ルータの負荷を軽減できるルート集約の考え方
2015年4月6日(月)
この連載では、Cisco CCENT/CCNAの資格試験対策とするために、Cisco Press公式ガイドブックに掲載されている例題を抜粋し、その例題の解答について解説を行っています。
ルート集約は、複数の細かなルートに代わる1つのルートを使用することです。今回は、ルート集約の概念についての例題を説明します。
■ルート集約の概念についての例題
まずは、ルート集約の概念についての例題を以下に示します。
※上記の問題2は書籍『シスコ技術者認定試験 公式ガイドブック Cisco CCENT/CCNA ICND1 100-101J』 p.581より抜粋。
●例題の解説
各選択肢のアドレス範囲が、3つのルート(経路)を含んだ1つの集約ルートとして適切であるかを判断する例題です。
ネットワークのアドレス範囲は、サブネットマスクで示すネットワーク部の長さ、プレフィックス長を短くすることで広くなります。各選択肢のアドレス範囲を計算して、そのアドレス範囲に問題文で示された3つのサブネットのアドレス範囲が含まれていれば、そのアドレスは集約ルートとして機能します。
アドレス範囲は、IPアドレスとサブネットマスクから計算します。計算は、サブネットやVLSMでのアドレスの計算と同じように行います。
表1は、サブネットマクスで表現された選択肢について、そのプレフィックス表記とアドレス範囲の計算結果です。
表1 プレフィックス表記とアドレス範囲の計算結果
問題文で示された3つのサブネットが含まれているアドレス範囲は、表1からa、b、eであることがわかります。これらは、集約ルートとして機能します。
よって、集約ルートとして使用できないものは、10.1.55.0/24の1つのサブネットしか含まれていないc、dの2つになります。
問題文をよく読み、「でないもの」、「2つ」などのキーワードを読み飛ばさないよう気をつけましょう。
●ルート集約の概念について
ここでは、ルート集約の概念について簡単にまとめてみます。
ルート(経路)が多くなるとルータ内のルーティングテーブルが大きくなり、ルータのメモリを消費します。パケットの転送時にルーティングテーブルを照合するときのCPUの負荷も大きくなり、ルータ間でルートをアドバタイズするために帯域幅を使います。ルート集約を利用して、複数のルートをより大きなアドレス範囲で集約した1つのルートに置き換えることで、これらの問題が改善します。
ルート集約は、アドレスの計画とアドレスの計算により行われます。アドレスの計算は、サブネット化の計算に基づいています。また、アドレスの割り当てはルート集約ができるように将来を見越した適切なサブネット化計画により行います。
ルート集約のしくみを図1で見てみましょう。ここでは、3つの/24のネットワークを集約してみます。
図1 ルート集約のしくみ
プレフィックス長を1ビット短く、つまりサブネットマスクを左に1ビット左へ動かし、/23とすると基本的には2つの/24のルートを集約することができます。新しいサブネットマスクで見たネットワーク部が同じ値であれば、それらは集約できたことになります。第3オクテットに注意してみると/23では6と7、8と9を集約することができます。
しかしながら、7と9を集約するには、4ビット左に動かして/20としなければなりません。結果的には、0から15までの16個の/24のルートを集約してしまうことになります。
ルート集約の手順は次のようになります。
●集約の対象となる複数のIPアドレスを左から見ていき、異なる部分に注目して2進数で表現します。
●集約する対象となるIPアドレスのネットワーク部が等しくなるまでサブネットマスクを左に動かします。
●ホスト部の全ビットを0にすることで、集約後の新しいルートのIPアドレスが求まるので、これを10進数で表現します。
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