vCenter Lab Managerのメリット
Lab Managerの機能(2)―リンククローン
Lab Managerを使用すると、仮想マシンを大量かつ高速に展開できます。それを可能にする機能がリンククローンです。クローンとは仮想マシンを複製することですが、クローン自体はvCenterの機能で可能です。vCenterには、フルクローン機能が実装されています。そこで、以下ではフルクローンとリンククローンの違いについて紹介していきます。
フルクローンは、その名のとおり仮想マシンを丸ごと複製する機能です。仮想マシンはソフトウェアで実装されたコンピュータですが、その実体はファイルの集合体になります。実際に、仮想マシンは構成ファイルの.vmxファイル、仮想ディスクのファイルである.vmdkファイルなどさまざまなファイルが存在し、ストレージ領域を消費しています。フルクローンでは必要なファイルをすべてコピーすることで仮想マシンの複製を作成します。この機能を利用することで、仮想マシンの複製が容易になります。例えば、物理マシンと比較した場合、物理マシンで用意している環境を複製しようとした場合、一般的には以下のプロセスを踏む必要があります。
- 物理マシンの調達
- OSのインストール
- アプリケーションのインストール、設定
多くの場合、物理マシンの調達には数週間の時間がかかるため、同一環境の複製には多くの時間がかかります。しかし、仮想環境の場合は仮想マシンのクローン作成を実施することで、数分~数十分で同一環境を容易に展開できます。そのため、仮想マシンのクローン作成は物理環境に比べて非常に効率的です。しかし、仮想マシンは先述したように実体はファイルであり、例えば100GBの仮想ディスクを持つように仮想マシンを作成すると、100GBのファイルが実際にストレージ上に保存されます。その仮想マシンのフルクローンを実行すると、当然ながら100GBのディスクを持つ仮想マシンが複製され、追加でストレージ上に100GBのファイルが作成されます。これは、シックプロビジョニングの場合です。この場合は、実際に使用している容量が複製されます。同様に100GBのディスクを持つ仮想マシンを10台フルクローンすると、1TBのディスク容量が必要になります。
これを効率的に行うのがリンククローンです。仮想環境を利用しているユーザーは、100GBのディスクを持つ仮想マシンをクローンとして複製すると、100GBのディスクが必要になるのは常識だと思われるかもしれませんが、リンククローンではその常識を覆すことができます。リンククローンは、クローン元になる仮想マシンの仮想ディスクをRead-Only(読み込みのみ可)で共有します。そうすればクローン元とクローンされた仮想マシンは、まったく同一の仮想ディスクを読み込むので複製は完了します。しかし、それだけで完了ではありません。クローンされた仮想マシンは当然ながら複製された以降、独自のデータを保存していく必要があります。そのときに共有している仮想ディスクに書き込むわけにはいきません。複数の仮想マシンから1つの仮想ディスクにデータを書き込むと、データの整合性が保持できなくなるので、そのためにRead-Onlyで共有します。つまり、各仮想マシンには、独自に発生する差分データを保存する領域が必要になります。リンククローンでは、その領域を差分ディスクとして作成します。これがリンククローンの仕組みです。リンククローンでは元となる仮想ディスクを共有し、仮想マシンごとに差分ディスクを作成します。さらに、差分ディスクには発生した差分のみが保存されますので、ストレージ領域を節約できます。また、リンククローン時は元の仮想ディスクをコピーせず、差分ディスクのみが作成されるため、フルクローンよりも高速に仮想マシンの複製が完了します。これがリンククローンのメリットです。
図5:フルクローンとリンククローン(クリックで拡大) |
Lab Managerでは、仮想マシンをデブロイするときにデフォルトではリンククローンが使用されますが、必要な場合はフルクローンを指定することも可能です。