするために作成した資料もあり、プロジェクトの方針をチームに分かりやすく伝える努力をしている。
「ニットのようなチームであることが良い開発チームの条件」であると、増井氏は考える。「ニットのような」とは、交互に編み込みができているという意味である。
スタートアップにおいては、コミュニケーションの取りやすさが特に重要であり、呼吸が合うか否か、相性の要素も強い。相性の良さは第一印象でパッと判断できることも少なくないそうだ。あとは、サービスのプロデューサーがやりたいことをどう実現するか。プロデューサーが言っていることを把握して、サービスをどう作れるか。そういう機転を利かせられるか否かも重要だと語る。
小さい会社のチームビルディング体験はエンジニア人生の資産になる
今まではすべて知り合いのツテで採用しているということもあり、Frog Appsの平均年齢は30代後半。特にエンジニアは自らのソースコードを公開しているメンバーが多く、講演でスピーカーを務めるようなメンバーもおり、能力が高いフリーランスが多数携わっていた。資金調達したばかりということもあり、Frog Appsではエンジニア採用に力を入れていくようだ。
開発チームは3名1チームの2ライン体制にしたいと上記でもあったが、現状は1ラインのため、新規に1ライン組成したいと考えており、中でもサーバサイドとiOSエンジニアの採用ニーズが強い。2ラインで大きなタスクを進めるチームと、細かいタスクに対応するチームに分けて開発を進めるのが効率的であると増井氏は考えている。ちなみに開発言語はRubyであり、サーバサイドはRubyを書けることが望ましい。
開発体制強化のため、今後はフルタイムでコミットできるエンジニアを歓迎していると言う
『miil』では基礎的な部分の作り込みはすでにできているので、今後はUIの作り込みや、マーケティングの施策と連動した素早い実装ができるエンジニアを求めている。スマートフォンアプリが好きで、新しいことに対して興味があり、ビジネスサイドのメンバーとコミュニケーションが取れる人材が望ましいようだ。現状のチームに20代はいないが、より幅広い年齢層にするためにも、20代のメンバーも歓迎している。
『miil』の立ち上げに関しては、チームメンバーがノウハウを持ったベテランが多かったということもあり、ノウハウを結集して効率的に素早く立ち上げた。若手が多いチームであれば、時間を大量に投下し、こたつでレッドブルを飲みながら開発するというのも悪くないし、自身も若いころにそういう時期があったと増井氏は振り返る。チームメンバーに合わせたカルチャーの醸成はチーム力を高めるために必要なことであろう。
「若いうちに小さい会社のチームビルディングを体験し、共に試行錯誤しながら一緒に勉強できることは、エンジニア人生の資産になるだろう」と増井氏は語る。増井氏も上記の「プロジェクトの進め方」のノウハウを公開しつつ、メンバーと共に、良いチームを作っていきたいと考えているようだ。
今の時代、入社した会社に一生在籍することは考えにくく、スタートアップであれば2~3年程度の周期で転職や独立などでステップアップしていくエンジニアが多いのではないかと増井氏は考えている。だからこそ、『Frog Appsを踏み台にステップアップを狙いたい』というようなエンジニアも歓迎したいそうだ。
撮影/小禄卓也(編集部)
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