ZABICOM / Zabbixの機能活用

2010年12月28日(火)
福島 崇八久保 洋一

仮想化基盤監視機能(VMZ)

前ページで説明した外部連携機能をフル活用してNTTコムテクノロジーが作成した、仮想化基盤を包括的に監視するための拡張ツールが、「仮想化基盤監視機能」の「VMZ(Virtual Machine monitoring tool for ZABICOM)」です。

米VMware(日本法人はヴイエムウェア)のHypervisor環境で利用できます。将来的にはKVMなどでも利用できるようにする予定です。VMZは、Zabbix APIを利用して監視設定を自動作成し、Hypervisorから収集した値をzabbix_senderを利用してZABICOM監視システム内に蓄積します。vCenterで監視可能な内容のほぼすべてを監視できます。

また、vCenterが持つ、簡易な条件判定式を利用した監視とは異なり、ZABICOMの柔軟なトリガー条件式を利用して障害判定を行えます。さらに、各種ハードウエア(ルーター、スイッチ、サーバー)など、仮想化基盤を含むすべてのシステムをZABICOMシステムで一括監視できます。

図2: ZABICOM-J Exの仮想化基盤監視機能(VMZ)

図2: ZABICOM-J Exの仮想化基盤監視機能(VMZ)

レポート作成支援機能(RAZ)

ZABICOMは、すべての監視結果をデータベースに保存します。その結果は、いつでもフロントエンドから確認できます。[監視データ]→[最新データ]から、確認したいアイテムを選択することで、収集した値の遷移をグラフで確認したり、[監視データ]→[イベント]から障害ステータスの遷移を確認したりできます。

しかし、定期的に監視結果をレポート形式にまとめてユーザーに提出するような場合、都度このような作業を行っていると、非常に手間がかかります。このような定期報告のための作業を支援する外部ツールが、「レポート作成支援機能」の「RAZ(Report Assistant tool for ZABICOM)」です。

RAZは、ZABICOMが収集した値を定期的に自分のデータベースに複製します。値を複製するので、ZABICOMで定義した保存期間に関係なく、値を保持しておくことができます。

生成するレポートは、グラフやイベントの履歴などです。任意のコメントを含めるといったカスタマイズもできます。カスタマイズした結果は、保存してワン・クリックで呼び出して、簡単にレポート形式で出力できます。レポート作成のための労力・時間を、大きく削減できます。

図3: ZABICOM-J Exのレポート作成支援機能(RAZ)

図3: ZABICOM-J Exのレポート作成支援機能(RAZ)(クリックで拡大)

監視継続のための冗長化

残念なことに、ZABICOM自体には冗長化のための機能は存在しません。よって、別途実装することを考えなくてはなりません。ラトビア共和国のZABBIX SIAのロードマップによれば、将来的には実装される予定です。

一般的な手法では、ZABICOMサーバーをハードウエア・レベルでクラスタ化します。さらにクリティカルなシステムでは、監視データを共有するために、データベース部分を外部ストレージに切り出します。

しかし、クラスタリング構成のためにコストをかけることは、ライセンス・フリーであるZABICOMの優位性を失うことにもなります。

そこで、安価な冗長化の手法として、ACT-SBY(アクティブ・スタンバイ)の2台のZABICOMサーバーだけは用意しておき、障害の発生時に手動で切り替えるような運用が考えられます。

この時に問題となるのは、ACTで設定変更を行った結果をSBYにどう同期するかです。同じ設定をSBY側でも行う同期方法は、人為的なミスを起こしやすいことに加え、何よりも煩雑です。ここで、外部ツールの「Configレプリケーション機能(Syncconfig)」を使えば、設定の同期作業を自動で定期的に行なえます。

設定の同期を行うだけでなく、現在の設定内容を独自のXML形式で出力するので、監視設定をバックアップする目的にも利用できます。

図4: ZABICOM-J ExのConfigレプリケーション機能(Syncconfig)

図4: ZABICOM-J ExのConfigレプリケーション機能(Syncconfig)

ZABICOMの機能、各種設定方法について、4回にわたって紹介してきました。

ZABICOMは、いろいろなことができるが故に奥が深いため、「使いこなすことが難しい」と感じる方も多いでしょう。しかし、慣れてしまえば、この点が大きなメリットとなります。

シェル・スクリプト1つだけで、ZABICOMの標準機能では利用できない監視を行うことも可能になります。ZABICOMの特徴である柔軟なトリガー条件式を用いれば、不要なアラームを減らしたり、メンテナンス中や業務時間外などの条件に合わせて通知を切り替えたりできます。

ZABICOM / Zabbixに興味を持った方や、さらに高度な活用をしたいと考える方に向けて、ZABBIX SIA公認のZabbix公式研修Japanを開催しています。Zabbix認定トレーナーによる日本語の講義であり、履修によって、ZABBIX SIAから認定技術者証が交付されます。

本連載では伝えきれなかった内容も多数あるので、こうした研修を、さらなるステップアップに役立てていただければ幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

NTTコムテクノロジー株式会社 NMSイノベーションシステム室 主任 Zabbix認定トレーナー

サーバー構築、アプリケーション開発を経験後、現在はNTTコムテクノロジー(株)のZABICOM開発チームにて、ZABICOM / Zabbixの仕様策定および性能・品質向上を担当する傍ら、Zabbix公式研修の講師を務めるなど、ZABICOM/Zabbixのエキスパート。現在、次々期バージョン ZABBIX 2.2 の仕様策定を実施中。
 

NTTコムテクノロジー株式会社 サービス企画本部NMSイノベーションシステム室 室長

システム開発、ネットワーク及びサーバの運用を経験後、現在はNTTコムテクノロジー(株)において、ZABICOM / Zabbixチームを統括。主にZABICOMの開発チームのマネージメントを担当。ZABBIX1.4 初期より、運用現場が求めるZABBIXへの機能追加をZABBIX社とともに推進。特にZabbix1.8における仕様追加及び品質向上には大きく寄与した。現在次々期バージョンZABBIX 2.2の仕様策定を実施中。

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