GitHub、初めてのコミュニティイベント「GitHub Universe」を開催
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オープンソースのソースコードリポジトリサービスの最大手、GitHubが開催する初めてのコミュニティイベント、「GitHub Universe」が2015年10月1日と2日の2日間にわたってサンフランシスコ市内で開催された。
約1000人の参加者はピア70というフランシスコ湾に近い元倉庫をそのまま使った会場で2日間のイベントを満喫したようだ。通常はモスコーネセンターなどのイベント会場かホテルのカンファレンスルームを使って行うイベントをあえて元倉庫の内側にデコレーションを施して会場に変えて見せたのはオフィスのデザインにもこだわるGitHubならではと言えよう。
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図1: GitHubの受付。ホワイトハウスの執務室を模している。
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図2: 会議室の様子
では2日間のイベントを振り返ってみよう。イベントの最初のキーノートはCo-FounderでCEOのクリス・ワンストラス氏だ。
いかにもオタクらしい黒のジーンズに黒のTシャツで登壇したワンストラス氏は早口のプレゼンテーションでこれまでのGitHubの歩みを紹介。既に1100万人の登録ユーザーと3600万人の月間のビジターがいること、毎日1000人の人が初めてPullリクエストを経験していること、同様に毎日、5000個の新しいリポジトリが作られていることなどのデータを紹介し、オープンソースソフトウェアのソースコードの共有と公開のためのデファクトスタンダードであるという部分を強調した。
ただし、常に戦略が正しかったわけではなく紆余曲折の過去をジョークを交えて紹介。創業当初は個人のデベロッパーだけを相手にしていたサービスだったので「Social Coding」がキャッチコピーだったが、開発を行う人間は個人だけではなく企業にも多数所属しているという当たり前の状況に気が付いてOrganization(企業や教育機関などの組織向け)そしてEnterprise(企業における業務システム開発での利用)に向けて進化してきたことを振り返った。ここで強調していたのはソフトウェアのあり方としてオープンソースソフトウェアと企業が利用するEnterprise向けのソフトウェアが対立するものではなく「企業が使うシステムがオープンソースソフトウェアであることが当たり前になってきた」というように状況が変化してきたことに対応して会社のキャッチコピーを変えてきたということだろう。つまりオープンソースソフトウェアの開発は個人が趣味の時間に行うものから、企業の基幹システムがオープンソースソフトウェアの上で構築されていることを背景に企業内からリポジトリを使いたいというニーズに合わせたものと理解できる。さらにアメリカでの政府機関や官公庁などがオープンソースソフトウェアを積極的に活用し、入札などにおいてもオープンソースソフトウェアが必須条件になっていることを反映しているということだろう。
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図3: 過去を振り返るワンストラス氏
次に紹介したのは、GitHub DesktopとGitHub Enterpriseだ。GitHub DesktopはGitHubをデスクトップアプリから利用するためのWindowsとMacintoshのネイティブのアプリケーション、そしてGitHub Enterpriseはオンプレミスで利用することを想定した企業内でのGitHubアプリケーションでバックアップや管理機能などが強化されている。ここでのトピックはマイクロソフトのVisual StudioからGitHubを使うためのプラグインをマイクロソフトがオープンソースソフトウェアとして公開しているという部分だった。Webのアプリケーションに特化していると思われるGitHubだが、実際は様々な言語、プラットフォームでのソフトウェア開発に利用されている。これまでVisual StudioがWindowsおよび.Netなどのマイクロソフトによる閉じた環境に対応していると思われていた訳だが、実際にはマイクロソフトはオープンソースソフトウェアのコミュニティに向けて多くの労力を注いでいる。今回もスポンサーとしてこのイベントにも参加しており、GitHubが開発を進めている「Git LFS(Large File Storage)」のセッションにマイクロソフトのエンジニアが参加しているなど、真剣にオープンソースソフトウェアのコミュニティに参加する態度を示している。ワンストラス氏も壇上で「マイクロソフトは真面目にオープンソースソフトウェアにコミットしている」と賞賛を送っていた。
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図4: GitHub Desktopを紹介するワンストラス氏
ここで初めて紹介された「Git LFS」はGit上で数十メガ規模の大きなファイルを扱うためのコマンドラインアプリケーションでソースコード以外に画像ファイルなどを格納して共有するなどの利用が楽になるという。これもプログラミング言語によるソースコード以外にGitHubの利用が拡がっている証拠のひとつだろう。例として弁護士がクライアントなどとの情報交換のためのプラットフォームとしてGitHubを使っていることを紹介し、「実際にGitHubの弁護士が使っている画面がこれ」と紹介されたものは丁寧にタイトルなどが塗り潰されており逆にリアリティのあるスライドとなった。
更に全く新しいソフトウェアとして「Atom」と「Electron」を紹介。Atomはテキストエディタ、ElectronはクロスプラットフォームのデスクトップアプリをWebのテクノロジー(JavaScript、HTML、CSS)で開発を可能にするフレームワークと解説し、「今更エディタ?って言うかもしれないけど、みんな、テキストエディタ、大好きだよね?」というジョークで会場が笑いに包まれたのがいかにもGeek的で微笑ましい瞬間だった。
その後、スウェーデンのベンチャー、YubicoのCEO、Stina Ehrensvardが登壇し、GitHubの認証システムにYubicoが開発したYubiKeyというUSBに挿して使うデバイスを紹介。これはGitHubへのログインに際して、2段階認証を実現するもので、難しい設定や面倒な手順を踏まなくても簡単に使えるPKIベースの認証デバイスだ。そのデバイスを使った2段階認証にGitHubが対応し、よりセキュアなアクセスを可能にしたという紹介であった。なお、GitHubとの連携に関しては以下のビデオを参照して欲しい。
会場でも参加者全員にこのイベントに合わせてデザインされたYubiKeyが配られ、すぐにトライできるように配慮されていた。
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図5: GitHub特性のデザインのYubikey。下に見えるのは会場で配られていたOctoCatのシール
ここでワンストラス氏はセキュリティについていままでどちらかと言えば面倒なモノ扱いだったセキュリティがこれから10年でもっとも重要な問題になるだろう、そのために様々な製品がもっと簡単にシンプルにセキュリティを実現できる必要があると強調した。
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図6: ビジネス向けのパートナーを紹介するワンストラス氏
最後の締めくくりはGeek向けのサービスからEnterprise向けに成長している証として、IBM、SAP、Salesforce、Microsoftなどとのパートナーを紹介した。さらに「20世紀のIT業界はハードウェアの時代だった。IBMやUnixなどのハードウェアが主流。そして21世紀はソフトウェアの時代と言われているが、私はこれからはピープルの時代だと思う」と語り、すべてのものがソフトウェアで制御される時代になる、そして極めて多くの人がプログラミングをするようになる、その時にGitHubはデベロッパーを支援する役割を果たしていきたいと語り、キーノートを終えた。
約1年半前に女性エンジニアとのトラブルで共同創業者のトム・プレストン・ワーナー氏が退任し、そのあとを引き継いだクリス・ワンストラス氏だが、これからのEnterprise向けの成長と日本でのビジネス展開に期待したい。
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