SoftLayerの東京データセンターがまもなく始動、創始者のランス・クロスビー氏が来日登壇
日本アイ・ビー・エム(以降、日本IBM)は11月12日、IBM Cloud Exclusive Previewと題した同社のクラウド製品群に対する発表会を実施した。イベントに際しSoftLayer創始者のランス・クロスビーも来日し、兼ねてから予定されていた日本データセンター開設についても再度アナウンスされた。
冒頭のオープニングセッションでは、取締役副社長 執行役員の下野雅承氏が登壇し、クラウドはもはやコンピューターテクノロジーだけの話ではなく企業のITの変革をもたらすものだとし、改めてエンタープライズシーンおけるクラウドの重要性を説いた。
続いて日本IBMのクラウド事業を率いてきた、執行役員 クラウド事業統括担当の小池裕幸氏が登壇し、産業に関係なくデジタル化が進む今日では、消費者が得られる情報が増えており、旧来の営業スタイルでは立ち行かなくなっている。技術的な面でも世界同時にサービスを立ち上げるためにはクラウド技術が不可欠であり、社内の変化として事業部門としてはITに取り組まないと差別化に遅れてしまう、開発者もクラウドがないとイノベーションに追いつけない、と語った。
IBMが提供するクラウドのポートフォリオは以下のとおりだ。IaaSからSaaS、またその上のビジネスプロセスまでをワンストップで提供している。
小池氏は、「企業でクラウドを活用するためには、品質と品格の2つを兼ね備えることが重要だ」と説明した。クラウドに対するセキュリティの懸念は今も根強くSoftLayerとしては単にセキュリティ製品を搭載しているだけではなく、アーキテクチャを考えている。具体的には専用ファイヤーウォールの構築、シングルテナント対応などを挙げ、自社のハードウェアのように扱えることが重要だとした。そして世界規模で同時に展開できるグローバルな規模や、オープンな技術を活用していく優位性についても強調する。
また“品格”という表現を用いて、オープンな技術を活用することや個々の顧客に最適な環境を提供できること、さらにアプリケーションの要件に合わせられることなどを掲げ、品質面以外での他社との差別化もアピールした。
直近のアップデートとして、年内の東京データセンター開設、SAPとのパートナーシップ提携、また大きな話題となったマイクロソフトとの提携などを改めて説明した。
続いて業界ごとにクラウドを活用できるためのガイドラインの発表があった。スピード感を出すために要件をガイドとしてまとめクラウドを導入しようと考える企業との意思疎通をしやすくした。具体的には11個のプロファイルが発表されている。金融向けとゲーム向けでは要件が全く異なり、たとえば金融はセキュリティの観点でベアメタルで独自のサーバーや専用のファイヤーウォールの設定が前提となっている。ハイパフォーマンスプロファイルでは、スピードの観点でベアメタルを選択、ASPERAというデータの圧縮技術や大容量メモリの採用などが挙げられている。
最後に「クラウドはビジネス成長の原動力、オンプレミスは減価償却の関係で技術が塩漬けになってしまうがクラウドであれば常に最新の技術を享受できるのが強みだ」としてセッションを終えた。
そして、SoftLayer創始者のランス・クロスビー氏が登壇、国内のイベントでは初めてのイベント講演となるそうだ。
SoftLayerは2005年の5月に9人で創設した世界で最初のクラウド企業、AWSが台頭するより1年ほど前になる。Amazonは書店、Googleは検索という自社サービスのためのインフラがもとになっているが、われわれは初めからクラウドのために設計してきた、と語る。銀行や医療機関などを例に挙げ、エンタープライズ領域での自社の優位性を強調した。
SoftLayerの最大の特徴として、ベアメタル(物理サーバー)で高性能なクラウド環境を提供できる点がまず挙げられる。また、シングルテナント(全体の60%を占めるという)でサービス展開しセキュリティの懸念を払拭している点やSoftLayerデータセンター間の転送料金を無料提供している点など、競合他社にはない強みだと語る。これによっては顧客は自前のデータセンターのように操作できるとした。
IBMは現在、157のSaaS群を持ち、その半分がSoftLayer上で動作しているという。あと半年ですべてSoftLayer上に移行される予定だとした。同社のPaaSであるBluemixはいま70あまりサービスだが年内には200、来年末には2000まで拡充していくと抱負を語る。最後にIBM Cloud marketplaceについても触れ、AWSと違いIBMが評価したものが組み込まれていることが重要だと強調した。
イベントの最後には国内の導入事例が多数紹介され、パートナー企業によるソリューションの紹介、筑波銀行による計画中の事例などの発表で締めくくられた。
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